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彷徨う漆黒

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1-14.タールとは

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2023年11月28日

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タールを倒した佐川。

時は医療室に遡る。

このグローブの発動条件を探っていた。

右手で拳に力を込める。

正拳突きをする。

拳の波動が発生。

拳の力加減で、威力と大きさが調整できることがわかった。

10回くらい弱い威力でトライすると、ある出来事に気付く。

それは拳に当たる水滴も拡散することがわかった。

このグローブは、水も拡散いや増幅機の役割を担っている。

机の上に灰皿を見つける。

その横にはマッチ箱が置いてあった。

試しにマッチをグローブで殴ると火が前方へ弱弱しく、広がった。

これだと、佐川は増幅機能と確信した。

佐川は膝に両手をつき、肩で呼吸していた。

すると、右手のグローブは消えてしまった。

突然の出来事に動揺するが、心配は気苦労に終わる。

A4の紙が佐川の目に止まり、元の字が表示された。

「衝撃は、人を守り」

「罪には、制裁を与え」

「拳を飛ばすは、人に制裁を」

不思議な力と感じたが、頭が働かない。

何か甘いものを食べたい気分になる。

こんなことなら、家を出る前に冷凍庫のアイスを食べればよかった。

家族のことが心配になり、力を振り絞る。

足がガクガクと震えている。

まだ高校生だ。

意味不明な事件に巻き込まれ、錯乱せず冷静を保つ自分が怖くなった。

「早く、家族の無事を確認しない」

あれから1時間半が経つ。

グーンとイリがまだ俺を捜索しているはず。

ぼやぼやしていられない。

佐川の震えが止まった時、紙に文字が印字された。

「何、何」

「タールとは」

文字の意味がわからない。

タールの意味を考えていると、左腕が光り出した。

眩しい光で目を閉じた。

目を開けると、クロスボウが装着されていた。

ブリキのおもちゃみたいだ。

佐川は少し考える。

つまり、タールの力が紙に吸収されたということか。

「その力の発現条件は、言葉を口にするだな」

クロスボウを観察するが、矢がない。

すると、紙に字が刻まれた。

「タールを知らぬ者、真の力は得られない」

その文字はすぐに消え、クロスボウも消えてしまった。

グローブは出せるのだろうかと疑問に思い、発動条件を口にした。

急な吐き気を催した。

口から出たのは、黒い血だった。

どうやら、グローブも回数制限があるようだ。

クロスボウ、グローブは使えない。

これ以上の戦闘は避けるべきだ。

「タールを知るぬも何も初対面で、奴のことなんぞ知るか」

目の前にあった紙は消えていた。

ポケットの中に手を入れると、四つ折りの紙が出てきた。

紙の消失と定位置に戻る機能を確認した。

サーザスみたいに指パッチンで、自動で現れてくれる機能はないようだ。

浅く溜息をつき、また走り出した。

「今度の目的は、佐川家の安全確認だ」

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