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呪いの子から3年後
魔法界を風靡させた英雄3人組の内2人。
ロンとハーマイオニーは2人の子どもを授かっていた。 長女ローズは17歳、長男シダーは14歳。
この2人は巷で仲良し姉弟と評判だ。一体誰がそんな噂を流したのだろうか、思春期真っ只中の2人はひとつ屋根の下、お互い不満を持って暮らしているに違いない。
「姉さん!逃げるなんて卑怯だぞ!」
シダーがローズの部屋のドアを激しくノックする。昨晩ローズはハーマイオニーと夜遅くまで話し込んでいた。17歳になったローズは1人の少年に夢中になっていた。その実、アルバスやスコーピウスに恋愛相談をするのも何だか気が引けて、母であるハーマイオニーに相談に乗ってもらっていた。云わば恋バナをしていたのだ。
そんな事を知る由もなく好奇心旺盛なシダーはしつこくローズに質問を投げかける。
「昨日の夜、ママと何を話してたのさ!まさか僕がこっそりゲーゲートローチを使ってたことバラしたとか!?」
ありもしない話を憶測で話進める性分は父親譲りだろう。ローズはひとつ溜息をついてドアの向こうのシダーに向かって叫んだ。
「うるさいわね!そんなことじゃないわよ!」
2人の声が下の階にまで響き渡る。
1階で昼食の支度をしているハーマイオニーは、眉間に皺を寄せて階段の先を見つめた。何かを言おうと大きく息を吸ったところで、ロンが止めに入る。
「まあまあ、こういう喧嘩も必要だって。」
沢山の兄妹たちと過ごしてきたロンは家族内の軽い揉め事は必要だと、正面からハーマイオニーの両肩をポンと叩いた。
ハーマイオニーは呆れたように目線だけを上に送りながら深く溜息をついてスープの入った鍋の前に戻る。それを見たロンも満足気に口角を上げ、テレビの前に戻った。
「姉さん、もしかして、僕が何かした?」
家の中が少し静かになった後、ローズのドア越しにシダーの声が聞こえた。
ローズはそっと扉を開け外に出た。
「本当に何でもないわよ。ママとは女同士の話をしてたの。」
強気なローズはいつもより少し声を張って言った。それを見たシダーは、なーんだ!とヘラッと笑う。ハーマイオニーお手製の豆スープの良い香りが家中を包んだ。
「2人共ー!早く降りてきなさーい!」
「はーい!」「今日は豆スープだ!」
ローズとシダーがニコニコしながら階段を駆け下りてくる。
「あら?」
ハーマイオニーは、さっきの大声はなんだったのかしら、というように微笑みながら降りてくる2人を見ながらお皿に料理を盛り付けていく。ロンは相変わらず何も考えていなそうで、しっかりと2人の事を見ていた。
「いただきます!」
4人の明るい声が優しく響く。スプーンやフォークが、お皿にカチカチと当たる音が何とも心地よい。これからどんな未来が待っていようと、4人で幸せに生きよう。
そんな大きな幸せを求めることはない、ただただ平凡でかけがえのない時間がそこにはあった。そしてそれこそが、彼ら4人の何よりの幸せだった。