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「 木洩れ日の奥で 」
もりょき
涼架side
あの日から、涼架は放課後になると、毎日のように裏庭へ向かうようになった。
理由なんて言葉にするまでもない。ただ、気になって仕方がなかった。
「 ….. また、いる 」
夕暮れ色に染まった空の下、元貴は いつも同じ場所にいた。
地面に落ちた枯葉が、彼の肩に積もっても、払いのける様子はない。
まるで、生きているのに生きていないみたいに。
涼架は 決して急いで近づいたりしない。
慎重に、静かに、元貴の半径1メートルの外に腰を下ろして ポケットから温かい缶ココアを取り出す。
「 ….. 飲まなくてもいいよ。僕、ただ持ってきただけだから。 」
最初の数日は、元貴が目も合わせなかった。
声をかければ肩を強張らせ、少しでも近づくと過呼吸がぶり返す。
それでも 涼架は来ることをやめなかった。
ある日、いつものように缶を置いて立ち上がろうとした時。
「 …..なんで、毎日来るの… 」
掠れた声が 風の音に混じって耳に届いた。
涼架は思わず振り返る。
元貴は顔を伏せたまま 唇だけを僅かに動かしていた。
「 ….. こっちは…頼んでない…のに。」
涼架はゆっくりとその場にしゃがみ直した。
「 …..頼まれてないけどさ、僕は期待から来てるんだよ。涼しくて静かで ここ…結構好きなんだ。」
元貴は答えない。けれど、初めて逃げようともしなかった。
その日の帰り道。
校門を出ようとした涼架の背中に、ふわりと重なる声が落ちた。
「 …..元貴。」
涼架は一瞬、振り返るか迷って 結局、まっすぐ前を向いたまま、ぽつりとつぶやく。
「 知ってる。元貴、でしょ 」
あの日、誰も教えてくれなかった名前を。
誰かが呼んでくれるだけで、こんなにも胸の奥が熱くなるなんて 元貴は、まだ知らなかった。___
#1.「 名前を呼ぶ声 」
儚いお話大好きな人。厚かましいですが…、お友達になりたいです。
コメント
2件
儚いお話だいすこです🙋♀️ でも涙もろいからすぐ泣いちゃう😭 もりょきあんま得意じゃなかったけどこのお話の雰囲気めっちゃすこ💞 続き楽しみにしてます‼︎