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まろ
35
「ねぇ……私、疲れちゃった。笑」
彼女が小さく、呟いた。
外は満天の星空で、
電話越しに彼女が泣いた。
「私には…幸せになる権利がないみたい。笑」
電話越しでもわかるほど、声が震えている。
止める権利も、怒る権利も、彼女に言う言葉は、
彼女を苦しめるだけであって、
友達であっても、もとを辿れば、”他人”だ。
彼女に何かを言う権利は、私にはない。
「…そ、っか。」
私は曖昧な言葉でしか言えなかった。
本当はもっと、
『どうして?』『何かあったの。』とか沢山言いたい。
でも、結局人生を決めるのは彼女自身だ。
彼女は言った。
「以前さ…君は言ったよね…。」
今にも苦しそうで、いなくなりそうな声。
「”人生というのは、ゲームで言うと、
’ハードモード’だ。”って…」
その言葉は、私が学校の人権作文で書いた言葉だった。
「私さ…考えたんだよ。
確かに人生って…一度死んでしまったら、
元通りにならないなぁって…。」
私は言葉を、涙を堪えるだけで彼女の次の言葉を聞いた。
吸って、吐く彼女の吐息そこから彼女は言葉を紡いだ。
「私…何度も我慢したんだよ?
私…挫けそうでも笑顔を絶やさず頑張ったよ?
私……沢山たっくさん…助けを求めたんだよ?」
声は震え、言葉には彼女の思い過去が積み重なっていた。
私は、彼女のそばに誰よりもいたのにも
彼女の苦しみに、何一つ気付けなかった。
「ッごめん。ごめんねッ。」
私は彼女に謝ることしかできなかった。
「どうして…謝るのッ?」
「私は……そばにいながら何一つ苦しみに、気付けなかった。」
私がそう言うと、彼女は
「もう……大丈夫だよ。」
決意をしたトーンだけど…どこか儚いトーン。
「私は…幸せになるね。」
私には理解できない言葉だった。
どこで、幸せになるかも。
電話越しの彼女は、
小さな小さな声で言った。
「ありがとう。また、逢える日まで。」
そう言い残した彼女は、そのまま電話を切り、
その後行方がわからなかった。
翌日になるとテレビで
『昨日、夜の◯◯時で、”女性が川へ飛び込んだ”と言う
一件の通報がありました。』
私は目を大きくし、直ぐに警察へ電話した。
「もしもしッ!」
警察の声は驚いたように話を聞いてくれた。
昨日の出来事。女性の身元。彼女のすべてを言った。
私はその後、毎夜のようにベッドの上で泣いた。
目元が腫れるぐらい。
声がかすれるぐらい。
何度も彼女に対して謝った。
『ごめんッごめんッ』と
私は、彼女を救うことができなかった。
そんな過去話。
今も後悔の一部。
時折『彼女は…幸せだろうか。』なんて思う。
私は、彼女が本来なら生きるはずだった、
人生の旅路を、彼女の代わりでもならと、
彼女の行くと決意した夢へ私は歩いた_
※この小説はフィクションです。
Minのこれまでの作品
・境界の彼方→初の映画版チャットノベル
・空にいる君と今日も生きる→ノベル読切
・この声が届く限り→ノベル読切
・もっと生きたかったよね→チャットノベル曲パロ読切
・悲しき忘れられる時→ノベル連載 (完結:済み)
コメント
1件
Minさん、読ませていただきました。「権利」という言葉の重ね方が心に刺さりました。電話越しに伝わる彼女の息遣いや震える声の描写が臨場感たっぷりで、自分もその場にいるかのような錯覚に陥りました。最後の「また、逢える日まで。」が、単なる別れの言葉じゃなくて、別の意味を帯びていることに気付いたとき、胸がぎゅっとなりました…。とても繊細で美しく、でも切ないお話をありがとうございます。