僕は母さんが死ぬ直前、ある言葉を聞いた。いや、ある言葉が聞こえた。母さんが最後の力を振り絞ったかのように、声を出したから…それは母さんらしくも、母親としての最期の言葉だった…
『拓馬、寂しい思いをさせてごめんね。でもね、母さんは母さんなりに拓馬を育てた。私は拓馬を誇りに思う。拓馬…愛を持って生きなさい。そして、幸せに包まれて逝きなさい。貴方は他の子とちょっと違う所があるかもしれない。けどね、母さんはどんな拓馬でも愛してる。拓馬、ありがとね。母さんに幸せを運んでくれてありがとう。拓馬…貴方は母さんの誇りよ。』
(母さん…)
僕は多分…生きれる。母さんの言葉が心に残っているから。
母さんの葬式の日…
僕は親戚がほとんどいない中、母さんの言葉を虚ろに思い出していた。
「母さん…僕はこれからどうすればいいの…?」
返って来ない声…僕は母さんの声をこれから聞けない…とても悲しい。けれど、自然と涙は出てこなかった。
今思い返すと、あのとき泣かなくてよかったと思う…あのとき泣いてしまえば、きっと感情も流れ落ちてしまっただろうから…
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