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「はい。そうですね、お互いに……」
その時、慧君も会話に入ってきた。
カメラマンは終わったみたい。
「ごめんね、慧君。ありがとう」
「いや、全然大丈夫。俺の親戚もみんな喜んでたよ。本当、アイドルみたいだな」
祐誠さんは、まだ女性達に囲まれてる。
ちょっと妬けるけど……
こんなことは普段から慣れっこだから。
正孝の学校でも、祐誠さんのママ人気は半端ない。
参観日や運動会に行くだけでキャーキャー言われて。
私に対して申し訳なさそうな顔をしてるのを見ると、ちょっと可哀想になる時もあるくらい。
でも、祐誠さんは周りの空気を読んで、ママ友やパン屋のお客様なんかには、ちゃんと嫌な顔をせず対応してくれてる。
私や正孝のためだろうなって思う。
それに、私が不安な気持ちにならないか心配もしてくれて……
「雫の目の前で他の女性と話したり、写真を撮ったりしても、俺が大切なのは雫だけだから。それは絶対に忘れるな」って、優しく言ってくれるんだ。
写真とか話し相手とか、そういう申し出も、私がいない時はいつも断ってくれてるんだって。
私は信じてるからいいよって言っても、「俺が嫌なんだ」って。
別にいいのにって思いながらも、そういう思いやりがすごく嬉しかったんだ。
祐誠さんは、本当に……最高の旦那様だ。
それにしても、あんこさんと慧君、私の3人で話すのは久しぶりだな。
「雫ちゃん、本当に元気そうで良かった」
「ありがとう、元気だよ。慧君のおかげでパンの売り上げも好調だし。東堂製粉所の小麦粉は本当に最高だよね」
「毎度ありがとうございます」
慧君は微笑んだ。
「でも、不思議だよね。あんこさんと慧君が親子になるなんて」
「確かにね。たまたま法律上は親子になったけど、慧君のことは昔から子どもみたいに思ってたしね。そうだ、雫ちゃん。果穂ちゃんのこと話したかな?」
「あっ、いえ」
果穂ちゃんのことは今でもしっかり覚えてる。
いろいろあったしね。
今、どうしてるのかな?
「あれからしばらく慧君のこと追っかけてたし、北海道にも来てたみたいだけど……でも、キッパリあきらめて、就職した先の同僚と結婚したんだよ」
「そうなんですか?」
果穂ちゃん、結婚したんだ……
「俺をあきらめたんじゃないですよ。いい加減飽きられたんです。果穂ちゃんに言われました。同僚に、俺よりイケメンがいたからって」
慧君が苦笑いする。
「私、1度見かけたんだよ。果穂ちゃんが彼氏と2人でいるとこ。こんな言い方失礼だけど……彼氏さん、優しそうな人だったけど、決してイケメンさんではなかったよ。あの子、本当はずっとずっと慧君のことを忘れられずにいたんだろうね。でももう踏ん切りつけないとって、自分から身を引いたんだと思うよ」
果穂ちゃん……
「慧君のためなのか、自分のためなのか。それはわかんないけどさ。最後に慧君に『イケメンの彼氏ができた』って……そう言うことで、全部忘れようと頑張ったんだよ。まあ、果穂ちゃんもママになったし、今はその人と幸せなんだろうけどね」