テラーノベル
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結界の中に入ったが…体が溶けたとか服が溶けたとかはならなかった。
「ここどこだ、」
結界の入った先には森があった。あの黒い結界からは想定しなかった空間だ。また、薄暗い森で魔物の気配すらしない。時々薄ぐらい霧が出るぐらいで問題はなかった。
すたすたすたすた、
すたすたすたすた、
歩いて行くが進んでも進んでも森を抜けれる気配がない。
「はぁ…二時間ぐらい歩いたぞ…広すぎるだろ…」
念の為目印として木に傷をつけてみた。一回目…二回目…三回目…
やっぱり…同じとこを何度も回っている。右に行こうが左に行こうが斜めに行こうがここに戻ってきている。
「クッッソ…」
たぶんこれは、相手を惑わす類のやつだな。周りには術を発動させている奴の気配もない。つまり…この森自体が迷わせているのか。
「はぁ、魔力は温存したかったな…」
(結界…精神魔法、物理魔法無力化)
体に貼り付けるイメージで小さな結界を張った。また、迷ったら困るので一定の距離で目印を付けていく。今のところ目印をもう一度見ることは無かった。
「そろそろ…休憩」
結界を張るのも疲れる。家を出たのが朝ぐらい…捨てられていたときは昼過ぎぐらいだったから、今は夕方かな…
「太陽が見えやすかったら早いのに…」
この森は木が太く葉っぱや枝も細かく伸びているので空が見えにくく太陽も見えない。太陽を見れば何となく時間は分かるのに…
この森は…人を迷わせる専門の場所か。燃やしたら一番早いが誰かの土地かも知れないし…ここで敵を増やしたくはない。
とりあえず…木に登り今日はここで眠る。枝が太くて助かった。枝は高い位置にあるのでもしも魔物が寄ってきても大丈夫そうだ。木に登れる魔物ではなかったら…
その夜。
グワッ…ガァララ…ガァー…
「うるさいなぁ…」
夜になると魔物の声が聞こえてくる。木の足元から音がする。俺を狙っているのかもしれない。別に怖いわけではない。このくらいの脅威は…ダンジョンで何度も体験した。ドラゴンの巣で一眠りしたこともあるし…魔物を退治しないと帰れないなんて事もあった。さすがに、あれはやり過ぎだと思う。子どもの相手に何してんだか、
次の日…皆さんおはようございます。今日も今日とて俺は生きています。森を歩いては何も無い。進んでも代わり映えのない。そんな今、大きな問題があります。それは…
「おなかすいた…」
グー…グー…
俺の幼い腹が空いた。この年で2日も食べていない。いや…家でも色々あって飯を食べてないから3日目になるんじゃないか…このままでは空腹のあまり死んでしまう。
この森では食べ物は見つからない。あっても、青色で夜になると光るキノコとどこかで見たことのある赤いキノコに白い斑点模様のキノコぐらいだ。これは、マ◯オのキノコだろ…
「あははは、どう見てもアウトだよな…食べたら成長するとかならないかな…」
ヤバい俺壊れかけている。喉も渇いた。もう、喋れそうにない。もう何でもいいから食いたい。誰でもいいから…
グー…グルル…
この腹を満たしてくれ…
ガサゴソ…ガサゴソ…ガザ…
草木を誰かが通っている音がする。その音は、どんどんこちらへと近づいてくる。
魔物かな…もう魔物でもいいから捌いてくうか…
生肉お腹壊すかなぁ。どうせなら…だべれるのが
ガサゴソ…ガサゴソ…ガザ…ガザ…ぴょこ…
可愛い効果音とともに現れた。そこにいたのは…巨大な蛇だった。これもまた、電柱のようにデカく人を丸呑みできそうなぐらいデカかった。ここ最近、デカいの多くない?
ジーーーー
俺に狙い定めている。ヤバい…
逃げようと走るが…
あっ…走れない。空腹のあまり力が出ない。これじゃ…魔法を使う事もできない。最悪。仕方がねぇ…
やりたくなかったが…木の下の方に走る。
「腹痛上等!!」
木の下にあった青色のキノコを食べる。味はおいしくない。
「うっぇ゙っ…」
不味くて吐きそう。吐きそうな口を押さえ飲み込む。
「うっぇ゙」
(吐くな、吐くな、吐くな、)
でも、空腹を少し紛らわすことはできた。魔力を少し使うことはできる。木々を壁にして相手の攻撃を避けて正面を向く。
水の魔法で相手を倒す。火の魔法を使ったほうが一気に倒せるし、風の魔法を使ったほうが一発で切り倒せるが辺り一面を吹き飛ばしてしまう。それに俺、火魔法も風魔法も使えないし。水の魔法で弓の形を思い浮かべて打つ…
ドバッ…ドサッ…
脳天に刺さり…死んだ。危なかった…死ぬところだった。まさか…夜だけじゃなくて明るい時間でもいるとは…
ふらっ…
足元がふらつく、体が、上手く、動か、ない。
「あ、れぇ、」
ドサッ…
俺はそのまま倒れてしまった。目も耳も鼻も感じることができるが、体の感覚がぼやけていく。
あ、れぇ、
これ、や、ばぁい、
もう喉が渇いて無理。水分をくれ…
死体の近くで倒れると他の魔物が寄ってきて危ないと分かっているが…疲れのあまりだめだ。動けない…気を失いそう…まぶたが落ちてくる…
だ、れぇか、
たす、け、、て、
ガサゴソ…ガザ…
誰かが来たのか音がする。
じー
俺を見てくるのが目を瞑っていても分かる。
だ、れか、いる、、、
俺は声を振り絞って言う。
「み…ぃ…すぅ…」
もうこれ以上声は出ない。小さな声でしかないが伝われ、つたわれ、
ガザ…ゴソ…バシャ…
相手は伝わったのか…俺に水をかけた。
ゴクッ…ゴクッ…
後飲ませた。
久々の水だ。水が全身を満たす。俺は喰い付くように飲む。息を吸うことなんて忘れて必死に飲んだ。
ゴクッ…、ゴクッ、
…ちょっと…長すぎはしませんか…今のところずっと飲ませている。これは…窒息してしまう。息を吸うことを思い出し、
「ぷ、はっ…もう…じゅ…ぐ、わっ…ぶ…ん…」
なんとか目を開き押しのけながら言う。そこには…フードを深く被り外套を着た顔が見えない子供がいた。俺をじっと見ている。
「助け、てくれて、あり、がとう」
コク…
この子は頷いた。
グー…グー…
腹が鳴った。水だけでは満たされないようだ。でも助かった。水がなかったら死んでいた。
「あのう…もしよかったら食べ物ある…」
俺は一か八か聞いてみた。水もくれた上に厚かましいことはわかっているが
グぅ゙ー、グぅ゙ー、
お腹が空いて空いて、苦しい。お腹が痛くなりそう。この子は首をコテンとした。通じないのか…
「たべもの…たべる」
パンやリンゴを食べるように形を手振りで伝え食べる動きをする。
「……………!」
伝わったのか…この子は鞄からリンゴを取り出した。ただし、色はピンク色だ。
ゴクッ…
色は関係なく涎が出そうだった。今すぐに齧りつきたい。
「もらっていい…」
コク…
その動きを見た瞬間。俺は、瞬時にかぶりついた。久しぶりに食べたご飯は甘くておいしかった。みずみずしく甘めでシャキシャキして美味しい…
ワタワタ…
この子は急に手振りが慌てるようになった。
「ど、うしたの…」
!…
ときたのか鞄からハンカチを出し俺の顔を…拭いた。
「えっ…」
「な、なに、」
なにか、付いて、
ぽた…ぽた…
「あっ、…」
どうやら…俺は泣いていたらしい。この子を困らせてしまったかもしれないが嬉しかった。久しぶりのご飯に…久しぶりの人…久しぶりの優しさ…
こんなの泣かないではいられない。
「あ、りがとう…、ありがとう…」
俺はこの子に感謝をした。泣きながら食べ終わり落ち着いた後…
「ねぇ君どこから来たの」
どうやらこの子は迷子ってわけではなさそう。もしかしたら、街があるのかもしれない。そこに行けば…住む場所や食べ物…生きていけるのかもしれない
コテン…
伝わってない。やっぱり言葉がわからないのか。言語が違うとか…まさかここ違う異世界とか…
「家ってどうするれば…」
俺は、落ちている枝を使って家の絵を描く。絵に自信はないけど、四角を描いて三角の屋根を乗せれば…家に見えるだろう。周りには悩んでいる様子を見せるように?マークを大量生産する。
この子は腕を組み悩んでいる。
「いえ…どこ」
!
伝わったのか、真っ直ぐ向こう側をさした。
「俺も君の所について行きたい」
この子の手を取り伝わるか分からないけど伝える。走る動きと、この子を指で指す。伝わってほしい!!
ここから先何があるかわからない。俺だって一度決めたことはやりたい。俺はそこで生きてやる。この子はなんて言うか分からないけど…恩返しもしたい。俺はいきたい!
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