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どうも、wakaです。今回はかなり長いです‼申し訳ありません‼ああ、ドキュメント介さないでコピペできたらどれほど良かったか…Word派ですけどね。
サ「見ろぃ‼この有様を‼」
そう言って私達の目の前にある磨き込まれた天板に、四角い石版が何個か投げ出された。それは砥石らしいが、もうすり減りすぎて使えそうに無い。しかもそれが何個も。どれだけギガスシダーの枝が硬かったのかよく分かる。目の前で怒っている人は細工師サードレさん。北の第七区にサードレ金細工店を構える、冒険心に溢れたバリバリアウトドア派の名師だ。
サ「この黒煉岩の砥石は3年使えるはずだが、たった1年で6つも全損しちまったわい‼」
サードレさんの怒りにキリトは申し訳無さそうに謝る。それでも、キリトの目はかなり泳いでいた。
キ「は、はぁ…ほんと、すんません…」
ハロー‼マイネームイズミオ‼今、昨日花壇で話していたキリトの新しい剣を取りに来てるよ‼ここは、サードレさんが営む『サードレ金細工店』。周りを見回すと、様々な金属製の装飾品や実用品、防具などが陳列されている。そして中でも存在感があるのが数々の刀剣で、どれも青薔薇の剣などの神器には届かないものの、見た目だけでかなり優先度が高いということが分かる。その事に疑問を持ったキリトは、サードレさんに「どうして刀剣が?」と聞くと、キリトをじろりと睨み、「ワシは本当は鍛冶師になって、剣を作りたかったんじゃい」と言っていた。
さらに、鍛冶師と細工師の違いは道具の違いでしか無いらしい。それでも、細工師が作る剣と鍛冶師が作る剣は、素材が同じでも鍛冶師が作った剣の方が優先度が高いらしい。だから、そっちの方が強いってことになる。
キ「そ、それで、剣は…できたんですか?」
ふと、キリトが恐る恐る聞いた。すると、サードレさんは口を噤み、身を屈めてカウンターの下から細長い布包みを両手で取り出し、ガタッとカウンターの上に置いたが、一向に手を離そうとしない。そのままサードレさんは言った。
サ「若いの。まだ、研ぎ代の話をしとらんかったな」
キ「ウッ」
潰れた蛙のような声を出し、言葉に詰まるキリト。その横で、ユージオがキリトの背中をさすりながら声を掛ける。
ユ「…大丈夫だよ、キリト。念の為、僕もお金全部持ってきたから」
ミ「私も全財産持ってきたから…それで足りるかどうかは分からないけど」
私もキリトに小声で言う。タダにしてくれますよーに‼と、サードレさんを見つめると、それが通じたかのようにたっぷりと間を取ってから口を開いた。
サ「…‥‥……タダにしといてやらんでもない」
そのサードレさんの言葉に、私達は盛大に安堵のため息をつこうとしたが、「ただし」とサードレさんが続けた。体がビクリと固まる。
サ「ただし、若いの。お前さんが、この化け物を振れるなら、じゃ。素材の段階でとんでもなく重かったこいつを、北の果てからセントリアまで運んできたんじゃから見込みはあろうが…しかし、言っておくぞ。こいつ、剣として完成した途端、また一際重くなりよった。鍛冶師や細工師は、テラリア神の加護でどんなに上等な剣でも、運ぶことだけは出来るはずなんじゃが…儂とても1メル持ち上げるのが精一杯じゃ」
少しばかり険の取れた表情をして、細長い布包みに視線を落とすサードレさんにつられて、私もその布包みを見た。横では、キリトがやや困惑している顔で「化け物…ですか」と言っている。
しかし、覚悟を決めたような表情のキリトは大きく息を吸い、ゆっくり吐くと、左手を布包みへと伸ばした。布ごと掴み、カウンターに立たせる。すると、緩く巻いてあっただけの布がずり落ち、柄があらわになった。やはり、小説やアニメで見るのとはまた違ったオーラ…というか凄みがある。思わず私は思っていたことを口に出した。
ミ「青薔薇の剣と同じくらい強いんじゃない…?」
ユ「…これが、ギガスシダーの枝、なのか…?」
ユージオも呆然としている。それでもキリトは布を全て外し、右手で柄を握った。
そして、じゃりん‼と剣を引き抜いた。露わになった剣は透明感のある漆黒。木の枝(ただの木じゃないけど)とは思えない光沢と質感、でも金属とは言い難い不思議な外見だった。思わずこの場にいるキリト以外の者がそれぞれの反応をする。
サ「む…」
サードレさんは低く唸り、
ユ「わぁ…‼」
ユージオは密かに声を漏らし、
ミ「凄い…!」
私はその言葉しか出せなかった。
そして、誰もそれ以上声を発することが出来ず、沈黙が店を満たす。
ようやくサードレさんは口を開き、キリトに尋ねた。
サ「…そいつを振れるかね」
キリトは答えようとはせず、あたりを見回し、基本の片手縦斬りの構えを取った。あ、やばい、店のものが壊れる‼そう直感…というか知識だけど、思い出した私は慌てて言う。
ミ「キ、キリト‼待って‼多分その剣を振ったら、お店の物が壊れちゃうから‼」
キ「あ、そうだな」
剣をカウンターに置いて周りにある武具をどかそうとしたキリトを制し、私が周りの武具を被害にあわないと思われる範囲までどかす。キリトと私は視線を合わせて頷きあうと、キリトは鋭く剣を縦方向へと斬った。
キ「シッ…‼」
コンマ1秒遅れてキリトの剣を中心に、ただ斬っただけとは思えないほどの風が私の髪を巻き上げる。…スカートも。まぁ、そんなに短い丈では無いから別に大丈夫だけどね‼
キリトが体を起こすと、私とユージオは笑顔で大きな拍手を送り、サードレさんは激しく鼻息を噴出させた。
サ「フンッ、学院のひよっこ練士が、そいつを振りよったか」
キ「いい剣です」
キリトが微笑みながらそう言うと、サードレさんはここに来て初めてニヤリと笑った。
サ「当たり前じゃい。黒煉岩6コじゃぞ。…だが、まぁ、約束だ。研ぎ代はいらん、出世したら剣は細工師サードレの作と広めてくれればそれでいいわい。そいつはたった今からお前さんのモンだ」
キ「……本当に、ありがとうございました」
3人で頭を下げ、キリトが剣をもう左腰に吊ってあった鞘に収めると、サードレさんはもう一度笑った。
サ「銘はお前さんが考えるんじゃぞ。ウチの店の看板でもあるんだから、妙な名前つけんでくれよ」
キ「ウッ…」
また言葉に詰まるキリトは数秒後に、言葉を絞り出した。
キ「…か、考えておきます。それじゃ、天命が減ったらまた研ぎをお願いしに来ますんで…」
サ「うむ。言っとくが、その時はタダにはせんからな‼」
キ「も、もちろんです」
もう一度、私達は深く頭を下げて、店から出た。
学院に帰る途中、キリトが私に顔を寄せて言った。え、イケボォ…。
キ「さっき、サードレ細工店で武具とかをどかしたのって、『原作』で読んだからか?」
ミ「うん、そうだよ。そこでユージオ先生がキリトにお説教する所好きなんだけど、流石に頑張って作った物が壊れるのって、結構悲しいからさ」
キ「そっか」
ユ「キリト、ミオ?戻ろう、学院に」
ユージオの声に、私とキリトは「待った」と立ち止まった。そして演技じみた口調で言う。
ミ「この匂いは…‼蜂蜜パイ‼」
キ「丁度お腹も空いてきたところだ…‼ああ、早く食べないと死んでしまうかもしれない…‼」
私達の演技に数秒固まった後、ユージオはジトリとした目をして、私達の言いたいことを言い当てた。
ユ「…で、2人はどうしても蜂蜜パイが食べたいんだね」
「「ご名答‼」」
声を揃えて言うと、いわゆるツッコミ役であるユージオはやれやれと呆れ顔をしてから、
ユ「ほら、早く行こう。売り切れちゃうよ?」
その言葉に私達はパァァァと満面の笑みを浮かべた。
ミ「早く‼走るよ‼」
ユ「あ、待ってよミオ‼」
キ「よし‼競走だ‼」
そして走り出した時、後ろからユージオの声が聞こえた。
ユ「〜ッもう‼2人とも置いてかないでよ‼」
私達はピタリと足を止め、振り返った。
キ「誰が置いていくんだよ、ユージオ」
ミ「そうそう、行こうユージオ‼」
ユ「…うん‼」
私達は、跳ね鹿亭へと走り出した。
そして、焼き立てのパイを3つ買い、学院に戻った私達。キリトは剣の申請をしに行き、残された私とユージオは学院内の修剣士寮に来ていた。あ、そういえば、結構ユージオと一緒にいるの慣れてきた気がする…‼慣れって怖いね‼
ミ「やっぱりおいしかった〜、流石蜂蜜パイだね‼しかも焼き立てで…今日は運が良い‼」
ユ「そうだね。キリトは剣の持ち込み許可を申請しに行ってるから…、食堂ででもキリトを待つかい?」
ミ「良いね。多分、今はまだ空いてる頃だと思うし、キリトと合流したら早めにご飯を食べても良いかも」
そうユージオが提案し私もそれに乗ると、私達は食堂へと向かった。
食堂のドアを開けると、私の予想通りまだ席に余裕があった。幸い、(見回す限り)ライオスとウンベールもいない。適当に空いている席にユージオと座り、キリトが来るまで談笑をする。
ユ「そういえば、熱素生成は上手くなったの?」
ミ「うっ……全く上達しておりません……」
ユ「そうだなぁ…頭の中に火を思い描いてみるのが良いって本に書いてあったけど…ミオはいつも何を想像しているんだい?」
ユージオの問いに、私は素直に答える。
ミ「えっと、ずっと汎用漢字の熱素を思い描いてた」
ユ「文字じゃあ駄目だよ。だから出来なかったんじゃないのかい?」
ミ「そうかもしれません…」
肩を縮こまらせる私に柔らかく微笑んでから、ユージオは「そろそろ…」と続けた。ユージオ様‼その笑みは眩しすぎます…‼
ユ「キリトが戻ってくる頃かな。僕が青薔薇の剣を申請しに行った時は、数分で終わったから」
ミ「あ、そっか。私も申請したなぁ…。アズリカ先生にちょっと引かれたけど」
いやぁ、闇の国の剣ですからね、そりゃあ驚くのも無理はないよね。納得納得。大丈夫だよ‼いつかサードレさんのお店の剣に買い換えるから‼多分。
そうして食堂でキリトを待っていたのだが。
いつまで経ってもキリトは来ず、来たのは「キリトが上級修剣士主席と試合をするかもしれない」という情報だった。
ユ「はぁ…、あいつ何やらかしたんだよ‼」
ミ「もう慣れちゃったよこの呼び出し。でもここで素は出し尽くした…はず」
いつもよりも攻撃的なユージオのイケボを横に、私達は学院の廊下で出せる最高速度でリーナ先輩の元へ向かっていた。念の為に知らせておいた方が何かと安心だと思ったからね‼だから今は、上級修剣士寮にいる。リーナ先輩の部屋は確か…一番奥の部屋だったはず。
そして見つけた、リーナ先輩の自室の扉をコンコンと2回ノックすると、リーナ先輩は驚愕した様子で自室から出てきた。
リ「キリトの友人の…ユージオとミオか。どうした」
ユ「急に押しかけてすみません、セルルト先輩。実は…キリトが主席のウォロ・リーバンテイン殿と試合を…」
リ「何⁉」
ユージオの言葉にリーナ先輩はこれまで以上に驚き、紫色のスカートを翻しながらすぐさま廊下へと飛び出した。
ミ「場所は大修練場です!」
リ「キリト…何をやったのだ」
心配げにユージオと同じことを呟くリーナ先輩と一緒に、私達は速歩きで大修練場へ向かった。
大修練場に着き、目に飛び込んできたのは、修練場の中心でこの学院内最強の主席「ウォロ・リーバンテイン」と正面から向き合っている黒髪の初等練士だった。
ミ「oh…キリト…」
思わず呟いてしまうが、私とユージオ、そしてリーナ先輩はキリトの元へ駆けていく。
キ「リーナ先輩…ユージオにミオまで」
リーナ先輩は、背筋を伸ばしてウォロに言った。ひょあ…‼リーナ先輩超かっこいい。
リ「リーバンテイン殿。これはどういう事だ」
問と共にリーナ先輩はウォロを睨むが、それをウォロは軽く受け流し、平然と答えた。
ウォ「見ての通りだ、セルルト殿。そなたの傍付きにちょっとした逸礼行為があってね。安息日に大仰な懲罰を科すのもどうかと思ったので…立ち合い1本で済ませるつもりだ」
そう言うと、ウォロはリーナ先輩から私達へと視線を移し、目が合った。うぉマジかぁ…。あ、ノアさんの甥っ子か。って事は…私、ウォロの従兄弟になるのか…⁉
ウォ「そなた…名は」
ミ「は!ミオ・マルウィスと申します!」
私の張り上げた声に、ウォロは珍しく目を見開いた。隣では、ユージオとリーナ先輩、キリトが私とウォロの顔を驚きながら見比べているし、周りの見物している生徒達も「え?」という顔をしている。
ウォ「そうか、ノア殿の…娘か」
ミ「正確には養子でありますが…はい、その通りです」
私のその言葉にウォロは納得したように頷いた。これ以上話すつもりはないらしく、キリトに視線を向ける。
キ「……随分早かったな」
ユ「食堂にいたら、ゾバン先輩の傍付きが駆け込んできてさ。主席がお前と試合するかもって言うから、まさかと思ったけど一応セルルト先輩にも知らせて駆けつけたんだけど…まさかじゃなかったみたいだね」
キ「ああ、まぁ・・・そうみたい」
ユージオは大きく息を吸い、吐き出そうとしたが数秒固まり、その息の大半をため息に変えて言った。
ユ「……いや、キリトが今日まで一応は何も問題を起こさなかったのが奇跡なんだ。1年ためてきた厄介ごとの素を、これで全部使い切ってくれよ」
キ「さすが、長い付き合いだけのことはあるな、相棒」
キリトが思わずニヤリと笑うと、ユージオの背中を軽く叩いた。そしてリーナ先輩とウォロの傍まで移動したキリトは、リーナ先輩に頷きかけた。
キ「ご心配おかけしてすみません、先輩。でも、俺なら大丈夫です。むしろ……主席殿と手合わせできるのは幸運なことと思っていますから。ミオも、俺は大丈夫だ」
ミ「知ってるよ、がんばって」
二人で視線を合わせて私はキリトとリーナ先輩から離れた。そして、リーナ先輩はキリトに尋ねた。
リ「キリト。…立ち合いの決めはどうなっている」
そのリーナ先輩の問いに、戸惑いながらもキリトは答えた。
キ「え・・・・・・実剣使用ですから、寸止めなのではと…」
ウォ「ああ、言い忘れていたな」
ウォロが言葉を挟む。
ウォ「私は、寸止めの立ち合いはしないのだ。太刀筋を鈍らせるだけだからな。院則で寸止めと決まっている検定戦は仕方ないが、個人的な試合は全て一本先取を決めにしている」
キ「えっ、じゃ、じゃあ・・・」
ウォロの言葉にあたふたするキリトを挑発するようにウォロは少しだけ笑った。
ウォ「もっとも、一本先取試合は双方の合意がなくては行えない。禁忌目録にそう定められているからな。これは勿論修剣士懲罰権より優先される。ゆえに、お前が拒むなら、寸止めもやむなしだが…選択は任せよう、キリト練士」
ミ「寸止め寸止め寸止め寸止め寸止め寸止め…」
私はそうキリトの後ろで唱え、ユージオも目を強く瞑って念じている。もう声が聞こえるよ・・・!「寸止めにしておくんだ・・・!」って。
でも、キリトは言った。
キ「・・・方法はお任せします、リーバンテイン殿。俺は懲罰を受ける身ですから」
原作読んでるから分かっては居たけど、その言葉を聞いた時、ユージオと一緒に「…はぁ・・・・・・」と長い溜息を付いてしまったのだった。
リーナ先輩に言われて、私とユージオは大修練場の見物席に座っていた。私の右隣にはアーリン先輩、左隣にはユージオ、さらにユージオの左隣にはロッソ先輩だ。え、超緊張する…色んな意味で。
ユ「キリト…寸止めにしておけば良かったんだ…‼」
ミ「まぁ、しょうがないよ。キリトは無理・無茶・無謀・無軌道っていうのは知ってるでしょ?大丈夫だって。キリトは私達のもうひとりの師匠なんだから」
ユ「・・・そうだね」
ユージオとの会話を終えると、アーリン先輩が私の肩を叩いてきた。私は首を右にひねる。アーリン先輩の端正な顔立ちを見ると、その黄金の瞳がいつもよりも輝いているように見えた。
ミ「えっと・・・先輩・・・?」
ア「僕があのキリトっていう練士になりたかった。リーバンテイン殿と戦えるなんて」
ミ「ア、アハハ・・・」
コメントできない…。だって先輩の眼、凄くギラギラしてるから…‼いやこれ怖い超えて恐ろしい。
私が先輩に引いていると、中心にいるキリトが私達の方を向き、ニヤリと笑いかけてきた。
ミ「心配、無いみたいだね」
ユ「…うん」
それだけ交わして、ユージオはキリトに向かって右拳を突き出し、私は左手の親指を立てた。
リーナ先輩がキリトから一歩離れ、キリトが試合場の境界線ギリギリまで進む。
ウォロが左腰から、キリトが背中からそれぞれの剣を抜いた。ウォロの磨き込まれた長剣(というよりもバスターソードに近い?)を見た途端、周りの観客から「おぉ〜」と感嘆の声が上がったが、キリトの黒い剣を見ると感嘆よりも戸惑いの声が多く上がる。しかし、アーリン先輩は目を見開いて言った。
ア「あの剣、強い」
ミ「分かるんですか?」
ア「何となく分かる。多分、神器級だと思う」
そんな興奮気味の先輩の後ろで、粘着質な声が私の耳に飛び込んできた。
ウ「おやおや、辺境では剣に墨を塗る風習でもあるんですかなぁライオス殿‼」
ラ「そう言ってやるな、ウンベール。傍付き殿は忙しくて剣を磨くひまも無いのだろうさ」
ミ「…あ゛?」
また食堂の時みたいにライオス達を睨み、立ち上がろうとしたが、その前にユージオに止められた。
ユ「いちいちあいつらの嫌味に反応してたらキリが無いよ」
その言葉で私は一度動きを止め、浮かせかけた腰を下ろそうとした時だった。
ア「あの剣の凄さが分からない人、貴族にいたんだ」
そうボソリと言ったのは、二等貴族出身のアーリン先輩。流石は北帝国で名を馳せているブレイド家の言葉だからなのか、周囲でライオス達の会話に失笑していた貴族出身の生徒達は、一瞬で押し黙った。ライオスやウンベールも。それでも、爆弾発言をした当の本人は、平然とキリトとウォロを食い入るように見つめている。
ミ「先輩…」
ア「あの人達は気にしなくていい。自尊心の塊みたいな人だから」
さらにライオス達を煽るような事を言うが、ライオス達は言い返してこない。ただ、顔を俯かせ顔を真っ赤にして震えている。ここで「ざまぁみろ」と内心笑ってしまった人は私です。でも当然だよね!あ〜スッキリしたわ‼
席に座り直し試合場を見ると、ウォロが剣をゆっくり動かし、技を発動する前だった。自然と声が静まる。10メートル以上離れていてもこんなに圧力を感じるんだから、キリトはこれ以上の圧力を感じているはずだ。そう考えると、思わず身震いをしてしまう。うぅ、怖っ‼
刹那。
キリトが『バーチカル・スクエア』の構えを取り、
ウォ「……カァァッ‼」
鋭い叫び声と共に、ウォロが動いた。私は片手剣以外のソードスキルに詳しくないから何の技かは知らないけど、多分ソードアート・オンラインの中の剣技だということは分かる。
まずキリトの初撃、飛び込み気味の前斬り。
二撃目、ウォロの剣を真下から斬り上げる。
キ「ぜあっ‼」
キリトの叫び声が私の耳にも聞こえた。ここでもうウォロと渡り合えるほどの実力を持っているキリトが凄すぎる…‼で、同じくらいの実力をユージオも持っている、と。天は二物を与えずって嘘じゃん‼才色兼備じゃん‼この世は残酷だ…‼私がこの世の残酷さに嘆いていても、2人の試合は終わらない。
三撃目、上から下への垂直斬りでウォロの剣を弾く。
キ「う…おぉぉ‼」
ウォ「ぬぅ…ん‼」
おそらくキリトの予想通り、ウォロとキリトは鍔迫り合いの体勢になった。2人の表情は激しく歪んでおり、お互いの剣に全力を込めている事がよく分かる。
ミ「キリト…‼」
私は思わず両手を握りしめ、キリトの名を呟いていた。隣のユージオも切羽詰まった顔でキリトとウォロを見ている。無限の時間にも等しいたった数秒の均衡状態で、ウォロの剣がオレンジ色の光を纏った。その途端、ウォロの後ろにウォロと似た顔立ちの男たちが数人以上現れた。
実際に肉眼で見たのは初めてだよ…、この世界の心意…‼あ、ここラノベの世界なんだった。当然だわ。
じりじりと後ろに押されていくキリト。しかし、そのキリトの剣の中心に黄金の輝点が生まれた。その光は徐々に剣全体を包み込み、さらには刀身をも巨大化させていった。普通は起こらない現象に、ロッソ先輩もユージオも、アーリン先輩も、周りの生徒・教官も、驚きの声を漏らす。そんなのお構いなしに、キリトが叫んだ。
キ「お…おおぉぉぉぉぉ‼‼」
世界を統べる竜のような咆哮が私の鼓膜を揺らす。
そして、右足を前に一歩踏み込んだ時、爆弾が爆発したかのようにウォロとキリトは後方へふっ飛ばされた。
ユ「キリトッ!」
隣でユージオが叫ぶ。しかし、煙の中のキリトは試合場の境界線ギリギリで踏みとどまった。それはウォロも同じで。
キ「せいあぁぁっ‼」
ウォロの技が終わったのを確認したキリトは、最後の四撃目をウォロにお見舞いすべく地面を蹴ったが、後少しで斬れる…という所でウォロが攻撃を躱し、2人の顔が至近距離でお互いを睨み合う。
アズ「そこまで‼」
その場を凛とした鋭い声が切り裂いた。
ユージオが戸惑った声で言う。
ユ「ア、アズリカ先生…⁉」
ア「知らないの。7年前の四帝国統一大会のノーランガルス北帝国第一代表剣士」
ミ「じゃあ、かなり強いってこと…?」
ゴ「そうだな、さらにこの学院の卒業生でもあるからな」
2人の先輩剣士はうんうんと頷いている。…怒らせないようにしておこう。
下でも私が今聞いたことと同じことをウォロから訊いたらしい、キリトが今までで一番驚いた表情でアズリカ先生を見ていた。無理もないよそれは。
そして、原作通りにリーナ先輩の部屋で飲み、騒いだのであった。
え、何があったのかって?…ご想像におまかせし・・・いや嘘ですショートストーリーで出します‼
ミオ・マルウィス(18歳)
やっぱり主人公かっこいい!と半狂乱した人。アーリン先輩…!スッキリしましたありがとうございます‼次回、ライオスとウンベールと対決…する?お酒バカ強い(まだ成人してないから飲んだこと無いけどね‼)。全く酔わない。
キリト(18歳)
学院の主席と引き分けた人。試合が終わった後、ミオに「早めに花壇に来て」と言われて頭上にはてなマークを浮かべながらも花壇へと向かう。お酒は弱くも強くもない。
ユージオ(18歳)
精神ゴリゴリ削られた人。やっぱり友人想いで最強。多分お酒は弱い。お酒よりもゴルゴロッソ達のウンチクに集中していた。
読んでくださってありがとうございました‼