コンビニで、どうしても熱いコーヒーが飲みたくなってしまって、
バニラの小さいカップアイスと一緒に買った。
外に出てすぐに、
香ばしい香りを漂わせ湯気の立つそれをズズっと1口すする。
少しコンビニに寄っただけなのに、あたりはすっかり暗闇。
ほうっと息を着くと、白い湯気となって上がった。
店の脇をすり抜けて帰ろうとした時、
🐣「ん、?」
明かりのない壁にもたれるようにしてしゃがんでいる人影を見つけた。
さっきの女の子の時もそうだが、危なそうだから逃げるという概念がない僕は、
どうしたのだろうと、静かに近寄る。
🐣「ぁっ、、」
黒いパーカーのフードを深く被っていてよく見えないが、体の大きさから男の子だと思った。
ダボッとしたズボンからは何本かチェーンがぶらさがっていて、
俗に言う、”イケてる”男の子、といった若者らしい格好をしている。
でも、こんな真っ暗闇で悪いことをしている訳ではなくて、
その子がうずくまって見ていたのは、
小さな猫だった
甘えたような声を出す子猫を、
男の子は優しく撫でて、手に持った食べ物のようなものを与えている。
その光景が温かくて、突っ立って見つめていたら、視線に気づいた彼がふとこちらを見た。
ちょっと怖くて、思わず少し後ずさる。
🐰「なに。」
その姿によく似合う、低くて男らしい声だった。
🐣「いや、、いい子だなって、 、ちょっと見てただけ、、」
子猫を見てた時とは違う、ガラッと変わった威圧的な雰囲気に声が震える。
でも僕が答えた途端、そのピリついた雰囲気がいくらか和らいだ気がした。
🐰「そっか。」
子猫を抱いて、立ち上がったその子が僕を手招きしてくれた。
反射でそっと近寄ると、
彼は猫の前足を見せてくる
🐰「怪我してんの。見える?
ここの傷。」
毛並みの綺麗な白猫だったが、その傷の部分だけ、
血で毛が張り付いてしまっていて、どす黒く痛々しい。
🐣「うん、痛そう、、」
🐰「アイス買おうと思って仕事前に来たんだけど、、こいつ見つけちゃってさ、
餌買ってやったの。」
🐣「優しいんだねぇ、、」
思わずそう言うと、照れたように口を噤んでしまった。
🐣「連れて帰るの?」
🐰「なわけ笑」
笑い飛ばされた。
🐰「むりだよ、仕事前だって言ったじゃん。
それにこいつは一人で生きてかなきゃ。頑張ってるからちょっと助けただけ。」
🐣「そっか、」
そう微笑んでから初めて、僕より背の高いその子の顔を見あげた。
フードの中に隠れている顔は、すごく綺麗。
目鼻立ちがくっきりしていて、吸い込まれそうな大きく強い瞳がこちらを見つめていた。
スーツを着ている僕はいくらか年がいって見えているだろうが、
実際はそんな離れているように見えなくて、勝手に親近感が湧く
🐣「それじゃ、これ、、あげる。」
持っていたアイスの入ったコンビニの袋を差し出した
おそるおそるといった感じで、
でも素直に受けとってくれて嬉しくなる。
渡す時にちょっとだけ触れてしまった、僕よりずっと大きな手にも、かすかに胸が跳ねた。
🐰「ありがと、、なに?」
🐣「アイス。バニラだよ。
僕コーヒーあるからいいや、
食べたかったんでしょ?」
ふっと口角が上がったその顔は、
すごく魅力的で、あからさまにドキッとしてしまい、戸惑った。
🐰「うん、嬉しいㅎ
おにーさんも優しいね、ありがとう
そのコーヒー、ホットでしょ?
冷めるから早く帰んな。」
🐣「ふふっ、
うん、分かった。じゃあおやすみなさい。」
🐰「気をつけて。」
別れてしまうのが何故か後ろ髪を引かれる思いだった。
胸がどきどきして収まらない。
こんな気持ち初めてだった。
猫を愛おしそうに抱く、僕よりずっと頼もしい男らしい腕が、
アイスをあげたら見せてくれた、嬉しそうな笑顔が、
気をつけて、と言ってくれた優しい言葉が、
頭から離れなくて、
高鳴る胸が苦しくて、
帰り道も、帰ったあとも、
寝ようと布団にくるまったあとも、
ずっとずっと、彼のことばかりで上の空だった。
コメント
12件
運命の出会い🥰 なんか2人が出会うとホッとする💕 主様の描くお互いの優しくて温かい空気感大好き♡♡ それはきっと主様が優しく温かいからですね☺
このあっさりめの出会いが、妙に引き込まれるスタートです…😳
ダーリン登場、2人ともいい男すぎる