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若井side
「なぁ、若井」
「ん?」
「アルバムさ、ちょっと整理してるんだ」
リハ帰り、いつもの帰り道。
信号待ちのタイミングで、ふと元貴がそんなことを口にした。
「また?前に完成したって言ってなかったっけ」
「うん、でも……なんか今見返すとさ、もっと足したい写真があって」
「また過去掘り返してんの?」
「違うよ、これからの分も、って意味」
その言い方が、妙に引っかかった。
未来の写真。つまり、この世界ではまだ起きていない“これから”のこと。
「さ、もうすぐでしょ。7月8日。ミセス5周年」
「……うん」
(その日が、空白になってしまう未来があるんだ)
俺は知っている。
言葉を飲み込んでしまった元貴の顔も、
“撮れなかった1枚”を何度も見返す元貴の手も。
「……今年も、ちゃんと写真、撮れたらいいなぁ」
そう呟くように元貴が言った。
「でも、みんな言いにくい雰囲気だったら……やっぱ無理かな〜」
「……言えばいいじゃん」
「え?」
「元貴が言えば、誰も断らないと思うけど」
その言葉に、元貴は少しだけ目を丸くした。
「……そうかな」
「そうだよ」
本当は、俺が言いたいんだ。
「最後に写真、撮ろう」って。
でも、まだ勇気が出ない。俺は今、過去の中にいて、何かを変えることが怖くて仕方なかった。
「なんか……今日の若井、ちょっと変だな」
「そうか?」
「うん、なんか、前より優しいっていうか。思ったこと、ちゃんと口にしてる気がする」
「気のせいだよ」
「……そっか」
元貴は、ちょっとだけ笑った。その笑顔が、どこか心細くて、やっぱり俺の胸を締めつけた。
⸻
夜、アルバムの画像フォルダをそっと開く。
まだ7月8日は来ていない。写真も、空白も、存在しない。
でも、俺の中にはその“空白の記憶”が、確かにあった。
「今度はちゃんと、俺から言えるようになりたい」
そう、思った。
⸻
📸 to be continued…
(話の並びなどを変にいじったり飛ばしたりしてしまったため、2話、3話がなく、4話から続いていますが、内容に飛びはないので安心してご覧下さい)
コメント
1件
おぉっと????大体のことがわかってきた気がすることもある…🤔 若井さん口に出しちゃえ!後悔しちゃうヨォ…