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M視点でのお話です。
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休止宣言をしてから高野と綾香の脱退が決まり、フェーズ2は俺と涼ちゃん、若井の3人体制で行くと決まった頃。
ふと立ち聞きしてしまった陰口。
「そりゃフロントマンがあれだけ藤澤一人に熱上げてたら、高野さんだって綾香ちゃんだって面白い訳ないよね」
「エコ贔屓しすぎだよね?実力だって対してある訳じゃないのにご寵愛がすぎるんじゃね?なんなの?出来てるとか?」
揶揄するような下卑た笑い声が続く。
ふざけんな。高野や綾香との日々を蔑ろにするな。と激しい怒りを覚えるとともに、
俺の仄暗い誰にも言えない欲望を、
思ってもみないところで指摘されて
一気に血の気が引く。
衝撃にふらつく身体を支え、立ち聞きしていたのがバレないようにその場を立ち去るしかなかった。
涼ちゃんをエコ贔屓してる?
ちがう。そんなんじゃない。
涼ちゃんのアカデミックな音楽性は我流でやってきた俺にはないもので。
キーボードの演奏技術はまだ未熟かも知れないけど、ライブの繋ぎアレンジだって、涼ちゃんになら任せられる。
何より、俺には、俺が歌を創るには、涼ちゃんが必要で….
そこまで考えて、
あぁ、これだから駄目なんだ。と思い知らされた。
俺の想いが。
ただのメンバーとしてでもなく、
仲のいい友人としてでもなく、
俺は、恋愛対象として藤澤涼架を求めてしまっていたから…
バンドのフロントマンとして、ミセスを率いるものとして、涼ちゃんへの想いを抱えたままだと、
いずれこの陰口の対象は涼ちゃんへ向く。
彼の実力や音楽への深い理解や情熱が、歪んで受け取られ、汚されてしまう。
それだけは、絶対に駄目だ。
俺の愛する、音楽に真っ直ぐで、俺の音を聴いてはキラキラと輝く涼ちゃんを損なう訳にはいかないから….
俺の我儘でメンバーを失ったミセスを守るため、
そして涼ちゃんを護るため、
俺は俺自信を罰する必要がある。
俺から一番大切な人を奪えばいい。
それでも音楽が残るなら。
音で君と繋がっていられるなら。
君を傷つけ損なうよりも、その方がずっといいから。
……..俺は、涼ちゃんを俺から取り上げることにしたんだ。