テラーノベル
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Anti Wonderland✴︎by Alice
【導きの章✴︎第5話】
扉の先の小さな家は「アリス」を待っていたと言うようにただ静かに建っていた。風が吹き抜け、「アリス」の髪や草木、花が揺れる。室内とは思えないようなその開放感に思わず声を漏らした。
「小さなお家。だけど、お庭もあるし煙突つきだし…裕福な家族が住んでるのかしら。」
そんなことを考えていると煙突から白い煙がモックモク。木材の焦げた匂いも漂ってきた。
白ウサギが既にいるのかもと考えて「アリス」は玄関をノックすることにした。
「コンコンコンッすみません、中に白ウサギさんはいらっしゃいますか?」
「コンコンコンっだって!?貴様、もしや狐じゃあるまいなっ!」
「え、⁉︎あぁ勘違いさせてたらごめんなさい。私狐ではないですわ、!」
貴様なんて呼ばれたら条件反射で「アリス」もお嬢様言葉で返してしまう。
狐はみんなそうやってオイラどもを騙すんだっ!とドアの向こうも一点張り。
困ったことに、この扉には目立つもの家以外にあるとしたら、背景に見える大きなお城のみ。
さすがに、あそこを目指せとは言わないはず…目の前の家さえ開ければいいのに。「アリス」が気分良く「コンコンコンッ」だなんて言わなければ。
「だめだろゴート、お客さんだよ。」
「警戒心が無いなぁ!狐じゃなくても狼だったらどうするんだい、ラムヴ?」
「けど玄関の向こうは可愛い女の子の声だよ?」
「そんなんだから貴様の羊の6人兄弟は食べられちゃうんだろ!」
「酷いよ!もう、あっち行ってて!」
「アリス」が困っていると、ドアの向こうから子供の声での言い合いが聞こえた。やっとこさ静かになったかと思えば玄関のドアが柔らかく開く。
「ほらね、大丈夫だっただろう?」
ドアを開けたのは首元にベルのお洒落をした黒い子羊と、涙目で垂れた耳を弄り拗ねる灰色の子ヤギが立っていた。「アリス」は思っていたより目線が低い家主に驚きつつも、二足歩行する動物によく会うなぁとこの状況を受け入れる。
好奇心から目線を家の中へ移すと、奥のオーブンから香ばしい匂いが発生してることに気がついた。
「あら、何かお菓子でも焼いているの?」
「わぁ!気づきましたか?今ゴートとショートブレッドを作ってたんですよ!」
「ショートブレッド?あぁ、硬いクッキーみたいなやつね」
「違うぞッ!サクサクほろほろな すいーつ だ。」
「そうだ、ねぇきみ、一緒におやつを食べよう!今お茶を淹れてあげる!」
2匹の動物に誘われ手を引かれながら「アリス」は家の中へお招きされる。
中へ入るとより一層、小麦の匂いが漂った。案内された大きな机には6人分の椅子(椅子というには、とてもじゃないけど難しい箱)が用意されていた。ゴートがオーブンから すいーつ を取り出し、ラムヴは暖炉へ足を進める。沸騰し切ったお湯をもう一度沸かし、その間にマグへそれぞれティーパックをのせた。
ゆっくりと注いで、ミルクを淹れて、砂糖を取り出し、お好みでかき混ぜる。…そんな単純な作業が、物語に必要な一つの描写のように丁寧に行われている。
「私も何か手伝うわ」
「本当かい!じゃあマグからティーパックを絞って最後の、…えっと、」
「あぁ、私はL、」
「「アリス」!ここに居たのですね!全く探しましたよ!」
「あ、白ウサギさん!貴方が探し出すように言ったんでしょ?私ずっと探して…」
「うむ?貴様、新しい「アリス」だったのか!そうならそうとさっさと言ってくれよ」
名乗る機会をまた拒まれつつ、おやつタイムは無彩色の動物が揃ったところで始まった。
鬼ごっこのことなんか忘れて、召し上がらせていただきます!と席に着く白ウサギに、なんて失礼な人と思う「アリス」。失礼な人ではなく、失礼なウサギだけれど。
一刻一時と時間が過ぎ、時計台に居たトキよりも時の流れに気を使う。ショートブレッドは思ったよりも舌に慣れ、「英国本場の」といった風味がする。…だが、あまり食べたという実感がない。焼き菓子の中でも卵を使わないからと言って、こんなにも腹にたまらないものだろうか。
そういえば、白ウサギのマグが当然のように用意されていた。元からあった気のしないその飲料品が不気味に思われるが、白ウサギが口を開いたので「アリス」は質問を躊躇った。
「ヨホホッ!私を見つけられるとは、やはりアナタには「アリス」の素質がありますね!」
「じゃあ、貴様も女王様のところに行けるんじゃないか?」
「女王様…?」
「《クイーン・イザベラ=ロズ》。ここ、ワンダーランドの最高権力者だよ。」
そういって3匹は窓の外の城を眺めた。低地に思えるこの家からでも見えるとても大きなお城。”最高権力者”という肩書きからも物理的以外の偉大さが伺える。
「他に行くあてもないなら行ってみたらどうだ?オイラにはとても。」
「え、でも気がついたら時計台にいたし…。きっと帰るための方法も時計台にあるはずだから。」
「時計台ってあれのこと?」
そう指さされた先には高層ビルほどの時計台が建っていた。見える範囲の上部、各方面に時計がついている。
「…ビックベンみたい。私初めて見た」
「ビックベンなんてそんな大層な!東の大時計だけがないジャンク品ですぞ、「アリス」!」
こちらから把握できない方角…つまり「アリス」がいる側は西ということになる。
「アリス」が出てきた時計台。…出てきた?
「あら?今までは扉に入ってみても時計台は見えなかったのに。入ってきた扉もないし。」
「そらそうですよ、ここは外なんですから!あの迷宮のね。」
「「アリス」さんは脱出者なんですよ。だ、か、ら、女王様に会う適性があるんです。」
「え、…じゃ、じゃあどうやって帰ればいいの?私来た方法もわからないのに。」
「ワンダーランドから出るパスポートは、女王様がもつスートだけって噂だ。」
パスポート。この国…ワンダーランドには帰る方法がないから、他国を頼ってくれってことだろうか。いや、もしかしたらこの世界から抜け出すこと自体を指してるかもしれない。
時計台、お城、ワンダーランド、帰り道、パスポート…。とりあえず全ては「女王様に会うこと」で進む気がする。あの城まで行くのは中々に骨が折れそうだが、このアトラクションから出られないより100倍マシだと感じた。
外に出てゴートとラムヴに言われた通りに、このまま西へ真っ直ぐ歩こうとした。
どうやら、御茶会好きな変人3人の家があるらしい。緑帽子の帽子屋と、赤いフリルの少女、青いベストを来た青年が開催している…と。
「…にゃぁ?お前、新しい「アリス」かにゃ?」
さぁ、行こう!と覚悟を決めた矢先、上部から声が降ってきた。
「アリス」は驚き見上げると、そこには猫の耳と尻尾の生えた男性がいた。気だるけな雰囲気で、「アリス」を見つめている。鋭い目つきとは裏腹に口は横に大きく開きニタニタという擬音語が似合う表情だった。
「えっと…?」
「俺の役名は「チェシャ猫♢」。…あぁ、名前は語らなくて結構だにゃぁ。」
「役名?それだと私は「アリス」ってこと?」
「正確には「74番目のアリス」だにゃ。この国で真名を言うんじゃにゃいよ?役名で乗り切るのが一番。」
「どうして?」
そう聞くとチェシャ猫は怖い目つきになって「アリス」に近いた。
「俺が真名を食っちまうからにゃ」
気の抜けた雰囲気の気が逆に抜け、相手の重心が全てこちらに向くかのような圧を感じる。「アリス」のおでこと彼の額は何ミリ空いているのだろうか。
やっとまともに会話できるキャラクターに会えたと思えたら、この有様。
「アリス」は喉がほとんど閉まっている状態で、唾液を飲み込んだため ぐぉっ と首周辺が鳴り響いた。それを聞いてチェシャはさっきのニタニタ顔に戻った
「…にゃぁ〜んてね。冗談だにゃ、!…けど真名を言うと、詳しくは〜言えにゃいが、…お前さんが危険になる」
そういってチェシャ猫は「アリス」の唇に指を当てた。真名だけでなく、俺に会ったことを黙っておけと言わんばかりに押し込まれる。
「帽子屋んとこにいくんだろ?俺はアイツが嫌いだからついていけにゃ行けないけど…」
「…?」
「お前にゃら、《アリス》と同じところへ行ける。」
「え?あ、ちょっとどういうこと!?」
言いたいことだけ言ってチェシャ猫は消えてしまった。消えるときの風圧で草木が揺れるわけでもなく姿を暗ます…。ここの住人はどうやら追いかけっこが好きらしい。
「アリス」はモヤモヤが心を支配しきる前に、御茶会を目指した。
導きの章___end.
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黒Tさん。@植物愛好家
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#ファンタジー
鳴海なのか
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コメント
2件
7月4日ですね、
「コンコンコン」の掛け違いから始まる動物たちとのやりとり、めちゃくちゃ可愛かったです!特にゴートとラムヴの言い合い、子どもっぽくてほっこりしました。ショートブレッドと紅茶のシーンも、不思議な世界なのにあったかくて、思わず一緒に席に着きたくなりました。そこに現れたチェシャ猫の“真名を食う”発言、ぞわっとしましたね…あのニタニタ笑顔と核心を突く言葉、不気味さと魅力が混ざってて好きです。女王様の城へ向かう決意、次が気になります!