「初めまして。黒崎嶽丸と言います」
嶽丸と一緒に、慎吾先輩の家に行った。
「…初めまして、じゃないよね?ヘアショーのとき、名刺渡したじゃん」
「…そうでしたっけ?」
「印象薄いって言われるんだよなぁ…ムカつく!嶽丸!」
慎吾先輩に胸元を拳で叩かれ、嶽丸は痛いフリをしながら笑う。
「それにしても、目の覚めるようなイケメンだね!」
正真正銘初めて会う宏樹さんが言う。
「悔しいけどホントにな。美亜と並んで、美男美女だ!」
…あれから、嶽丸がどうしても離してくれなくなり、私たちはマンションでの2人暮らしを再開することになった。
そこで、荷物の引き上げと挨拶に、嶽丸を伴ってやって来たところ。
「美亜、繁忙期だけ手伝いに来てよ」
慎吾先輩に言われて、喜んで…と笑顔を返すと、すかさず嶽丸が口を挟んだ。
「…もれなく俺もついてきていいっすか?」
「アハハ…!当然!仕事だけじゃなくて、ここは君らの実家みたいなものだと思ってくれたら嬉しいよ!」
温かい言葉に涙ぐみそうになりながら、慎吾先輩の家を後にした。
荷物はすべて嶽丸が持って、車に積み込む。
…なんなら車のドアも開けてくれるんだけど。
「ここが第2の実家だとするなら…言っておくべきだったか?もしかして孫ができるかもしれないってこと」
「…バカ!まだ気が早いって…」
再会して…嶽丸と激しく愛し合ったとき、避妊しなかったと打ち明けられた。
いわゆる安全日だったはずだけど、母の事があって、体調にどんな変化があるかわからない。
嶽丸は私の次の生理を気にした。
「…もし出来てたら…俺、パパ?」
「だから、気が早いよ?」
「でも確率は2/1だろ?半分は…パパかぁ…」
心待ちにしてくれてるのは、正直嬉しいけど…
母のことがまだ解決していない。
それに、ミズドリさんのことも、全部を教えてもらったわけじゃなかった。
でもあの日かかってきた着信に、イタズラに対応してやったけど、嶽丸はまったく慌てず、直後に激しく私を愛した。
それは誤魔化しなんかじゃないってわかるほど情熱的なものだったし、一歩も二歩も嶽丸との絆を深める行為だったと思う。
何しろ…あの時嶽丸は、避妊をしなかったくらいだ。
私に自分の子供を宿したい、その願望に蓋ができなかったと言った言葉で、ミズドリさんとの間に何かあったとは考えられなくなった。
…というか、着信に平気で出られたのは、初めから嶽丸を信じていたからだと思う。
女の人に平気でくっついたのは本気でアウトだし怒ったけど、あれはただ酔ってただけだと、私は理解していた。
「ミズドリさんは社長の姪で、どうも俺とくっつけたかったらしいわ。でも…彼女にまったくその気がない事がわかって…逆にちょっと頼み事をした、っていう…そういう関係」
嶽丸はミズドリさんに関することをそう説明した。
「じゃ、私にも会わせてよ」
「いいよ?」
「ミズドリさんに聞くよ?頼み事のこと」
「うーん…それはまだはっきりしないから、今はちょっと言えない」
そこだけを濁されたけど…私を見つめる目もキスもハグも、愛情に満ちていたから…私は少し大人しくすることにした。
しばらく離れたいって言った私を、嶽丸が静かに受け入れてくれたように。
……………
慎吾先輩の家を出たことで仕事を失った私は、嶽丸の家政夫としての仕事を解任した。
「これからは私が家事をする。次の美容室見つけるまで」
「いや、全部、次の生理が来てからにして」
あくまでも妊娠を想定する嶽丸は、そう言って私を甘やかしたけど…
しばらくして生理がやって来た…。
「あんなにヤッて、1つもヒットしなかった…」
嶽丸は少し残念そうだったので笑ってしまう。
「あー…黒崎美亜になったらすぐ危険日にぶち込む…」
もう…言い方よ?!
一旦離れたことで、私たちはより強く結びついたと感じる。
…2人の生活は相変わらず平和で、母の影に怯えることも少なくなった頃、嶽丸によって驚きの事実が知らされた。
「見つかったよ。美亜のお父さん」
コメント
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わーわーわー!大事なシーン 最後お父さんの「さん」が欠けてるよー💦💦