コメント
1件
お?お?お?めちゃくちゃ好きな類の感じだぞ?フォロー失礼します!!!
attention
善獪
1300文字くらいあります。ちょい長め?
二人で深夜に海見にいく話
眠れない夜は、いつも決まって息が浅くなる。
時計の針が午前二時を指して、部屋の中は冷えきってるのに、胸の奥だけ熱くて痛い。
善逸の寝息が隣の部屋からかすかに聞こえてきて、それがまた苦しい。あいつは、昔から俺にばっかり“好き”を投げてきた。うるさくて、しつこくて、鬱陶しいくらいに。でも、気づいたらそれが無いと落ち着かなくなってて。今さらになって、やっと分かった。
俺は、あいつに“返せてない”。
このままじゃ、いつか離れていくかもしれない。なんで、もっと早く気づかなかったんだろう。そうやって、不安と自己嫌悪感じたところでなにもならない。ただの時間の無駄。わかってる。それでもだんだん息が浅くなってきたのが自分でもわかる。このまま暗い部屋で横になって考えてると、呼吸がおかしくなりそうだから、冷たい水でも飲んで頭を冷やそう、そう思って、できるだけ物音を立てないようにそっと部屋を抜け出した。
「おまえ、なにしてんの?」
は?なんでこいつ起きてんだよ。こちらからすればお前が深夜になにしてるんだよ、と思いつつも長く会話をしたくないので喉まで出かけた言葉を飲み込む。嘘をつく必要も無いので、飲み物飲みに来ただけ、と短く返事をしてグラスに水を注いで口をつける。
「ちょっと付き合って」
急にあいつの上着を1枚かけられて、手を引かれた。そのまま外へと向かう。
「は?どこ行くんだよ」
問いを投げかけても返事はない。一体こいつは何を考えてるんだ。外は季節的に少し肌寒いと思っていたが上着のせいか、手を握られているせいかあまり寒く感じられなかった。
「好きなの買ってあげる」
深夜のコンビニ。なんで急に?という疑問が頭をぐるぐる廻る。こいつの事だから、まだどこか行くんだろうな、と思い、あいつの奢りらしいので、あたたかい飲み物を善逸のカゴの中に入れる。
会計が終わり、改めて外に出ると、店内が暖かかったからか、先程よりも少し寒く感じられた。
「なぁ、どこいくんだよ」
「いいから」
答えてくれない。ただ手を引いてどこかへ向かうだけ。街を抜けて、5分ほど歩くと、だんだん波の音が近づいてきた。海。潮の香りが心地よくて、さっきまで心に残っていたことを洗い流してくれるような感じがした。上着を着ているとはいえ矢っ張り寒い。すると、善逸が俺の寒さに気づいたのか手を握ってきた。あたたかい。気持ちを返せているか分からないが、少なくとも俺を1人にしたり、離れていったりはしないだろう、と理由もなく思えた。
「やっぱ寒いね。」
俺の手を温めるように優しく包み込む。部屋にいた時から手は冷えきっていたためかだんだん自分の手に温かさが戻ってきて、善逸との温度差がなくなってきた。
「帰ろっか」
そう言って、にこ、とこちらに微笑みを向けてきた。顔が熱い。こいつにしか見せられない表情をしているのが自分でも分かる。あいつばかり俺に好きをぶつけてくるのは一方的でいやだったのだが、言えるタイミングが今しかない、と思い、小声で「好き」と呟いた。自分の声は波でかき消されて、届いていないと思っていたが、耳のいいあいつには届いてるだろう。そのまま手を引かれるが儘に帰路についた。