その時、ドアが静かに開いた。
「良かった、目覚めたんだね」
銀髪の少年が顔を覗かせた。落ち着いた表情だが、鋭い目には安堵が滲んでいる。腰には星が刻まれたソードが下がっていた。
「誰!?」
アリス――いや、ミリアは目を丸くして叫んだ。少年は一瞬驚いた顔をし、すぐに苦笑いを浮かべた。
「僕はレオン。セレスティア・レオン・トキアード。君の双子の弟だよ、数分遅れで生まれた。」
「双子!?弟!?何!?」
ミリアの頭が混乱で爆発しそうになる。レオンはベッドに近づき、ミリアの背中をそっと確認した。
「背中の傷…僕が遅らせておいたから、命に関わる影響は抑えた。でも、まだ完全に治ってないよ。」
「遅らせる?って何!?」
「僕の能力だ。時間を遅くする力。姉さんが刺された時、近くにいた僕がなんとか間に合って…でも、完全に止めることはできなかった。」
ミリアは目を瞬かせた。アリスとして刺された瞬間、この見知らぬ少年――レオンが時間操作で傷の進行を遅らせ、死を回避させたらしい。その隙に転生が起こり、セレスティア・ミリア・トキアードとして目覚めたのだ。
「君のおかげ!?誰!?」
「だから、レオンだよ。レオンって呼んでくれればいい。無茶しないでね。」
レオンが優しく笑う。 ミリアは少し落ち着きを取り戻し、彼を見つめた。
「お兄ちゃんみたいだね。」
数分遅れの弟なのに、落ち着いた態度と頼もしさが兄のような安心感を与えてくれた。レオンは苦笑いを浮かべつつ確認した。
「姉さ…ミリア、どこまで覚えてる?」
アリスことミリアは目を逸らさず、はっきり答えた。
「全部知らないだって。私、ミリアじゃないもん。時神アリスだもん。」
レオンは一瞬言葉に詰まり、柔らかく笑った。
「時神アリス…か。でもアリスはミリアだよ。僕の知ってるミリアはいないけど。」
その言葉にミリアは少しだけ胸が温かくなった。知らない世界で、知らない弟が自分を受け入れてくれる――それだけで、少しだけ心が軽くなった。
「アリスことミリアは忘れてるから僕が教えてあげよう。セレスティア家について、家紋について、この世界について。」
レオンはまずセレスティア家について教え始めた。月の映像録画機使いながら教えてるよ
ここはエテルニアっていう世界で、今はエテルニア歴1023年。僕たちは時の森を国王から任せられている一族でセレスティア家――正式にはトキアード家――の双子なんだ。貴族社会で『時間を司る家紋』として知られてる名門だよ。
ミリアは目を丸くして聞き入った。レオンは壁に刻まれた紋章を指さし、続けた。
「これがセレスティア家の家紋。星と時計の針が交錯してるデザインで、時間を操る力の象徴なんだ。星は未来を、時計の針は過去と今を表してる。他にも砂時計、月、炎がモチーフにあって、それぞれ時間の流れや力を意味してるよ。」
ミリアは腰の懐中時計を手に持つ。星がちりばめられたそのデザインが、家紋と繋がっていることに気づいた。
「この懐中時計も…?」
「うん、姉さんのトレードマークだよ。他に質問はあるかな?」
ミリアは少し考えて、質問した。
「時間を司る家紋があるって事は、ほかの家紋はあるよね。それも教えて欲しい。」
「うん、あるよ。」
例えば、国王からは運命の谷任せられているファタリス家って一族は『運命を司る家紋』として知られてる。
家紋は運命の輪、鏡、鎖がモチーフで、未来を見たり運命を縛ったりする力を持ってるって言われてる。運命に忠実や導く事ができるウワサがあるみたい。
僕たちセレスティア家とは昔からライバル関係なんだ。
ミリアは目を輝かせつつ、少し不安そうに呟いた。
「運命かぁ…なんか強そう。」
ミリアは目を輝かせつつ、少し不安そうに呟いた。
レオンは優しく笑い、言った。
「僕たち運命に問われない一族でもあるから安心してね。自由と時間を愛すから。」
その言葉に、ミリアは少しだけ安心した。運命に縛られるのではなく、時間を操り自由を求める――セレスティア家の精神が、レオンの穏やかな声から伝わってきた。レオンが差し出した懐中時計を手に持つと、ミリアは蓋を開けた。すると、頭に映像が流れ込む。
未来の映像がフラッシュ――そこに映っていたのは…冷徹な黒髪の赤目でハイライトが無い黒と金のローブを着た 青年が血がついた手で動かないミリアに触って愛をささやいてるそんな未来
「これが私の未来!?…いや、こんな恋愛は嫌だ!」
ミリアは叫び声を上げそうになり、慌てて口を押さえた。
レオンが心配そうに言った。
「大丈夫?どんな未来が見たの?それとも過去かな?」
ミリアは目を瞬かせ、レオンの言葉に少し驚いた。彼はミリアの能力――懐中時計で未来を予知し、過去を覗く力――を知っているようだった。ただ、彼女自身まだその能力を完全に理解していない。未来を見るにも過去を見るにも、制限時間があるのだ。今は数秒しか持たず、頭に残像のように焼き付いた映像が彼女を震えさせた。
ミリアは震える声で、見た未来予知をレオンに伝えた。
「黒髪で赤い目の冷たい男の人が…血がついた手で動かない私に触ってて、愛をささやいてた…私が死んでるみたいだった。」
レオンは眉を寄せ、静かに言った。
「黒髪に赤い目?もしかしたらあの家紋かもしれない。」
ミリアは言った。
「あの家紋って何!?私が死ぬ未来なんて嫌だよ!」
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