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今回で校内探検編は完結です
それでは本編どうぞ!
「日本,早く!」
「待って…下さい…」
息を切らしながらついて来る日本を引いて,階段を駆け下りる。
「どこ…行くんですかぁ…」
「決まってるじゃん,校長_____ 」
ドンッ
瞬間,目の前の黒い柱に俺はぶつかり,転んでしまった。
「…廊下を走るのは感心しませんね」
「…国連先生…!」
柱だと錯覚したものは,どうやら黒いスーツを身にまとった国連校長だったらしい。
「怪我はありませんか?」
安否を気遣う言葉をかけた上,如何にも自然な動作で手を差し伸べる。流石イケメン(格上)。
「はい…すみませんでした」
「いえ,無事なら良いんですよ。次からは気を付けて下さいね。」
国連先生の手を取り立ち上がると,日本が心配そうに声を掛けて来た。
「大丈夫ですか…?」
「当たり前じゃん」
「良かったです…」
じゃあ行こうか,という所で
「…御二人は此方で何を?」
国連校長。
「あ…えっと,学校を案内してました」
「そうでしたか…もしかして,次は校長室に?」
「あ,はい!」
「でしたら,見ていくと良いですよ。」
「ありがとうございます…!」
…国連校長は本当に話が早い。心を読まれてるんじゃ無いかと思う程に。
校長室は,奥へ奥へと進んだ所にある。放課後は勿論だけど,日中でも校長室の回りは静かだ。
「着きましたよ」
「…ここが?」
「ええ。ここが校長室です。」
驚くのも無理は無い。
二枚扉に黄金の取っ手,その回りには数えきれない程の賞状やトロフィーが所せましと並んでいる。多分,校長室と言うより,どっかの偉い人かお坊ちゃんでも住んでそうな部屋のイメージだろう。
「…凄いですね…」
「これでも国立ですから」
豪華な見た目とは裏腹に,扉は驚く程スッと開いた。
「どうぞ,中へ」
「…良いんですか?」
「ええ。休み時間には,遊びに来る生徒も居る位ですよ」
「そうなんですか…じゃあ,失礼します…」
ふかふかのカーペット,座り心地の良いソファ,冷暖房完備。
加えて,国連校長。
そりゃあ遊びに来る生徒も居るだろう。
「日本さん,アメリカさん,何か飲みますか?」
しかも,ドリンクサービス付き。
「あ,じゃあカフェオレ飲みたいです!」
「良いですよ。日本さんは?」
「…学校で,カフェオレが飲めるんですか…?」
「秘密ですよ。」
にこやかに微笑む国連校長と俺をかわるがわる見ながら,日本は遠慮がちに,カフェオレ,と口にした。
(そんなに緊張しなくて良いのに…)
そう思った矢先,校長室の扉が勢い良く開く音がした。
バーンッ
「国連~!お仕事お疲れ様~っ!」
「…言いたいことは色々ありますが,もう少し静かに入ってこれませんか」
EU,学長。
「無理だよ~。知ってるでしょ」
「…そうですね,聞いた私が馬鹿でした」
「まぁまぁ,元気出しなってー。それより君達は…」
「お客様ですよ。生徒達を驚かせないで下さい」
「へぇ…いらっしゃ~い,ゆっくりして行ってね~」
国連校長とEU学長のやりとりに驚きつつも,日本は感謝の言葉を述べた。
「あ,ありがとうございます…」
「どういたしまして~。えーと,君は確か…転入生の日本君,だよね?」
「あ,はい!日本です…」
「初めまして!僕はEU,なんとこの学校の学長!校長との違いはいまいちわかんないけど…宜しくね!」
まさか自分の名前を覚えているとは思わなかったらしい。…少し嬉しそうだ。
「あと,アメリカ君!」
…え?まさか全員分覚えてんの?
「EU先生,生徒にタメ口を叩きまくるのは辞めて下さい」
「えー,無理だよ~」
「…そうですね,無理でした」
EU学長は,こういう風に凄く気さくだから,生徒人気が高い。何回か教育委員会に注意されたらしいけど…。
「カフェオレ,冷めますよ」
いつの間にか目の前に出されていたカフェオレを飲んで,俺達は校長室を後にした。
「次はどこに行くんですか?」
またも長い廊下を歩いていると,日本が聞いて来た。
「次は,保健室」
大事な場所だから覚えておけよ,と言うけど,日本はどこか上の空だった。
そんなんじゃいつまでも道を覚えられないぞ。
段々窓から差す光も弱くなって,夜が近付いている。
「あれ,先生居ないじゃん」
「入れませんか?」
「いや,基本保健室はずっと開いてるから」
「…ここもそうなんですね」
「ふーん,日本が通ってた学校も…」
言い終わる前に,既に日本は保健室に入っていた。
「待てよー」
廊下は薄暗くてひんやりしていたのに,不思議と,保健室の中は暖かい気がした。
「広いし,ベットがこんなに沢山…」
日本の言う通り,薄いピンクのカーテンで仕切られたベットがずらりと並んでいる。
「人数が多いだけ,怪我人も多いからな」
「あはは…」
「…ちょっと寝るか?」
「あはは…え?」
「だから,寝るか?」
「いや,勝手に寝るの…は…」
途中で口ごもってしまった日本を横目に,俺はベッドにダイブした。
「ほら,日本も~」
「…失礼します…」
結局,好奇心に負けたのか,日本はベッドに横になった。
「すごい…ふかふかです…!」
「だろ?午後の授業サボるのにピッタリなんだよ~」
「サボるのはいいとして,本当にふかふかですね…前もそんなに悪い訳じゃ無かったけど…」
良いのか優等生。でも,日本が幸せそうにふかふかを堪能するので,まぁどうでも良いかと思ってしまった。
「アメリカさん…このまま寝たいです…」
「そんなに気持ちいいかよ…」
「保健室はあったかいです……」
暖かい,と言われて気付いたが,保健室の中はとっくに昼の温もりが消えて,夜の冷気で満たされていた。
「日本,そろそろ行かないと」
「…はい…」
今にも夢の中に行ってしまいそうな日本を起こして,俺達は最後の探険場所へと向かった。
「あれで最後!」
俺は窓ガラスの先にある,校舎と少し離れた建物を指差した。
「えっと…体育館,ですかね…?」
「ちょっと違うな」
「え…?体育館じゃないなら何ですか…?」
「それは着いてからのお楽しみ!ほら,急ぐぞー」
俺は躊躇い無く日本の手を取り,走り出した。
渡り廊下を走った。風が気持ちいい。さっきまでの夕日は,いつの間にか星に変わっていた。
「着いたぞー」
「…大きい,ですね…」
「だろ?」
何故かは知らないが,ここだけの自動ドアをくぐって俺達は中に入った。
「それで,この施設は何…」
天井まで伸びた本棚,紙の柔らかくて独特な匂い,静かで穏やかな空気。
「正解は,図書室」
「何と言うか…一つ一つの施設が大きいんですね…」
感心を通り越して飽きれともとれるような表情を浮かべる日本を引いて,少し図書室の中を案内することにした。
「ここら辺は,普通に本が沢山ある」
「物語とかってありますか?」
「さぁ?あんま図書室来ないんだよなー」
「…そうですか」
「こっちは本を読むスペース。…のはず」
「…分かりました」
「ここがカウンター。貸し出しは一回に三冊までだから気を付けろよ」
「三冊ですか…気を付けます」
「あ,あと貸し出しにはカードが要るけど…また今度作るか」
「ありがとうございます」
一通り図書室を見て回り,再び俺達は自動ドアの前に戻って来た。
「えっと,図書室はこれぐらいだと思うぜ」
そう,記憶の限りでは。しかし,日本は少し疑問に思ったのか,聞いて来た。
「…あの,自習室は無いんですか?」
「…あっ」
「悪い,忘れてた…」
「あはは…」
自習室は,図書室…と言うより,図書館の奥にあった。
「やっぱり,自習室も広いですね…」
…頭いい人ってこういう所好きなのかな。頭悪いから分からない。
ぼんやりと日本を見つめていたけど,いつの間にか謎のうめき声が聞こえていることに気付いた。
「日本,何か声しないか」
「え?声…?」
二人して耳を潜めてみると,確かにその声は聞こえた。
ウゥ…ウ………ァ…
まるで,地獄の底から這いつくばるような恐ろしいうめき声。
「あ,あ,アメリカさん,この図書室,変な噂とかありません,よね?」
「わ,わわ,分からない…あんま来ないから…」
「ど,どうしましょう…!?」
「…とりあえず,声がする方に行ってみるか?」
「え,あ,アメリカさん,本気ですか!」
誰か体調不良だったりしたら危ないし…と言うと,日本は恐る恐る着いてきた。
近付けば近付く程うめき声は大きくなり,遂にその目の前と思える場所にたどり着いた時。
そこは,一つの自習室だった。
「自習室で…誰か,苦しんでる?」
「声を掛けてみますか…?」
「そうだな…」
思い切ってドアをノックしようとした時,勢い良くドアが開いた。
バン!!!
…見事に,顔面ヒット。
「あ,あ,アメリカさん!大丈夫ですか…!?」
少しよろけただけで,大丈夫…と言おうとしたが,その言葉は遮られてしまった。…予想外の人物によって。
「日本っ!?」
「…え…あ,台湾!?」
台湾?誰だ,そいつ?
顔を上げると,日本と同じか,それより少し低い位の背をした人が立っていた。
「あの…ごめんなさい,大丈夫ですか?まさか,ドアの前に人が居るとは思わなくて…」
そいつは,謝罪の言葉を口にした後,すぐに日本の方に向き直った。
「日本!どう言う事!?なんでここに居るの…!?」
「あ…えっと,話すと長くて…」
どうやら,日本と台湾は知り合いらしい。随分仲が良さそうだ。
…て言うか!もっと聞くべき事があるだろ!
俺は,自習室から出て来た…台湾?に聞いた。
「あのさ,話してる途中悪いけど,この自習室から…うめき声,が聞こえた気がしたんだけど」
「…あっ」
台湾は,突然何かを思い出したかのように,顔を青ざめた。
「僕,パラオに勉強教えてたんだった…」
「まずは,このノートの数をどうやって求めれば良いのか考えて…」
聞いた所によると,台湾は中等部の一年,パラオは小等部の三年で,この自習室で台湾がパラオに勉強を教えていたらしい。…ただ,パラオは問題を全く理解出来なかったらしく,地獄のようなうめき声を上げていた…とのことだ。
「…それで,何か分かりやすく解説してる本があるかもと思って,ドアを開けたら…」
「俺が居たと」
「はい…本当にごめんなさい!」
「いや,全然怒ってないし!謝んなって!」
「ありがとうございます…」
台湾は良い奴で,パラオに手を焼いてる日本の知り合いらしかった。
「台湾ーっ!わかったよーっ!」
ぎゅーっ
「わ,わ!パラオ,分かったから,急に飛び付かないでよ~…!」
「えへへ,ごめん…」
急に台湾に飛び付いたのは,パラオ。凄く人懐っこくて,俺にも飛び付いてきた。身長を分けて欲しいと。
「アメリカさん,ごめんなさい,お時間を取らせてしまって…」
「いや,何もなくてよかったし」
「…ありがとうございます」
キーンコーンカーンコーン…
丁度,下校のチャイムが鳴った。このチャイムが鳴ったら,部活動生も全員帰らなければならない。
「やばっ!早く帰ろうぜ」
「はい…!えっと,荷物…」
「日本,はい!日本の鞄だよ」
「あ,台湾!ありがとう…!」
「どういたしまして。今度,ちゃんと話聞かせてね!」
「うん,パラオも,またね」
「うん,日本,べんきょう教えてくれてありがとう!」
台湾とパラオは借りていた本の返却を済ませるらしく,俺達は先に帰ることになった。
「…そう言えば,日本は台湾達と知り合いだったのか?引っ越して来たはずなのに…」
外はすっかり日が沈んで,夜の冷気と闇に包まれていた。
「…僕の祖父の家が,近くにあって…昔,祖父の家に遊びに行った時,知り合ったんです」
「へー,そうだったんだ」
連絡とか取ってなかったのか,とも聞こうとしたけど,日本は…また,暗い表情をしていたから。
寒い。昼は,あれ程暑かったのに。横を見ると,日本も寒そうにしていた。
「…寒いな」
「寒いですね…」
日本は少しでも暖を取ろうと,手をこすったり,その細くて白い指に,息を吹き掛けたりしていた。でも,やっぱり寒いみたいだった。
「日本,寒いなら手繋ごうか」
「…え?」
「…え?」
そこで,自分の失言に気付いた。
「あ,いや…あの,カナダとはよく手を繋いだりするから…」
「あ,あったかいだろ!?」
多分,俺の顔は真っ赤だった。…日本が大声で笑うから。
「…あはは…あははははっ!」
「…何だよ…」
「良いですよ,繋ぎましょう。…カナダが誰かは知りませんけど」
そうして,俺達は手を繋いだ。日本の手は雪みたいに白かったけど,確かな温もりがあった。
「…カナダは,俺の弟」
「仲が良いんですね」
「うん…かなり」
「…あははっ」
日本は,よく笑った。
もうすぐ,もうすぐ家に着く。けど,まだ,手に広がるこの温もりを離したくなかった。
「パラオ,帰るよー」
「はーい!」
「寒くない?僕のベスト貸そうか…」
「だいじょーぶだよ!パラオつおいから!」
「あはは,そうだね…日本も心配だな」
「だいじょーぶだよ,アメリカさんいっしょだもん」
「…そうだね,でも,まだ転入して間も無いだろうし…それに」
「知らない,人だから」
「…そっか?なんか,むずかしいね…」
「…うん」
「それより,早く帰ろっ!おこられちゃうよ!」
「…あ,うん!帰ろっか!」
4000文字程度のつもりが5000文字以上書いてました。
久し振りの本編でした…!今回は台湾とパラオが新登場でした。日本の幼馴染み的ポジションです。詳しくは作中で後々明らかになるので,楽しみにしてて下さい!
最後に,小説を描く作業をアイビスでしていたので,その画像です!次回からは毎回載せるようになると思います
ここまで読んで下さりありがとうございました!
コメント
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パラオが泣きながらも勉強してる姿ჱ̒⸝⸝•̀֊•́⸝⸝)カワヨイ
