ドワーフの娘でもあるルティシアは手先の器用さが際立っている。過酷な環境下を故郷としていることもあって、初めから強さを備えていた娘でもあった。特に耐火に優れており、魔法に限らない炎攻撃からも耐えきることが可能だ。
そんなルティシアが攻撃を仕掛ける相手は、空を主戦とするドラゴン族。地上での動きに慣れた彼女が、攻撃が当たらない距離の相手にどうするべきなのか悩んでいる。
「むむむむ……アック様~、ドラゴン相手にどうすればいいんでしょうか~」
この場にいないアックにすがりながら、ルティシアは自分が作った特製ドリンクを口に含む。
「ぷはぁ~よぉぉし、よぉぉし! わたしだってシーニャには負けませんからね~! 空は飛べないけど、跳躍力を高めることが出来るんですよ~!」
そういうとルティシアはその場で屈み、上空にいるドラゴンに向けて力を込めながら勢いよく飛び上がろうとしている。
「いっきますよおおぉ!」
どんな強化効果を得られたのかは不明だが、ルティシアは両拳に力を込め、ドラゴンの翼部分に突っ込む。
直後、自身を命中させた。
「ギュゲエエエェ……!!」
「さあ~反撃するなら地上に降りて来ていいんですよ~!」
ドラゴンのどの部分に攻撃を当てるかは決めていなかったが、手応えがあったようで地上に落下するルティシアめがけ、一匹のドラゴンが急降下を始める。
「――ウニャニャ!? ドワーフが落ちて来るのだ!」
「うぎゃあぁ~! どいてどいてどいてどいて~!!」
地上への衝撃とともに暗転――。
「うう~ん……いたたた」
「フ、フニャ……耳鳴りが酷いのだ。石頭にも限度がありすぎるのだ……」
ルティシアはものの見事にシーニャにぶつかっていた。
「そ、そんなことを言われても~」
「早くシーニャからどけて欲しいのだ!! 空で口を開けたドラゴンが見えているのだ!」
「ほえ? 口を開けた……!? ま、まさか~」
「シーニャ、ここから離れるのだ。ドワーフだけで何とかするのだ!」
「えぇぇぇぇぇ!? あれはどう見ても炎の~ひぃえぇぇぇぇ!!」
慌てふためくルティシアをよそに、シーニャはすでに倒した巨躯の魔物を盾に身を隠す。
「ガゴオォアアアアアア……!!」
ルティシア以上に空を支配しているドラゴン族が絶叫。大きく見開いた目と数メートルはあるかという翼を広げ、盛大な炎を口からほとばせながら狙いを定めている。
「えぇぇぇ!? どう見てもわたししかいないじゃないですか!! よぉおし、よぉぉぉし!」
炎によるブレスを吐く直前、ルティシアはドラゴンの一瞬の全身硬直を狙ってもう一度深く屈みこむ。その勢いで、拳に力を込めながらドラゴンの口に突っ込んだ。
でたらめな拳の威力と突撃。
そのせいでドラゴンは溜め込んでいた膨大な炎を地上に散らしながら爆散する。目を閉じたままのルティシアは、そのまま地上のどこかに落ちてしまう。
「――うぅ~ん……あれぇ? わたし、もしかしてフワフワした世界へ来てしまったんでしょうか……」
「重い、重すぎるのだ……ウウニャ……」
「わわっ!? いつの間にかシーニャに抱かれちゃってたんですか~!?」
もはやお約束と言わんばかりに、ルティシアはまたしてもシーニャにぶつかっていた。
「早くどけるのだ!! ドラゴンがまだまだ襲って来るのだ。早く何とかして欲しいのだ!」
「えぇぇぇぇ!? 一匹だけじゃなかったなんて~!! あうぅぅ……」
「シーニャも協力するのだ。早くシーニャから離れるのだ!」
「は、はいぃぃ!」
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