テラーノベル
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実写撮影をしたあの日から状況は改善した。例の夢を見なくなったのだ。おかげで朝はすっきり起きられるし昼間に突然夢の内容が頭を過ぎって思い悩むこともない。
ただひとつだけ問題があった。ひとりで処理しようにもきんときの顔が頭に過ぎり集中できないということ。不本意かつ友人が関係している夢をズリネタにするのもなんとなく嫌で、溜まっていくばかり。そもそも淡白な方ではあるという自覚があるため自慰がしばらくできないからと言って日常生活に支障が出るほどではないのだが。
しかしそれ以外は至って普通の状態に戻っていた。このまま順調にいけば次の実写撮影にはすっかりいつも通りの心持ちになっているかも……と考えていたスマイルだったが、そんな期待は打ち砕かれる。
「……最悪、だ。」
次の実写撮影の前日になって、きんときの夢を見た。のそりと起き上がったスマイルは身体にまだ夢の感覚が残っているような気がして頭をぶんぶんと振る。
今までの夢とは明確に違う点があった。それはきんときが優しく優しく抱いてくれるのではなくちょっと意地悪だったこと。
今までのきんときは優しい手つきで頭を撫でたり甘やかな目線を注いできたりと明らかに現実と違ったが、なんだか今日のきんときは現実のきんときに近い気がした。
「ふーっ…………」
「っあ゛ッ……ん、ん……う、」
ごつんと奥を突かれると脳みそが揺さぶられるような感覚に陥る。同時に性器の先っぽを強めに撫ぜられて腰が引けた。
こちらを見つめる瞳にはどこか冷淡さが見える。あの砂糖のように甘い視線よりかは断然見覚えのある顔だった。
性感帯以外への接触をあまりしてこないその手はそれぞれ、開かせた足を支える役割と2つの体の間で揺れる性器を刺激する役割を担っている。快感を逃がすように指を絡めて握れば同じ強さで握り返されていた手はそこにはなく、ただ虚空を握りしめては放すだけ。シーツを握り締めることもできたがそれは何故だかしたくなかった。
「ぅあ゛、…っ、ん……ぁ、ぁ、う゛……っ」
腰を強く打ち付けられる度に喉から押し出されるようにして濁った声が漏れる。前まではいつもスマイルの快感を引き出すように動いていたのが、きんとき自身の快感を追うような動きになっていた。太ももを抱えあげられて動きが早まると先っぽがスマイルのイイところを掠めて腰が揺れてしまう。
気持ちいいが、少しくるしい。
「…ぁ、やだ、んっ……ん゛、ぁ」
きんときはこちらを意に介さず動きを止めようとすらしない。いつもは、やだって言ったら止まってくれるのに。
前と後ろに不意に与えられる電流のような快感に翻弄され続ける。
「ぁーー……良い、……っはぁ、ほら、ねぇスマイル、きもちいい?」
「ん゛ぁ、っう……き、きもち……い…から、ぁ、!」
「……ふ、すまい、る…!おれ、イきそ…ッ」
「ぁ!!おれも、おれ…あ!、ぁ、イ…ッく゛、あぁ、ああ゛っっっ……!」
一際奥に打ち付けられて、薄まった白濁がびゅ、と押し出されるように飛び出た。きんときも中で達したらしくスマイルの肩口に顔を寄せて荒い息を吐いている。
耳をすり、と撫でてから後頭部に手を差し込まれ、スマイルの少し長めな襟足を梳きながら後頭部をするすると撫でる。そんな些細な動きでも達した直後のスマイルの身体には刺激が強く、腰がびくりと揺れた。
現実のきんときと重ねて見てしまった。そのせいかいつもより気持ちいい気がしてしまって、そんなことを思う自分が情けなくて視界がじわりと滲む。
ごめん。ごめんきんとき。夢の中で勝手にこんなことさせて。
目の前のきんときに涙をぺろりと舐められた瞬間に夢から醒める。そっと目元に触れるとしっとりと濡れていた。
(今までは夢の中の優しいきんときと現実のきんときの態度の落差で苦しんでたのに。今日に限っていつものあいつっぽいとか、なんでだよ……)
きんときに求められて嬉しいと思ってしまった。
現実のきんときが俺に懸想をしているなんて、そんなこと。あんな甘い目をこちらに向けるなんて有り得ないのに。この間身をもって理解したはずだろう。再びぽろりと涙がこぼれた。
夢は本人の欲望を映すものだとよく言ったものだ。実は最初から、きんときに抱かれたいという邪な気持ちがあったのでは。
自分の情けなさに深いため息が出る。悪夢だと言っておきながら本当は俺が望んでいたんじゃないか。
いや、悪夢であることに変わりはない。現実の冷酷さを思い知らされるという点で。
体調不良でもないのに撮影に穴を開ける訳にはいかない。撮影部屋に向かうスマイルの足取りはいつにも増して重かった。
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