テラーノベル
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転がり込んだビルの中
上へと上がる階段の前で 私《わたくし》は安堵の息を漏らす
良かった、慰謝料を払わずに済んだ
ガシャガシャとシャッターの揺れる音もしないのは、少し不思議だが、まぁ、そう言うのなんだろう、私《わたくし》は考えるのをやめた
暫くしていると、階段から足音がする
まずい、此処もダメだっただろうか
思わず戦闘態勢を私《わたくし》は取る
階段から降りてきたのは黒い影では無かった
紫の髪で黒いロングブーツ、灰色の瞳が印象的な未成年の様に見える男の子
成人男性だったら申し訳ないが、私《わたくし》にはそうは見えないので良しとする、高校生くらいだろうか
だが、これだけはわかった この人人間じゃ無い
確証を持った理由は少なく見積もって3つ
1つ 異様なオーラ、幼く見えるのに、どこか老人の様な雰囲気がある、若い人の生き血を飲んでその容姿を保っていて、実は1000歳だと言われても不思議では無い
2つ 幽霊の様な白い肌 まるで生まれてこの方、一度も外に出たことがない様な白い肌
3つ 頭についてある一本の角 童話かなんかで人間に化けた鬼の様な角が額の左側と言ったら良いか、と言った場所に生えていた
その鬼?の少年?に見惚れている
今思ったが不確定要素が多いな、鬼みたいな見た目なだけだし、少年かもわからない、なんなら人間かもわからない
「んぇ…人間???」
少年は目を丸くして言った
「え……はい、そうです」
私《わたくし》は比較的冷静な態度で応答した、と言うか、人間かどうかを聞かれる事自体珍し過ぎる、人生初では無いのだが、一応
「え…っと……そこの方は…?」
「は?」
まずい、失礼過ぎる、厭、仕方がないだろう、実際私《わたくし》の近くに彼以外の人は居ない
「え、あ!ふーん、見えてないんだ、あーね、」
「は??」
まずい、二回目だ、流石に怒られても良い
「あ、申し遅れました、僕は陽当 祭菜見てわかる…わかんないかもだけど、酒呑童子です、よろしくね」
丁寧な方だな、と思った。え、酒呑童子?
「あ…私《わたくし》は…」
以下省略である、二回も同じ自己紹介を聞きたい人など、中々居ないだろう。
「ん〜…そうだね、うん、取り敢えず、事務所にいこっか、この渋谷の事とか、色々説明するからさ」
「はい!!」
「んふふ、声でかぁ」
話し方とかの割に笑い方可愛いな、と思った