テラーノベル
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僕は昔から、無能だった。父さんと母さんは、村でも有名な凄腕の魔法使いだった。
二人が魔法を使えば、村の人たちはいつも歓声を上げた。
(すごいな!)
(さすが二人とも!)
そんな声を、僕は何度も聞いてきた。
でも――僕には魔力がなかった。
ほんの少しも。
だから、魔法を使うこともできなかった。
(魔法使いの子供なのに魔力がないなんて)
(本当にあの二人の子なのか?)
(無能だな)
村の人たちは、僕を見るたびにそう言った。
時には石を投げられた。
時には足を引っかけられた。
何をしても笑われた。
僕は、いつしか自分自身のことを「無能」だと思うようになっていた。
でも、、不思議なことが一つだけあった。
父さんと母さんだけは、僕を一度も責めなかった。
殴らなかった。
怒鳴らなかった。
「どうして魔法が使えないんだ」
なんて、一度も言わなかった。
むしろ、いつも優しかった。
だからこそ、僕には分からなかった。
僕は何のために生きているんだろう。
どうして僕には魔力がないんだろう。
どうしてみんなは僕を虐めるんだろう。
どうして父さんと母さんだけは、僕に優しくしてくれるんだろう。
その答えを、僕は知らなかった。
そしてその答えを聞くことができる日は、来ないと思っていた。
____________________
ある日。
僕はいつも通りに過ごしていた。
すると突然――
バンッ!!
家の扉が勢いよく開いた。
pn「……父さん?」
そこに立っていた父さんは、息を切らしていた。
顔には、今まで見たことのないほどの焦りが浮かんでいた。
そして、僕たちに叫んだ。
(今すぐ二人とも逃げろ!!)
pn「え……?」
(ここはもうすぐ魔女狩りが来る!)
その言葉を聞いた瞬間、母さんの顔色が変わった。
(俺がここで足止めをする!)
pn「父さん……?」
(早く逃げろ!!)
何が起こっているのか分からなかった。
ただ、父さんの声が怖かった。
僕は母さんの手を握った。
そして二人で走って逃げた。
走って。
走って。
走って。
pn「はぁ……っ、はぁ……っ……」
息が苦しい。
足が痛い。
何度も転びそうになった。
後ろを振り返る。
でも、父さんの姿はもう見えなかった。
pn「父さん……」
そのときだった。
遠くから――
ドォン!!
大きな爆発音が聞こえた。
pn「……っ!」
母さんの手を握る力が強くなる。
pn「父さん……大丈夫なの……?」
母さんは答えなかった。
ただ、僕の手を強く握り返した。
その手が少し震えていた。
しばらく走ったところで、母さんが突然立ち止まった。
pn「母さん?」
母さんは僕の肩に手を置いた。
そして、優しく微笑んだ。
(ぺいんと)
pn「……なに?」
「私はここで足止めをするわ」
pn「……え?」
頭の中が真っ白になった。
pn「待ってよ……!」
「あなたには今から、足が速くなる魔法をかける」
pn「そんなのいらない!」
(だから、早く逃げなさい!!)
pn「母さんが逃げてよ!!」
気づけば僕は泣いていた。
pn「僕じゃなくて……母さんが逃げてよ……!」
母さんは、何も言わずに僕を抱きしめた。
その腕は、いつもよりずっと強かった。
そして、僕の頭を撫でながら言った。
(ぺいんと)
pn「……うん……」
「あなたは、自分のことを無能だと思っている?」
pn「……僕は……無能だよ……」
涙が頬を伝う。
pn「魔法も使えない……」
pn「こんなときだって、何もできない……」
pn「僕なんて……」
母さんは首を横に振った。
(違うわ)
pn「……え?」
(あなたは、気づいていないだけ)
母さんは僕の手を取った。
(あなたは、とても凄い子なの)
pn「……僕が?」
(そうよ)
そして母さんは、懐から一つのペンダントを取り出した。
黄色く、淡い光を放つペンダント。
それを僕の手のひらに乗せる。
pn「……なに、これ……?」
(これから、このペンダントがあなたを守ってくれるでしょう)
pn「……どういうこと?」
(いつか……あなたが強くなったときに、きっと分かるわ)
母さんは、どこか悲しそうに笑った。
pn「母さん……?」
(だから――今は何も考えなくていい)
(生きなさい)
その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。
pn「嫌だ……!」
母さんの服を掴む。
pn「母さんも一緒に来てよ……!」
(ごめんね)
pn「嫌だ……! 置いていかないで……!」
(……ごめんね、ぺいんと)
母さんは僕の額に口づけをした。
そして――
僕の背中を強く押した。
(走って!!)
pn「母さん!!」
振り返る。
そこには、泣きながら笑っている母さんがいた。
その姿が、少しずつ遠ざかっていく。
僕の足は、魔法によって勝手に前へ進んでいった。
pn「母さん……!!」
僕は何度も振り返った。
でも――
母さんは、追ってこなかった。
____________________
pn「はぁ……っ、はぁ……っ……!」
どれくらい走ったのか分からない。
森の中をひたすら走った。
もう足に力が入らない。
後ろから声が聞こえる。
(おい! あっちを探せ!)
(逃げたガキはどこだ!)
pn「……っ!」
見つかる。
殺される。
怖い。
逃げなくちゃ。
逃げなくちゃ。
でも――
もう走れなかった。
pn「……母さん……」
涙がこぼれる。
pn「父さん……」
その場に膝をつく。
そして――
バタッ。
僕の意識は、そこで途切れた。
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??「ふっふふーん♪ 今日はいい天気……だ……なぁ……?」
森の中を歩いていた一人の男が、足を止めた。
目の前には、一人の少年が倒れている。
??「……ん?」
男は少年のそばにしゃがみ込んだ。
??「誰だ……?」
少年の胸元には、黄色いペンダントがあった。
男はそれを見つめる。
??「……なんだ、これ」
少しだけ不思議そうな顔をしたあと、男は少年を抱き上げた。
??「とりあえず、館に連れて帰るかぁ」
そして、少年を抱えたまま森の奥へ消えていった。
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pn「父さん……」
pn「母さん……」
幼い僕は、二人に尋ねていた。
pn「僕には……なんで魔力がないの?」
父さんと母さんは顔を見合わせる。
(母さん……やっぱり、本当のことを言わなければ……)
(ダメよ)
(しかし、このままでは……)
(この子がもっと心も体も強くなってから)
(それまでは――)
二人は僕を見る。
(何も知らなくていいのよ)
――その言葉の意味を、僕はまだ知らなかった。
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pn「……っ!」
僕は勢いよく目を覚ました。
pn「……ここ、どこだろ……?」
見知らぬ天井。
見知らぬ部屋。
でも――
なぜか、とても懐かしい夢を見ていた気がする。
pn「……父さん……母さん……」
胸が苦しくなる。
pn「……ごめんなさい……」
涙が溢れた。
そのとき、手に何かが触れた。
見ると――
あのペンダントだった。
窓から差し込む朝日を受けて、黄色く輝いている。
pn「……母さん……」
僕はペンダントを握りしめた。
そして、声を殺して泣いた。
しばらくすると――
ガチャッ。
近くにあった扉が開いた。
??「あ、起きてたんだ……って」
男が僕を見る。
??「……泣いてる?」
pn「……」
??「大丈夫? 君」
その瞬間、僕は顔を上げた。
そして――
目を見開いた。
男の頭には、角が生えていた。
pn「……っ!?」
魔人。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いた。
pn「……っ!!」
僕は男を押しのけ、扉へ向かって走った。
??「えっ!?」
しかし――
次の瞬間。
僕の身体は、あっという間に捕まえられていた。
pn「離して!!」
??「ちょ、待って待って!」
pn「殺さないで!!」
??「は!?」
僕は必死に暴れた。
pn「僕は……せっかく逃げたのに……!」
頭の中に、父さんと母さんの姿が浮かぶ。
pn「最後は……魔人に殺されるんだ……!」
すると男は、少し困ったような顔をした。
??「……ねぇ君さ」
pn「……」
??「俺が拾って助けたっていうのに、感謝の一言もないわけ?」
pn「……え?」
男は僕を床に降ろした。
そして少し笑った。
??「まぁ、こんな姿見ちゃったら逃げるのも無理ないか」
男は僕に手を差し出した。
??「とりあえず、自己紹介しよっか」
pn「……」
??「俺は――らっだぁ」
男は笑いながら言った。
rd「この館の主だよ」
pn「……館?」
rd「そう。この館には、俺以外にもあと4人いる」
そして、らっだぁは首を傾げた。
rd「で、君は?」
僕は少しだけ迷った。
両親以外の人と話すのは――久しぶりだった。
pn「……僕は……」
喉が震える。
pn「ぺいんとって……いいます」
rd「ぺいんとか」
らっだぁは小さく笑った。
rd「よろしくな、ぺいんと」
その言葉が――
なぜか、とても暖かかった。
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rd「それで、ぺいんとはなんであんなところで倒れてたの?」
pn「……」
僕は少し迷った。
でも――
この人なら話してもいい気がした。
僕は今までのことを、全部話した。
村で虐められていたこと。
魔力がないこと。
父さんと母さんが魔女狩りから逃がしてくれたこと。
そして――
二人と別れたこと。
途中で何度も涙が出た。
声も震えた。
でも、らっだぁは何も言わなかった。
ただ、僕の話を最後まで聞いてくれた。
そして僕が泣き止むまで、黙って背中をさすってくれた。
やがて、らっだぁが口を開く。
rd「……そっか」
短い言葉だった。
でも、その声は優しかった。
rd「じゃあ、ぺいんと」
pn「……?」
rd「これからここにいるといいよ」
pn「……え?」
rd「行く場所、ないんだろ?」
pn「……うん」
rd「だったら、ここにいればいい」
僕は何も言えなかった。
こんな僕を――
必要としてくれる人がいる。
それが信じられなかった。
pn「……僕がいても、いいの?」
rd「もちろん」
らっだぁは笑った。
rd「今日からここがお前の家だ」
pn「……っ」
その瞬間、また涙が溢れた。
でも今度の涙は――
悲しいだけの涙じゃなかった。
僕はまだ知らない。
このペンダントに何が眠っているのか。
なぜ僕には魔力がなかったのか。
なぜ父さんと母さんは、僕に本当のことを隠していたのか。
そして――
あの日、僕を逃がすために二人が何をしたのか。
僕はまだ何も知らなかった。
ただ一つだけ。
この日から、僕の人生は大きく変わり始めた。
――僕が「無能」ではなかったことを知る物語が、ここから始まる。
コメント
1件
うわぁ……第1話、めっちゃ重くて切なくて、でも最後にちょっと光が見えた感じがたまらなかったです😭💔 ぺいんと君、両親にまで「無能」って呼ばれてないのに、周りに虐められて自分をそう思い込んじゃってるところが辛すぎる……。特に母さんが「あなたは凄い子」って言いながらペンダント託して背中押すシーン、泣きそうになりました。 そしてらっだぁさん!角生えてる魔人なのに助けてくれて、「ここにいればいい」って言ってくれるの優しすぎる……。この出会いがぺいんと君の人生を変えるんだろうなって感じがして、続きがすごく気になります!ぺいんと君が本当は何者なのか、ペンダントの秘密も含めて早く知りたいです…!✨
#ぺいんと愛され
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