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「ちょっと水臭いんじゃない? 何勝手に危ないことに首突っ込もうとしてるんだよ」
「――別に、僕は……」
「そうですよ、御堂さん。私たちはチームでしょう? 一緒に乗り越えようって、みんなで決めたじゃないですか」
「うっ……」
そんなふうに言われると弱い。
彼らを巻き込みたくない気持ちはあるのに。
――今こんな苦労を強いられているのは、もしかしたら自分のせいかもしれないのだから。
「……蓮さん。一番年上だからって、全部背負い込む必要ないじゃないですか。アタシたち、そんなに頼りにならない?」
悲しそうな目を向けてくる美月に、蓮は静かに首を横に振った。
「違うよ、美月さん……そうじゃないんだ。もしかしたら、この一連の出来事は僕に対する個人的な恨みから来ているのかもしれなくて……それで、みんなに迷惑をかけたくなかっただけなんだ。頼りにならないなんて、思ってないよ」
「つーか! もう充分迷惑かかってるし! 今更じゃん?」
東海の言葉に全員が大きくうなずく。その様子を見て、蓮は胸に熱いものが込み上げてくるのを感じ、慌てて俯いて唇を噛み締めた。
この撮影が始まってからというもの、自分の知らない感情ばかりで困る。
打算も駆け引きもない純粋な言葉に、胸が詰まって泣きそうになるだなんて……今までの自分からは想像すら出来なかったことだ。
「話してくれない? お兄さんが何を抱えているのか。……一人より、みんなで考えた方がきっといい答えが見つかると思うから」
「私も、小鳥遊さんと同じ考えです」
「アタシも知りたい!」
「ぼ、ボクも……」
「……みんなが聞くって言うなら、オレも聞いてやってもいいけど」
ナギと弓弦が優しく語りかけ、さらにメンバーたちに囲まれる。
皆の優しさが心に染み、じんわりと目頭が熱くなったところで、凛がそっと蓮の肩に手を置いた。
「いいメンバーに恵まれたじゃないか」
「……うん。本当だよ……」
涙を拭いながら、小さく笑った蓮は顔を上げ、ゆっくりとそれぞれの顔を見渡す。
そして――ぽつりぽつりと口を開き始めた。
「それで? 蓮君はどうするつもりなの?」
「うん? そうだなぁ、折角名刺を貰ったんだから、呼び出して本人か確かめてから無理やりにでも口を割らせようかと」
雪之丞の質問に手に持ったコーヒーのカップを眺め、ゆっくりと視線を上げた蓮は笑っていた。
どす黒い何かが溢れだしそうな笑みをうかべ、口元は弧を描いているものの、目元は一切笑っていない。
「お、お兄さん……。お願いだから殺さないでよ?」
「やだなぁ、そんな物騒な事はしないよ。返答次第じゃ、腕の一本や二本ダメにするかも知れないけどさ?」
蓮の笑顔を見た三人は顔を青ざめさせ、彼の言葉を聞きブルリと身体を震わせた。
「マジで力づくで捻じ伏せそうだなオッサン」
「え? だってそうするしかないだろう? 他に方法でもある?」
そんな彼等の様子を見て小さく笑いながら、蓮は残りのコーヒーを飲み干した。
「取り敢えず、目的は奈々さんの居場所を聞き出すことと、これから先、僕らに一切関わらないようにしてもらう事。ですよね」
「監督の奥さんの説得も、じゃない?」
「いや、監督はまぁ、自業自得な気がするし……。塩田が関係しているかどうかはわからないから……」
雪之丞がそう言えば、全員揃って『確かに』という表情をする。それにしても――
「監督に関して言えば、タイミングが被っただけの可能性もありますからね」
「……うーん。でもまぁ、意外と動画配信の反響もいいし、ゆきりんのお陰でCGのクオリティも以前と遜色なく出来てるから、現状のままでもなんとか行けそうなんだけどね」
美月がぼそりと呟いた。その言葉に、場の空気がわずかに和らぐ。
だが――蓮はすぐに小さく肩を竦めて、口元に笑みを浮かべた。
「確かにね。撮影も今のところ順調だし、配信の数字も好調。……でも、それは“今のところ”に過ぎない」
不穏な言葉とともに、蓮の瞳が細く光る。
「後は塩田をとっ捕まえて奈々さんの居場所を突き止める。それから、もう二度と僕らの邪魔をしないように、釘でも打ち込んでおけば……ひとまず安心ってことだよね?」
腹黒さをにじませた笑顔でニッコリと微笑む蓮を見て、その場に居たメンバーたちは揃って頬を引きつらせる。
この男は本気で塩田を捻じ伏せるつもりなのだ。
――絶対に殺さないでくれよ……。
弓弦も、美月も、雪之丞も、東海でさえも。
その場にいた全員が同じことを思ったのは言うまでもない。
だが同時に――その不敵な笑みが妙に頼もしく思えたのも、また事実だった。
「……とにかく、計画を立てましょう」
弓弦が溜息を吐きながらも口を開き、雪之丞も小さく頷く。
こうしてメンバーは重苦しい空気を引きずりながらも、塩田を炙り出すための作戦会議へと進んでいった。