「律?ぼーっとしとらんで、はよ」
真っ白な雪が積もることはなく、ただ淡々と降ることを目的にしているように感じる。
「彩芽、ほんまに良かったん?」
冬休みの午前3時20分。家を抜け出し、死の旅へ立とうとしていた。
「なに……あぁ、どうせ暇やったし」
「そうやなくて!」
律は食い気味に彩芽の言葉を遮った。違う、そうじゃない!と言わんばかりの声量に彩芽は少し驚いて耳をかいた。
「大きい声出さんでよ……付き合ったるって、律が死ぬなら、私も着いてったる」
彩芽は律の背中を叩いて、ニヤニヤと顔をふやけさせた。だけど、彩芽の目は雪によく映える黒だった。
「1人は、寂しいやろ」
雪はまだ降っている。