「行くぞ。」
朝日が上り、ついに作戦が決行された。
真っ黒な装束をまとった八左ヱ門は木の上から冷たい瞳で学園を見下ろしてる。
「作戦は分かってるだろうな。」
八左ヱ門の後ろに立った男は、八左ヱ門の肩に手をおいて微笑んでいる。
「はい。」
「フッ。学園の奴らも可哀想にな。今日で死ぬなんて。」
「‥‥‥こんな甘ったるい環境で6年間過ごしてプロになったら直ぐに命をおとす。それもとても酷いやり方で。そんな目に合わずに済むのだからむしろ感謝してほしいくらいです。」
「確かにな。‥‥‥そろそろ時間だ。行け。」
「はい。組頭。」
八左ヱ門は口元に手をあてて、息を吸った。
「アウォーン」
森中に八左ヱ門の遠吠えが響き渡る。
−アウォーン
-アウォーン
~アウォーン
しばらくすると、たくさんの返事の遠吠えが響き渡る。そして八左ヱ門達がいる木の下は50を超える狼が集まり、己を呼んだ主、八左ヱ門を見上げている。
八左ヱ門はその中に飛び降りると、一番大きく一番美しい毛並みの狼の額に自分の額をあてた。
「頼んだ。」
狼は、額を離した八左ヱ門の首に匂いをつけるように顔をこすりつけると、他の狼達を率いて走っていった。
「ほんとに動物には愛されてるんだな。お前は。」
木の上から降りてきた男が八左ヱ門の隣に立つ。
「‥‥‥俺はもう行きます。」
「あぁ。しくじるなよ。お前が失敗したら全てがパァだ。」
「はい。」
八左ヱ門はさっきまで見下ろしていた忍術学園へ走っていった。
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