「クソッ!どこ行ったんだよあのバカは!」
三郎が悔しそうに床を叩く。
四人は三郎と雷蔵の部屋に集まっていた。
「‥‥‥今思えば朝から様子変だったよねハチ。」
雷蔵が拳をぎゅっと握りながらうつむく。
「ご飯食べてるときも目が合わなかったし、昨日は何も用事ないって言ってたのにいきなり実家に帰るっていい出したし。」
「‥‥あのときちゃんと問いただしておけば、」
雷蔵から目をそらした三郎は過去の己を悔いた。
「‥それは俺も同じだ。」
兵助も袴を握りしめた。
部屋中がなんとも言えない空気になる。
パンッ!
「コラコラ!今更過去を悔いても八左ヱ門は戻ってこないぞ!今は先生方が来るのを待つんだ!」
「勘右衛門、」
三郎は真っ直ぐな目をしてる勘右衛門を見て、いつもと変わらない不敵な笑みを浮かべた。
「そうだな。」
三郎がそう言うと、雷蔵が笑った。
「三郎はほんとに八が好きだね~。」
「ホントなのだ!はっちゃんのこと独占欲丸出しで見ているくせに手を出さないヘタレだけどね。」
兵助はそう言うと、豆腐を食べた。
「うっうるさいぞ兵助!だいたい、付き合ってるのだから独占欲丸出しでもいいじゃないか!」
三郎と八左ヱ門はいわゆる恋人関係だ。
3年生からのお付き合いだが、キスまでしかしていないカップルだ。
「もしかしたら八左ヱ門、三郎に愛想つかしたんじゃない?てー出してくれないから。」
勘右衛門に蹴りを入れた三郎はそっぽ向いた。
「前に手を出そうとして拒否られたんだよ。」
部屋に沈黙が流れる。
「なっなんかごめん。」
スパン!
勘右衛門が謝ったとほぼ同時に、部屋の扉が開いた。
「何だ、竹谷がいなくなってしょぼくれるか荒れるかあると思ったのだが‥‥。静かだな鉢屋。」
「立花先輩。」
部屋の戸を開いたのは仙蔵だった。その後ろには他の6年生もいる。
「先生方の話がまとまった。竹谷の件は一旦おいておくことになった。」
「っ!なぜですか!」
仙蔵の言葉に声を上げたのは、三郎だった。
「‥‥‥学園を狙ってる城が動き出している。」
仙蔵の言葉に部屋の空気がピリつく。
「どういうことですか?」
「詳しいことは分からない。が、学園長の部屋に矢文が来てその文にそう書かれていたらしい。本当かもしれんし嘘かもしれん。真偽がはっきりしないのに動くのは危険ということで竹谷の件は一旦保留となった。」
「そんな‥‥。」
「真偽がはっきりしたら捜索に出る。いいな。」
仙蔵の、6年生の真剣な表情に、他の5年生が頷く中、
「八左ヱ門‥‥‥。」
三郎は静かに唇を噛みしめた。
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