テラーノベル
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──カイがバンドを辞めたがっていた本当の真意もわからないまま、
一方でバンドとしての知名度も安定してきたKILLAは、
出した新曲がランキングのトップに躍り出て、もはやメディアで見かけないことも少なくなった。
彼らの新曲のタイトルは──「BLUE MEMORY」
しっとりとしたバラード調の曲で、切なげに歌うカイの声と相まって、他には類を見ない美しさと儚さとが、聴く人を魅了した。
バンドの最大のヒットとも言うべき曲の売り込みをさらにかけるため、当音楽雑誌にも企画の依頼が事務所から舞い込んで、私は打ち合わせへ出向いた。
──音楽事務所に行くと、そこにいたのは、カイを除いた3人のメンバーだけだった。
「ヴォーカルの彼は……?」と、顔ぶれを見回して尋ねると、
「ああ、カイは今日は単独で撮影が入っていまして、すいません」と、マネージャーから頭を下げられた。
「あいつ…最近、1人での取材とか多くないか…」
シュウが低くボソリと口にする。
「そんなに、1人での取材が増えているんですか?」
やや気になって訊いてみると、
シュウが、「ああ…なんか、ね…」と、また低い声で短く返して、
「まぁ、その話はとりあえず、いいや……」と、それ以上の会話をあからさまに避けるようにも口にした……。
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