Re：SONANCE

「ミセスさんから、対バンしないかと誘いが来たんだ」

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ナオトさんが発した一言で、俺らは黙り込んでしまった。

「なんで俺たちなんですか？」

沈黙を突き破ったのは、汐恩だった。

確かに、レコ大の裏で一緒に写真を撮らせていただいたり、ライブに行かせて頂いたこともあったが…

それでも、どうして俺たちと対バンをしたいと思ってくれたのか、理由が思いつかない。

「BEYOND THE DARKの”Trigger”のライブ映像を見て、やりたいと思ってくださったそうだ」

「何にせよ、これはJO1の中でもトップに入る大仕事だと、俺は思ってる」

「上層部の許可は得ている」

「後は、お前ら次第だ」

「……少し、考えさせてください」

瑠姫が、迷いのある表情で言った。

「分かった。ただし、あまり長くは待てないからな」

そう言って、ナオトさんは出ていった。

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またしても沈黙。

「…どうする？」

俺は口を開いた。

「俺は…やりたいと思ってる」

「だって、”あの”ミセスさんからのお誘いだよ？」

「これを逃したら、もうチャンスはないかもしれない」

「でも、俺らで本当にええんかなって不安もある」

珍しく、碧海が弱気だ。

碧海は、大森さんの歌声を絶賛してたから…よっぽど不安なんだろうな。

「確かに、ミセスさんと比べたら、俺たちなんてまだまだちっぽけだし…」

豆がポツリと小さな声で言う。

練習室が重い空気に包まれていく。

耐え切れなくなった俺は、みんなに言った。

「確かに、ミセスさんは凄い。俺らなんて、足にも及ばないかもしれない」

「でもさ、俺らにしかないものもあるじゃん」

メンバーの表情が、少し明るくなる。

「ミセスさんは…俺らのそういうところを見て、オファーしてくれないかって言ってくれたんだと思うんだけど…」

「それに…」

「…音楽ジャンルの垣根を超えたコラボができる」

ずっと黙っていた蓮が意を決したように言い放った。

「ミセスさんは演奏や歌声で”魅せる”バンドとして、俺らは歌とダンスで”魅せる”アイドルとして。」

「それぞれ、”魅せ方”が違うからこそ、すごい化学反応を引き起こせる」

「奨くんは、そう言いたいんやろ？」

蓮がズバリと俺の考えていることを言い当てたことにとても驚いたが、今はそんな話をしている場合ではない。

「蓮が言った通りのまんま。…どう？みんなは」

「俺も、やりたい」

純喜が口を開いた。

「俺ら、TOP目指すんやろ？」

「ミセスさんと対バン出来たら、きっと、TOPまでの道が近くなると思う」

”Go to the TOP” 俺らの挨拶にも入っているフレーズ。

俺たちは、この思いを胸に、ずっと努力し続けてきた。

「…ていうのもあるんやけど、ほんまは純粋にミセスさんと一緒にパフォーマンスしたいって事が9割」

「ほぼやないかい」

純喜の本音と、拓実のツッコミでどっと笑いが起きる。

「俺もミセスさんと一緒にやりたい」

「だって、ミセスさんのライブ見たとき…感動以外の感情が沸かへんかったもん」

祥生がそう言う。

確かに、あの感動は今でも覚えてる。

「楽しいっていう感情はなかったんか？笑」

景瑚が冗談交じりに祥生の発言をいじる。

「いや、めっちゃ楽しかったで！？ほんま、ほんまに…」

予想以上に慌てる祥生を見て、また笑いが起きた。

「まぁ、俺もやりたい派なんやけど笑」

「蓮くんの言葉に、おお～ってなったわ」

景瑚も肯定意見の様だ。

「瑠姫は？」

「…俺も、やりたい。けど、ちょっと不安がある」

「もし失敗したらとか…考えちゃう」

瑠姫は、王子様担当だからか、周りからどう見られてるかに人一倍気を配る。

「そこはあんまり気負わんでええんとちゃいます？」

汐恩がそう言った。

「やりたいなら、やりたいでええと思います」

「未来のことを考えて不安になるよりも、今を考えた方がよくないすか？」

「さよなら青春にも、”今だけを生きってぇ～ん”って歌詞あるやないですか」

「おい、俺のマネすんなや」

懐かしの純喜のパートだ笑

「笑 地味に似てる笑」

「…そうだね、今を生きてみるよ、笑」

良かった。瑠姫も大丈夫みたいだ。

後は…拓実、そして、豆と碧海か。

「俺も賛成や。作詞作曲のことも勉強させてもらいたいし」

拓実は、JO1の曲担当と言っても過言ではない…はず。

だからこそ、大森さんから曲作りについて学びたいんだろうな。

「豆と碧海は？」

「…もう、みんながそこまで言うならさ、やるしかないじゃないすか笑」

豆が笑って言う。

「こんなとこでうじゃうじゃしてたらあかんよな。俺もやります！！」

碧海が元気よく言った。

「てことは…？」

ガチャ

全員の意見がまとまったその時、練習室のドアが開いた。

「ちゃんと決まったようだな」

そこにいたのは、ナオトさんだった。

「すまん。実はずっと聞いていた」

「まぁ、そんなことは置いといて」

いや、置いとくなよ

ナオトさんの一言に、思わずツッコみたくなった。

「とにかく。やるっていうことでいいんだな？」

「…はい。対バン、やらせてください！」

俺が放った言葉に、皆が頷く。

「分かった。向こうには俺から連絡しておくから、次の知らせが来るまで待ってろな」

「はい！」

ミセスさんとの対バン。

今から楽しみで仕方ない…！