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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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例の会議から少しして、大妖精による里内への呼びかけが始まった。滞在している人間を追い出す名目で腕に自信のあるもの二名を選出し、ミナル達を負かしてくれるものはいないかと声明を上げると候補者はあり得ないほどやってきた。それほどまでに今の妖精族は人間を心底嫌っているのだろう。大妖精自身この現状に悲しさがにじみ出てきたのは誰も知らない。様々な妖精族が躍起になっている傍ら、ただそれを木の上から座って眺める一人の少女がいた。

「……。馬鹿らしい。これを企画した大妖精様もそれを提案したであろう人間も。そして、手柄欲しさに躍起になってる同族も。全部が馬鹿らしい。」

白銀の髪を後ろに束ね、少し鋭い目つきだがエメラルドのようなきれいな瞳を持った少女がそうつぶやいた。そんな彼女を探していたのかまた別の少女が木の下から声をかける

「『エメル』お姉ちゃんまた木登りしてるの?大人の人に怒られちゃうよ?」

「いいの別に。何が女の子らしくいきなさいって話だから。当の本人たちはこの騒動で子供みたいにワーワー騒いでるんだし、ここでじっとしてる私の方がずっと大人じゃない。」

「もー!大妖精様にも怒られても知らないからね!!」

「『ラルド』も隠れて森の外で動物とお話ししてるじゃない?それ、バレたら私よりも危ないと思うけどね?」

「うぐっ……。」

「まぁ、ここは可愛い妹のお願いは聞いてあげようかな。」

そういいラルドと言われていた少女の前に飛び降りる。

「そういえばこの騒ぎってなーに?」

「いまここにきてる人間を追い出すことのできる催しをやるんだとさ。だからみんなこんなに騒いでるんだよ。」

「そうなんだ~。でもさ?なんで人間さんと私たちは関わりを持てないんだろうね?」

「人間が悲しみを運んでくるからだとさ。大昔人間と仲良くしてた時に妖精族に大きな被害が訪れてその原因が人間にあったからそれ以降は関わるのをやめようって話になったんだよ。」

「それは、私でもしってるけど……。でも、今来てる人間さんは悪い人には見えないよ?」

「人間に限らず、妖精族でも優しい態度とって実は悪いことしてるやつなんていっぱいいるだろ?例えばお前とかな?」

「えぇ!?私悪いことしてないよ!!」

「隠れて森に行ってるくせに何言ってんだか……」

「そ、それはそのー……」

「表ではいい子ちゃんしてる私の妹が実は隠れて森に行ってるなんてな。見かけによらないって言葉はこのことだよ」

「むー!」

「頬を膨らませてかわい子ぶってもお姉ちゃんは騙せないぞ?」

他愛のない会話を交わす姉妹。片方は姉の『エメル』。達観しているのか、物事に大人びた意見や感覚を持つ彼女だが好きな事や食べ物はまだまだ年相応。妹の『ラルド』は年相応の子供らしい純粋無垢ないい子。容姿は姉『エメル』と違い肩甲骨辺りまで伸ばしたストレートな長髪。彼女の眼はまるでうさぎのようなつぶらな眼をしており、それ以外は姉である『エメル』となんら変わりはない。髪色に瞳の色でさえも同じ。もし二人が同じ格好をしたら簡単には見分けがつかないだろう。

そんな二人に誰かが声をかける

「また二人して内緒の話?私達も混ぜてよ!」

「『アリサ』ちゃん!」

「どうせまたエメルが妹に怒られてたんだろ?」

「『ミクナ』ちゃんも!!」

「……。人間を連れ帰ってきた二人が何用?」

「邪険にしなくてもいいじゃないかエメル?確かに厄介ごとを持ってきたのは私も謝る。それに、そんなに嫌なら君自身の手で追い出せばいいだろう?」

「ふん……。私ら子供はどうせ蚊帳の外だ。関わるだけ無駄なんだよ。」

「相変わらず達観してるな君は?」

「ふん……。」

「そんな君にいいお知らせだよ」

「はぁ?」

「今大人たちが騒いでる件に関してだが、老若男女問わず実力があれば採用してくれるって話だ。実は私たちがここに来たのは二人にこの話を聞かせたくてね。」

「……。別に私らはミクナが思うほど強くはないよ。魔法だって大人の方が秀でてる。」

「でも、エメルちゃんもラルドちゃんも道具の扱いは里一番でしょ?」

「あの程度で里一番なのは大人が魔法ばっかに頼ってるから。誰でもあのレベルは到達できるし……。」

「私は知ってるぞ?お前のその弓や剣の扱いが秀でてるのを」

「だから!あの程度なら……。」

「この前森に出た『ジャイアントスネーク』あれを鮮やかに倒したのはエメルだろ?」

「……。」

「それだけでなく、『アシッドボア』を弓で完封したのはラルドちゃんだね?」

「あしっどぼあ?がわかんないけど、確かにこの前森で遊んでたらほかの動物さんにいじわるするイノシシさんをやっつけたのは私だよ!!」

「す、すごいよラルドちゃん!!」

「えへへ~。そうかなアリサちゃん?」

「だからと言って私らが出る理由にはつながらないぞ?あの人間が居ようが居まいが私らには何にも関係ないからな。」

「もし、この催しに大妖精様が見に来るとしても?」

「!?」

「えぇ!?大妖精様が来てくれるの!!」

「いつも忙しそうにしてて会えないもんね」

「……。私を焚きつけるにはいい嘘だなミクナ?」

「これが本当なんだよなぁラルド。なぜなら私たちはあの人間たちをここまで案内した張本人で、その立場上大妖精様の間でお話を聞いていた唯一の一般妖精で、そこで私が聞いた話なんだ。信憑性は高いだろ?しかも、ここで君に嘘をつくことに私には何もメリットはない。違うかな?」

「……。つまるところ私らにエントリーしてほしいんだな?」

「まぁ、そういうことかな。残念ながら私らでは『里内最強』の肩書は重いからね。」

「現に外で別の怖い人間さんに襲われた時も何とか倒せたレベルだからね……。」

(里内最強……。もし、その肩書を手に入れたら大妖精様は私達子供らにもっと時間を割けるのかな?そうすればもっと大妖精様は楽できるのかな?何か力になれるのかな……。)

「どうかな?返事は私じゃなくて大妖精様に直接言ってね。人間とやり合う日は今日から三日後だから、早くしないとその枠奪われるからね?」

それを伝えるとミクナはアリサと共にその場を後にした。残された姉妹二人は今の話を聞き思案する。

「お姉ちゃんどうするの?あの人間さんとやるの?」

「……。行ったところで他の大人たちに引っ込んでろっていわれるだけさ。私ら子供はそれを指くわえてみてるだけでいい。子供の意見は基本通らないもんだと思ってるからさ。」

「お姉ちゃん……。よし!私決めた!!」

「え?」

「私だけでも行ってくる!」

「はぁ!?何考えてるんだよラルド!言っても門前払いされるだけだって……。」

「いつもはそうかもしれないけど、今回の催しは規模感が違うんでしょ?それに、『里内最強』て肩書すっごくかっこいいじゃん!女の子っぽくないけど前アリサちゃんが言ってたんだ!『ラルドちゃんたちは可愛くてそれでいて強いからこれっていわゆる無敵ってやつじゃないのかな?』てさ!」

「だからってな……」

「お姉ちゃんがいかないなら私だけでも行っちゃうからね!かっこよくてかわいい存在に私なって見せる!」

「ちょ……待てって!…………。はぁ、行っちまいやがった。」

頭を軽くポリポリと掻いた後仕方なく彼女の後を追うエメルであった。

俺が強いんじゃなくてお前らが弱くて仲間が強いんだ

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