「急な仕事が入ったって東堂社長から聞いてたよ。本当に忙しくしてるんだね」
「まあ、結構忙しい……かな。お2人共、お元気そうで」
「おい、慧。皆さん中に入ってもらって」
東堂社長のお兄さんが、少し離れたところから言った。
「ああ、わかったよ」
私達は『杏』のカフェに入って、そこから二次会が始まり、みんなそれぞれ思い思いの会話を楽しんだ。
あんこさんもドレスから洋服に着替え、みんなのテーブルを回って挨拶してる。
「あの~すみません。写真撮ってもらえませんか?」
「いいですよ」
可愛い地元の若い女の子達に頼まれて、祐誠さんはカメラを預かろうとした。
「いえ、違います。一緒に写真に写ってもらいたいんです」
そんな風にせがまれて、祐誠さんの写真撮影会が始まった。
「ありがとうございます! 北海道にこんなモデルさんみたいな素敵な人いないので嬉しいです!」
「私もお願いします!」
「じゃあ、私も……」
あっという間に女性達の列ができた。
若い子だけじゃなくて、かなりお年を召した方まで。
みんな目をキラキラさせながら、祐誠さんとの撮影を楽しんでいる。
おば様達は、祐誠さんにベタベタ触って、腕を組んだりして嬉しそうだ。
隠しても隠しきれない男の魅力、みんなが祐誠さんに近寄りたい気持ちはよくわかる。
カメラマンは慧君が引き受けてくれてるけど、慧君だって十分イケメンなのにね。
「祐誠さん、相変わらずめちゃくちゃいい男だよね。ますます磨きがかかってるわぁ。雫ちゃん幸せだね」
あんこさんが話しかけてくれた。
「ありがとうございます。私もあんこさんと同じで……幸せですよ。本当に、怖いくらいに」
「ごちそうさま。いいじゃない、怖いくらい幸せなんて言ってみたいよ。あんなイケメンと一緒にいられたら、そりゃ毎日ウキウキだよね~私なんかはそこそこの幸せだからさ」
「とんでもない! あんこさんだって、めちゃくちゃ幸せですよ。あんなにも東堂社長に愛されて。お2人は美男美女の素敵なご夫婦です。とてもお似合いです」
「嬉しいこと言ってくれるんだね、雫ちゃん。ありがとうね。私、本当に自分でも驚いてるんだよ。まさか……北海道に来るなんて」
「そうなんですか?」
あんこさんは大きくうなづいた。
「ずっとがむしゃらに頑張って来たけど、何ていうのかな、年齢を重ねるとだんだん……ね。不安っていうか、ふとした時にいろいろ考えちゃって。ある日突然思ったの、あの人の側に行きたいって。そしたら……もう、いてもたってもいられなくなっちゃってさ。ダメだよね」
あんこさんは真剣な眼差しで言った。
「ダメじゃないですよ。わかります。私だって……突然でしたから。答えが全然わからなくて悩んでたけど、でも焦らずに毎日を精一杯生きてたら、ある日探してた答えにたどり着いたんです。それは全部、あんこさんがアドバイスしてくれたことですよ」
祐誠さんを好きだと感じた瞬間を……私は今でも忘れてない。
「そんなこと言ったかな? でも、お互いこれで良かったんだよね。とにかくこれから先の人生、みんな元気で明るく生きていきたいね」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!