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とある小さな町に幸せな生活をする6兄弟がいた…
親は早くに死んで悲しみに暮れながらも皆で支え合い必死に生きてきた
そんな中この家族に新たなる不幸が迫りくる…
この物語は病気を抱え余命数ヶ月と診断された一人の少年とその家族のお話です
それでは、どうぞ
第一章 予兆
ジェルの生活は、どこまでも明るく、活気に満ちていた。
朝、日が昇ると同時に起き、家の中に元気な声が響かせる。
朝が得意な彼は、誰よりも早く起きて、みんなを起こす役目をしていた。
「おはよう!寝坊すんぞ!早く起きろー」と、朝の挨拶代わりにみんなを起こす声が、家全体に元気を与えていた。
朝食の時間になると、毎回、おなかを空かせておかわりをするのが常だった。
「ねぇ、俺の分も残しててよ!」
「絶対に!」
笑いながら、おかずを取る手も急ぎ足になり、その楽しげな姿が俺たちの心を温かくさせた。
朝食後は、みんなで軽く掃除をし、その後、俺たちと一緒に出かける準備をするのが日常的な流れだった。
学校でも、ジェルは一際目立つ存在だった。
クラスではリーダー的な役割を果たし、友達と楽しそうに話しながらも、周囲の人々を笑わせることを何よりも楽しんでいた。
「今日も元気そうだな、ジェル!」とクラスメートが声をかけると、いつも明るく応えていた。
「当たり前だよ!元気が一番!」と、いつものようにニコッと笑って答えるその笑顔は、周りの誰もが安心できるものだった。
放課後は、仲の良い友達とサッカーやバスケットボールをして遊ぶのが日課だったらしい。
スポーツが得意で、いつも周りを引っ張っていく存在だった。
「ジェル、今のプレーすごかったな!」と仲間が言うと、自信満々に「だろ?やっぱり俺の得意分野だよ!」と誇らしげに笑った。
彼の活発な日常は、何一つ不安の兆しを見せなかった。
帰宅後も、彼は自分の時間を大切にしながらも、家族との時間を楽しんだ。
「今日も疲れたけど、やっぱり家が一番落ち着くな。」と、リビングでみんなと話しながらリラックスするのが、毎晩のルーティーンだった。
他の兄弟たちが宿題をしている間も、どこかしらで冗談を言っては笑わせ、家全体に活気をもたらしていた。
その日々の中で、ジェルは自分の体調に不安を感じることは一切なかった。
毎日が笑顔であふれ、家族の中でも一番元気で明るい存在だった。
家に帰れば、家族全員が彼の元気に支えられ、笑顔が絶えなかった。
そんな幸せな日常の中、次第に小さな変化がジェルの中で現れ始めた。
最初は些細なことだった。
例えば、学校から帰ってきた後、少しだけベッドで横になることが増えたこと。
「ちょっとだけ寝かせて」と言って横になるのを見て、家族はいつものことだと思っていた。しかし、日に日にその横になる時間が長くなり、朝の元気も少しずつ鈍くなってきた。
ある日、学校から帰った後、いつものようにリビングでくつろいでいると、ふと深くジェルがため息をついた。
「どうしの?体調悪い?」となーくんが心配そうに声をかけると、少しの間黙った後、答えた。
「ちょっと疲れてるみたい…。でも大丈夫だよ、すぐに元気になるから。」
その言葉に、なーくんは「無理してない?」と心配したが、笑顔で「だいじょうぶ」と答えた。
その晩、ジェルはお風呂の中で何度も頭をかきながら、どこかしらの違和感を感じた。
体のどこかが疲れやすくなっているような、ひどく重く感じる瞬間が増えた。
でも、そんなことを誰かに言うわけにはいかないと思い、その違和感を心の中で抱え込んでいた。
体調に変化が現れ始めた彼にとって、日常の些細な出来事が大きな違和感として感じられた。
例えば、好きだったご飯が少しずつ食べられなくなったり、寝つきが悪くなったりしたこと。
「今日も元気じゃないな」と自分でも感じ始めていたようだったが、それでも彼はそれを打破しようと、無理にでも元気でいようと努力していた。
周りに心配をかけたくない、みんなが笑顔でいられるようにしようと、自分を過信し続けていた。
ジェルの生活は、最初は些細な違和感から始まり、そのうち大きな問題へと発展していった。
体調が少し悪くても、それを隠し続け、普段の明るい姿を見せ続けることが自分自身の役目だと思い込んでいた。
それは、家族に「大丈夫だよ」と言い続ける彼の優しさからくるものであり、家族を心配させたくないという思いから来ていた。
ジェルの体調の悪化は、まるで静かに忍び寄るように始まった。
それまで元気で明るく、家の中でも一番元気だった彼が、次第に元気を失っていくことが、家族にも不安を感じさせ始めた。
最初は微妙な違和感だった。
朝、目が覚めた時に感じる疲労感や、昼間に一瞬の頭痛を感じることがあった。それでも、いつも通りに振舞おうとしていた。
ジェルが最初にそれに気づいたのは、ある朝、目を覚ましたときだった。
体が重い、まるで何かが全身に乗っかっているような感覚に襲われた。
「寝すぎたかな?」そう思って起き上がるものの、体を動かすのがしんどく、少しの間ベッドから動けなかった。
その時に「もしかして、これが疲れってやつなのか?」と考えたが、そのまま無理に起き上がって、普段通りの朝を迎えた。
それでも、学校に行くときに少し違和感を感じた。
いつもならすぐに元気を出して、歩きながら冗談を言って周りを笑わせるのに、その日は何となく足が重く感じた。
自分でも驚くほど体がだるく、無理にでも笑顔を作っていた。
そして、次第にジェルの行動に変化が現れるようになった。
以前は毎日のように仲間とバスケやサッカーを楽しんでいたが、その回数が減ってきた。
「今日、ちょっと体調が良くなくて。ごめん!」と言って、休むことが増えた。
それでも、周りは「ただの風邪だろ?」くらいにしか思っていなかった。しかし、ジェルの表情はどんどん疲れて見えるようになり、その元気さも次第に薄れていった。
ある日の夜、ジェルはリビングで一人、静かにソファに座っていた。
普段なら、家族と一緒にテレビを見たり、冗談を言い合ったりする時間だが、その日は無言で座っていることが多かった。
俺がその様子に気づき、近くに座ると、少しだけ心配そうに声をかけた。
「ジェル、どうしたん?元気なくね?。」
ジェルはその質問に少し驚き、急いで明るく振舞った。
「いや、別に大丈夫…。ちょっと疲れたから休んでただけ。」
しかし、その笑顔はどこか不自然で、俺はジェルの表情に違和感を覚えた。
その日の夜、ジェルは一度も寝ることができなかった。
心の中では「これくらいで休んじゃダメだ」と思っていたが、体は言うことをきかなかった。
寝ようと目を閉じても、体の中で何かがうまく動かない気がして、息が上がり、冷や汗をかいていた。
「本当に、こんなことで大丈夫かな?」と、少しだけ心配になったが、結局ジェルはその夜も無理して寝なかった。
次の日、ころんが不安そうにジェルに近づいてきた。
「ねぇジェルくん、クマがすごいけど大丈夫?」
ジェルはまたもや笑顔を作り、「大丈夫だって!ただちょっと眠れなかっただけだよ。」と答えるものの、その目はどこかしら遠くを見つめているように感じた。
ころんはジェルの言葉を信じようとしたが、その表情に隠しきれない不安があるように見えた。
第一章 完
第二章「診断」へ続く