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カツカツ。
ヒールの音が路地裏へ響く。
「ったく。ウマいものとは何ごとじゃ?こんな汚ならしいところへわしを呼び出して。」
音の主は今にもここから出たい、というように歩いている。
そのじめじめとした道は、タバコやライターが散らばっていて、見るからに危ない感じがする。
音の主は赤色の散った薄紫色をした真っ直ぐな髪をなびかせ、色白の肌には赤色の紋様が怪しく写っている、見るからにイタいコスプレイヤーか人外だと分かる見た目をしている。今回は後者の方だ。そう、
と、明かりが見えてきた。
「ここかの?『ラーメン みしま』ってのは。」
言い終わらないうちに、ガラガラと目の前の扉を開く。
「らっしゃーい!おぉ!珍しい客だな!まぁ、座って座って!!」
威勢の良い、男らしい声に一瞬ビクッとした。
「お!あ!魔王さま!こっちです!」
紫色の髪、長い睫、何より紺色のベレーを被ってもなお隠しきれていない黒色の角は、薄暗い店内でも分かる。魔王の部下リウン=リウニルだ。
「おぉ、リウン!」
見慣れたものに、嬉しくなって駆け寄る。
「して、わたしをここへ呼び出すなんて、何があったんじゃ?」
「はい!ぜひ魔王さまにこの世の『らーめん』を食べてほしくて!」
「『らーめん』…とな?」
「んん?なんだい!あんたもラーメン食べに来たのかい?何ラーメンが良い?勧めは『跳ね火ラーメン』よ!」
いきなり飛び込んできた女の声に、魔王は驚く。
「お、おお、お、お主、ここの者かの??」
おどおどとしながら魔王はその声の主である、茜色の髪の女に問う。と、
「あぁ!魔王様は始めてですよね!こちら、常連さんのアカネさんです。アカネさん、こちら私の主人である…えーと、ネオたん様です!」
慣れたようにリウンが紹介する。魔王の名前で一瞬詰まったのは、魔王の真の名フラビオル・ネオミン=ネオウが、この世で呪いの真言とされているため。こちらの世界では名を偽るしかないのだ。
「おお!よろしく!ネオたん!」
「よ、よろしく…アカネ殿…」
軽く挨拶したところで、リウンが注文していた『跳ね火ラーメン』が目の前に置かれた。
「うちのは辛いけど、嬢ちゃん、食べれるか?」
先程の男がラーメンを持ってきたのだ。
「ほう、これが『らーめん』とやらか…