テラーノベル
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屋敷に戻る頃には。
勝利は完全に眠っていた。
泣き疲れた顔。
少し赤い目元。
でも。
もう苦しそうじゃない。
聡は静かに部屋のドアを開ける。
起こさないように。
音を立てないように。
そっとベッドへ下ろした。
「……ん」
少しだけ動く。
でも起きない。
安心してるみたいに、聡の上着をまだ少し掴んでいた。
聡の動きが止まる。
数秒。
静かな沈黙。
そして。
ほんの少しだけ、目を伏せた。
「……困ります」
小さい声。
でも。
嫌そうじゃない。
むしろ。
少し安心したみたいな声。
そっと指を外して、毛布を整える。
乱れた前髪を軽く避ける。
寝顔を見る。
……安心しきった顔。
今日。
いっぱい泣いた。
怖かっただろう。
悲しかっただろう。
なのに。
最後には。
「聡、来るもん」
当たり前みたいに言った。
信じ切った顔で。
思い出すだけで。
胸が少し苦しくなる。
聡は静かに椅子へ座った。
ベッドの隣。
いつもの位置。
そして。
誰も見ていないことを確認するみたいに、小さく息を吐く。
長く。
深く。
張っていたものが、全部落ちるみたいに。
「……怖かった」
ぽつり。
今までで、一番弱い声だった。
掠れていた。
少し震えている。
「また、間に合わないかと思った」
静かな部屋。
返事はない。
当然。
勝利は眠ってる。
でも。
だからこそ、出てしまう。
「二回目です」
小さい声。
責めるみたいに。
自分へ。
「大事なものを守れなかった」
キーホルダー。
パーカー。
どっちも。
勝利が泣くくらい、大事だった。
なのに。
守れなかった。
護衛なのに。
情けない。
聡は少しだけ額を押さえた。
いつもなら、こんなことしない。
感情で崩れない。
冷静でいる。
それが仕事。
でも。
今日は無理だった。
勝利が泣いてる顔。
「じいちゃんの、だったのに……」
震えた声。
ずっと頭から離れない。
そして。
一番離れないのは。
泣き疲れて眠る前。
「聡、来るもん」
あの言葉。
信じてるみたいに。
当たり前みたいに。
それが。
怖かった。
聡は少しだけ俯く。
そして。
誰にも聞こえないくらい小さい声で零した。
「……もし次、間に合わなかったら」
そこで言葉が止まる。
考えたくない。
嫌だ。
本当に。
嫌だ。
普段の聡なら絶対出さない感情だった。
数秒。
長い沈黙。
そのあと。
本当に弱い声で。
ぽつり。
「……怖いです」
初めてだった。
敬語のまま。
取り繕う余裕もない。
ただの弱音。
静かな部屋。
その時。
ベッドの上で、勝利が少し動く。
「……そ、」
寝言。
聡の視線がすぐ上がる。
勝利は眠ったまま。
でも。
少しだけ眉が下がってる。
不安そう。
聡はすぐ立ち上がった。
迷いなく。
ベッドの横へ。
そっと前髪を避ける。
低い声で、静かに言う。
「大丈夫です」
寝ていても聞こえないはずなのに。
それでも。
言わずにいられなかった。
「ちゃんといます」
すると。
勝利の表情が少しだけ緩む。
安心したみたいに。
呼吸も落ち着く。
聡は少しだけ目を閉じた。
そして。
本当に小さい声で。
「……俺の方が、救われています」
誰にも聞こえないくらい弱い声だった。
コメント
1件
うわっ……めっちゃ良かった……。第20話、完全に聡の内面にフォーカスした回だよね。「怖かった」「間に合わなかったら」って、あのいつも冷静で完璧な聡が、勝利が寝てるからこそ出せる本音。そのギャップにやられたわ。最後の「俺の方が救われてます」で全部持ってかれた。頼む、この2人には幸せになってほしい……。次話も楽しみにしてる🔥
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