身に纏った制服の首元が
まるで私の首を絞めているように感じるのは
気の所為でしょうか
 
 
 私は今日も自ら監獄へと足を踏み入れようとする。
 
 囚人と其れを裁く者が
行き交う場所だ
 
 君たちも学生だったとき、否今学生という名で過ごしていて
此の檻の様な場所は窮屈に感じただろう
 
 私も勿論其の一人である。
 
 
 そして窮屈な場所から脱出しようと
 藻掻いて
 足掻いて
 苦しんで
 諦めた
 其の内の独りである
 
 ほんの少し息苦しいとか
 テストで見たくもない点を取ったとか
 体育の授業が嫌で仕方がないとか
 家でゆっくり眠りたいとか
 下らない理由が此処迄の人間を育てた。
 
 遅刻してきたからスクールバッグを持つ不思議な女子高生を見る目が増えた。
 
 彼等も高生の筈なのに、
友達を見るよりずっと暗く冷たかった
 
 其れでも私は頑張ってきた理由がある
 
 親友という名のモチベーションが私の頑張りたい理由
 
 「 おはよ、! 」
 
 其の3文字で意識を取り戻した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 嗚呼また夢だ。
 視界に入った時計の長い針は1を指していた
 深夜の1時ではなく、昼の13時。
 とっくのとうに学校は始まっていて無断欠席をして5日が過ぎた
 欠席をしたのはもう何日目か見当がつかない
 
 
 
 
 
 私には頑張ろうと言ってくれる親友も
 手を差し伸べる青年も
 励まし助け合える仲間もいない
 
 檻に入ってみれば‘孤立’という言葉がお似合いだった
 
 そんな事なら夢に溺れていたかった。
 そんな事なら高校に行こうと受験なんてしなければよかった。
 
 私に残された思考は学校へ行こうというよりも
学校を辞めてどうするか
 其れを考えるだけでも充分億劫だ
 
 
 
 
 
 
 最早流れる涙は
生理的に流れているのか、泣き喚きたくて流れているのかなんて知りたくない
 
 毎日鏡で見る泣き腫れた目は学校へと足を引かせる。
 
 約5分ほどぼうっとして、スマートフォンを起動させた
 通知には友達からのメッセージが数件届いている。
 
 『 キョウモコナイノ? 』
『 ドウシタノ? 』
『 ナヤンデイルナラソウダンニノルヨ! 』
『 イツデモタヨッテネ! 』
『 アシタマッテルヨ! 』
『 ワタシタチトモダチデショ? 』
 
 入学して早々作らなくてはいけまいとして出来た友人
 社交辞令をたっぷりと注がれ食欲を失せるには充分すぎる。
 
 ゆっくりと既読を付けて、其のメッセージ相応の社交辞令を
私からもたっぷりと届けてやった
 『 ダイジョウブダヨ! 』と。
 
 心底気持ち悪いと思う
其れでもそうでなければ余りにもカワイソウがすぎる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 花は1年も経たず散る
 海月は感情も無く熔ける
 
 
 そんな物に成りたい
 死にたいを目的とするよりも
人生に疲れたから辞めたいという方が正解だろうか。
 人生を辞めるには頭の出来が悪い私が行き着くとすれば
死以外無かった
 
 阿呆らしい
 馬鹿みたい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 腹を空かせてコンビニ飯を求めた。
 其の帰り道に私が居た
 実際は私が居たのではなく、
私の事が理解できるのでは無いかと思うヒトが居たのだ。
 
 
 「 ねえ貴方、社会不適合者? 」
 
 
 我ながら糞みたいな話しかけ方だ。
 陰キャを隠した結果が変人とか
笑えない屑野郎
 
 私なら、こんな奴に話し掛けられたら走って逃げると思う
 其れでも相手も私の雰囲気を察知したらしく、
唾を飲む音が聞こえた。
 
 
 「 そうですけど、もしかして貴方ですか? 」
 
 
 嗚呼一緒だ
 糞みたいな世界を嫌った同志
 言わずとも解る。だって私がそうだから
 
 
 「 一緒だよ。世界が此の世で1番嫌い 」
 
 
 目を伏せた
 目蓋の裏には数えられた幸せと、
数え切れない億劫が存在した。
 此の世が嫌いな癖に此の世で1番という言葉を使うのは可笑しかった?
 余りにも人と話せなくて脳迄働かない
 億劫が私を、私達を縛る以上此の世界なんて要らない
 
 
 「 折角だからさ私達友だちになろっか 」
 
 
 意味も無い提案
 其れでも少し共有してみたかった
 あの子に陰口を言う女子のように、彼女とは2人で世界の陰口を言いたい。
 
 
 「 もちろん大歓迎です 」
 
 
 彼女は笑みを魅せた。
 歯を出して笑わない程度の儚く美しい笑み
 息をするのを止められているような気分。
 
 優しく肯定して、優しく否定する世界に似ても似つかないような笑顔は
 私を酷く安心させた。
 
 
 「 でも一つだけ宜しいですか?
何かに何方かが困って生き苦しくなったら
一緒に死んであげますし、一緒に死んで欲しいのです 」
 
 
 赤信号を皆で渡れば恐くないように
 三途の川も2人で渡れば恐くないね
 
 貴方の考えと共に頭蓋骨の髄迄愛したい。
 こんな思考、もちろんイエスとしか言えないじゃないか
 脳が震えるような感覚になり、首を縦に振った
 
 
 「 私、ヒトを見る目あるんですけど
貴方は此れ以上に無いくらい愛せそうです 」
 
 
 私もだよ
 其れを言う迄もなく伝わった気がする
 
 愛して愛されて愛し合って
 
 
 「 世界を全力で嫌う代わりに貴方を愛してあげるよ 」
 
 
 全てを否定して
1人を受け入れて
 
 
 「 もう学校辞めよっかな 」
 
 
 頬を伝うモノを無視して
身を寄せ合って
 
 
 「 私も毒親の居る実家から逃げます  」
 
 此処から逃げて
美味しい酸素を探して
 
 
 「 2人で息をしやすい場所に行こうか?あるか分かんないけど 笑 」
 
 
 風を受けながら歩を進めて
小指を絡ませて
 
 
 「 はい、全部約束です 」
 
 
 そして想いを馳せた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 風は2人の少女の髪が靡かせた
 其れはまるで美しく儚く消えゆくようだった
 其の少女達は何時か
此の世界から逃げる事を夢見て
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 世 界 を 生 け る 少 女た ち
 貴 女 適 合 者
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 fin.
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コメント
5件
まって、まって、天才すぎる、ほんとに最高すぎた。言葉に表せ無さすぎる。 全ての文全ての文字全部全部綺麗すぎた。 これ以上にないくらい最高すぎた。