あの子の事を考えすぎて
ほとんど眠れなかった次の日。
頭が働かないままそれなりに仕事を終え、
早く寝たくて、暗い帰り道を急ぐ。
なのに、
何を思ったか、僕は昨日、彼と出会ったコンビニに向かっていた。
この道は少し遠回りなのに。
居て欲しい、また話したい、という願いが叶ったか、
昨日と同じところに、彼が壁によりかかって座っていた。
傍らにあの仔猫を置いて優しく撫でながら、
自分は気だるそうにフードで顔を隠し、タバコを吸っている。
あまりにも不釣り合いなその光景に思わず笑いが漏れた。
🐰「お前、、また来たの。」
近づいたら、ちらとこちらを一瞬だけ見て
壁にその頭を預けて、ふーっとタバコの煙を吐いた
🐣「帰り道だもん。」
🐰「あっそ。」
やっぱ素っ気ない、と思ったが、
特に警戒されてないみたいで、横にちょこんと座ってみた。
🐰「なんだよ」
🐣「だめ?」
顔を覗き込んで聞くと、面倒くさそうにこっちを見たあと、
何も言わずにまた白い煙を吐く。
勝手にそれを、許可と受け取って、彼と同じように壁に頭をもたせかけた。
2人の間にいる子猫は、すっかりグクに懐いている。
気持ちよさそうに喉を鳴らして、撫でてと言わんばかりに腹を見せて寝そべっていた
🐣「たばこの煙、
こんな小さい子に吸わせていいの?」
🐰「知るか。
死んじゃったらその時だし。」
🐣「そんな、、会いに来てるんじゃないの?」
🐰「さぁ、、
こいつくらいしか俺の周りでまともなのいないし。ここ座ってたら来るから相手してるだけ。」
🐣「まとも、、」
🐰「お金に集って騙し合いする人間よりか、
1人でもちゃんと生きてるこいつの方が、よっぽどまとも。」
🐣「ふーん、」
気だるそうに答えながらも、僕の言葉が響いたのか、彼は煙草の煙を、子猫から離すように吐いた。
その事にすぐ気づけたのは、彼が今まで会ったことの無いタイプの人で、無意識にじっと見つめて観察していたから。
意外と話聞いてくれてるんだって胸が弾んだ。
ふと思いついて
彼の元を離れ、表に周り、コンビニに入る。
そこで昨日と同じ熱いコーヒーを2つ買い、
あの子の好みはどんなだろう、と、ミルクやなんやらを台に並べて、しばらく悩んだ。
なんとなく苦いのが好きそうだったから、最終的に、シロップもミルクも少ししか入れずに、余った分は僕の方に突っ込む。
一口飲んで見たが、僕の分は、
いつもよりずっと甘ったるくなってしまって、うっ、と顔をしかめた。
もたもたしていたから居なくなってるかも、と心配ながら、さっきのとこに戻ると、
変わらない姿勢で猫の相手をしていてほっと息を着く。
湯気の立つコーヒーを両手に、前に立つと、
彼はちょっと驚いた顔を浮かべた。
🐣「はい、
タバコよりこっちの方がいいでしょ?」
🐰「俺の分?」
もちろん、と頷く。
🐰「そんな、昨日もアイス、、いいの?」
🐣「うん、帰っても独りだし、
時間あるなら一緒に飲んでよ。」
半分押し付けるように渡すと、思いのほか素直に受け取ってくれる。
🐣「熱いから気をつけて。」
🐰「ありがと。
急に離れてったから、帰ったかと思った。」
確かになんか言ってから行けばよかったな、と反省しながら、
彼がコーヒーをを口に含むのをじっと見つめた
🐰「うっ、、苦くない?これ、、」
本当に苦そうに少し舌を出して顔をしかめる。
🐣「ごめんㅎㅎ
砂糖とかあんま入れなかった、、
こっちは??」
一口しか飲んでなかった自分の分と交換して、飲ませてみると、
彼は一瞬眉を寄せ、声を上げて笑い出した
🐰「これは甘すぎㅎㅎ
ちょうどいいって知らねえのかよㅎㅎ」
🐣「だってぇ、、
分かんなかったんだもんㅎㅎ」
楽しそうに笑ってくれているのに安心して、
また隣に腰掛けた。
それも、今度はさっきより近づいてみる。
嫌がられるかな、と思ったけど、彼は何も言わなかった。
🐣「どっちの方がいい?」
🐰「こっち。」
🐣「お、僕には甘すぎるから貰ってくれてよかった。
うっ、にがぁ、、」
話しながら口に入れたら、久しぶりのブラックコーヒーの苦さに声が漏れた
🐰「お前さ、、せっかく自分で買ったんだからどっちか飲めるのにしてこいよ、、」
呆れた声を出しながらも、
ちゃんとその、甘すぎるコーヒーを飲んでくれてるから、
やっぱ見かけによらない優しい子なんだなって嬉しくなった。
特に話すわけでもなく、
コーヒーをすすりながら、
目の前の道路を通り過ぎる車たちをぼーっと眺めた
あたりは既に真っ暗で、厚手のアウターを纏ってても少し肌寒い。
でも、彼の横にいるとなぜかほっとしたし、
身体にじんわり染みる、コーヒーの温かさもあって、
僕はいつの間にか、うとうとまどろんでしまっていた
🐰「おい、」
優しく身体を揺すられて、はっと気づく。
🐣「ぁ、、ごめん、、」
いつの間にか僕らの間にいたはずの子猫は居なくなっていた。
🐰「そんな眠いの?」
🐣「昨日あんま寝てなくて、、」
🐰「そんなこと言ったって、こんなとこで寝たら風邪ひくだろ、
早く帰んなよ」
🐣「うん、でも、、まだここに居る?」
🐰「いや、お前結構な時間寝てたんだけどさ、
俺が行く時間になったから起こした。」
珈琲もこぼしかけてたし、と言われてようやく気づくと、
自分で握っていたはずのカップが彼の手元に。
🐣「そ、そんな寝てた?」
🐰「疲れてんだろ、帰んな。」
🐣「勝手に来たくせに隣で寝るなんて、、
ごめん、、」
🐰「別に。うるさいよりよっぽどいいし。
それにタダでコーヒー飲めたㅎ」
はい、と、
とっくにぬるくなってしまったそれを渡してくれる。
🐰「俺もう行くよ、仕事だからさ。」
そう言って彼は、フードを下ろして立ち上がる。
昨日も仕事だと言っていた。
平凡な人ならば、こんな夜から働かない。
🐣「仕事、なにしてるの、、?」
暗い所で逆光だからか、顔があまり見えない。
でもその表情が、少し曇った気がした。
🐰「あんたみたいな、真面目で優しい人には関係ない世界だよ。」
遠回しに聞くな、と言われたのだと思ったから、そっか、とだけ答える。
そのまま去って行きそうになる後ろ姿を名残惜しく見つめたが、
彼がふと振り返った。
🐰「名前は?」
🐣「ジミン、!君は?」
彼から聞いてくれると思っていなくて、慌てて上擦った声で答える。
🐰「ジミンね、俺はグク。」
それだけ行って去っていく。
🐣「グクっ!!また会える?」
そんなことを聞いてしまうくらい、寂しくて胸がぎゅっとなった。
寝たりしないでもっと話せばよかったって後悔が募る。
まだまだ聞いてみたいことが沢山あった。
僕の声に、また立ち止まってくれて、彼がちらと振り返った。
🐰「俺、他人に借りは作らない人だからさ。
今度会ったら、甘さがちょうどいいコーヒー奢ってやるよ。」
そう笑いながら言って、ふらっと手を振ってくれた。
🐣「うん、またねっ!!」
次もある、と嬉しくてたまらなくて
僕もその後ろ姿に少しだけ手を振る。
自分とは真反対な彼の性格に、
すっかり惹かれているのだと、
今更ながら自覚したのだった。
コメント
10件
やさぐれた悪い🐰かっこいいー!! 優しい🐰も良いけど、こういう🐰もたまらないです😍!! 気長に楽しみにお待ちしています✨
ジミンちゃん最高に可愛いけどあんまりグイグイいくと拒絶されちゃうかもしれないからゆっくりね、辛い思いしてる推しはエロいけど
この距離感、テンポ、明かされ加減じゃ… 宣言していただいた通り、早くもまんまとずぶ…ってきております😂笑 とはいえ、是非この作品に合った、Reo.さんの書きやすいペースで( ¨̮ )❥❥ ずぶりながらも(怪しい🤣)、ゆっくり更新お待ちしていますね☺️