赤色 の 風船 が 、 ふよ ゞ と 風 と 戯れて いる 。
その 時 、 桃 が 赤色 の 風船 を 追いかけて 走り 出した 。
「 … 桃 … ! 」
俺 は 、 桃 を 引き 留めよう と する も 1歩 遅かった 。
桃 の 手首 を 掴もう と 伸ばした 手 が 空 を 切る 。
トラック の 音 が する 。
その 瞬間 、 周囲 の 時間 が ゆっくり に なる 感覚 が した 。
音 も 、 景色 も 、 何もかも が 。
この 光景 に 、 見覚え が あった 。
赤色 の 風船 が 、 トラック の 前 に 飛び出して いて 。 桃 が 、 必死 に 手 を 伸ばして 。
… トラック の ライト が 、 風船 と 桃 を 照らして いて 。
俺 の 手 が 、 震える 。
まだ 、 怖い 。 桃 の 傍 から 離れる の が 。
桃 の 笑顔 を 、 守らなきゃ いけない の に 。
俺 が 、 守らなきゃ 。 俺 が 。
「 やめて 、 行かない で … 赫 … ! ! 」
突然 声 が 響く 。
… 桃 だった 。
確か に 、 桃 の 声 。
でも … これ は 。
「 … 桃 。 もう 、 気づいてる ん だ な 。 」
桃 の 声 は 空 から 降り 注ぐ よう だ 。
目 の 前 の 桃 じゃ ない 。
「 置いて いかない で よ … お願い … 」
桃 の 声 は 涙声 で 、 掠れて 震えて いた 。
まるで 、 絞り 出した よう に 。
「 … 俺 に 任せろ よ 、 桃 。 」
空 が 揺れる 。 そして … 溶け 始めた 。
視界 も 水 の 中 の よう に 揺らぐ 。
時間 が ない 。
その 瞬間 、 また 時間 の 流れ が 速く なる 。
トラック の ブレーキ 音 が 響く 。
「 桃 … ! ! 」
俺 は 反射的 に 、 桃 を 突き 飛ばした 。
考える 前 に 、 体 が 動いた ん だ 。
世界 から 色 が 消えて 、 赤 だけ が 残った 。
その 瞬間 、 俺 の 目 の 前 も 真っ赤 に なった 。
「 … 赫 … 嫌 だ 、 待って よ 、 赫 … ! ! … 置いて いかない で って … 言った の に … ねえ … 赫 … 」
今度 は 、 桃 を 守れた 。
1つ も 怪我 が なくて 安心 する 。
当 の 俺 は 出血 が 酷く て 、 頭 が 少し くら ゞ する が 。
「 桃 … 泣くな よ 。 … 笑顔 の 方 が 好き だ から 、 さ … 」
「 行かない で 赫 … 1人 に しない で …」
泣き虫 で 困った もん だ な 。 まあ … そこ が 可愛い ん だ けど さ 。
「 … 今度 は 、 離す な よ 。 これ が … お前 の 『 明日 』 で … 俺 の 『 明日 』 、 だ から 。 」
やっと 捕まえた 風船 を 、 桃 に しっかり と 握らせる 。
「 また … 明日 。 」
桃 の 嗚咽 と 、 俺 の 呼吸音 だけ が 響く 。
でも それ は 、 段々 小さく なって 。
桃 の 嗚咽 も 遠く なって 。
… 俺 は 、 息 絶えた 。
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