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タールは巨大な矢を左手2本で支える。
右腕2本はなくなり、影が漂っている。
尖矢は推定縦横40cm。
矢というよりも釘のような形状をしている。
タールは大きく息を吐き、ゆっくりと佐川を見た。
「ククク、今度こそ終わりだ」
「そして、私が1番乗りだ」
2回1番乗りと言った。
余程固執しているように思える。
「お前はなぜ、1番に拘る」
「影の中にも序列があるのか」
「影同士で争ってでもいるのか」
タールは興奮気味に答えた。
「影同士の争い、そんなものは私の勝ちで決まりだ」
「お前は当て馬ダ、ワタシの」
「ヒャハハハ」
「オマエはアテ馬、ヒャハハハ」
「ぐぬぬぅ、消えも、ガイは、ばあのしかいがら」
タールと会話が成立しない。
矢を巨大化させた反動なのか。
どうやら技のリスクがあるようだ。
タールは4本の足に力を入れた。
2本の左手で矢を掴み、投げる姿勢をとった。
佐川も左手をポケットの中に入れ、何かを取り出した。
「これでケリをつける」
取り出したのは、マッチ箱だった。
タールの左腕の筋肉が膨張する。
佐川がマッチ箱からマッチを取り出す。
タールが狙いを定める。
佐川がマッチに火を灯し、右手から左手へマッチを移動させる。
タールが叫ぶ。
「終わりぃぃだぁ」
佐川は左手でタールへ向けて、マッチを投げる。
タールは巨大な矢を投げ飛ばす。
最早、目で追える速度ではない。
佐川はマッチを右の拳で殴る。
殴られたマッチは燃え尽き、大きな炎となり前方へ広がる。
巨大な矢と炎が接触し、矢は燃え尽きた。
タールの見る景色はスローモーションになった。
実際はスローモーションではないが、そのような感覚に襲われた。
炎の真横を佐川が走り抜けてくる。
避けなければ、頭が理解しても体は動かない。
佐川は右手を握り締め、タールの腹部にアッパーを入れた。
拳の波動がタールの腹部を貫通し、黒い血が銃弾のように飛び散る。
「ナゼダ、オマエの力は拳をトバスのではないのか」
「このタンジカンで力の使い方を理解したと」
タールは前方へ倒れこんだ。
影が蜜蜂のように霧散していく。
消えいくタールをぼんやりと見つめた。
「この力は拳を飛ばすのではなく、増幅する力だ」