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保険と利用
昼下がり。
スマートフォンが、
震える。
画面を見る前に、
心臓が跳ねる。
開く。
……是非、行きましょう。
一瞬、
視界が揺れる。
本当に?
読み返す。
行きましょう。
逃げ道のない言葉。
喉の奥が、
熱くなる。
嬉しい。
怖い。
同時にくる。
これは、
浮気だ。
頭の中で、
はっきりと言葉にする。
でも。
指はもう、
次を考えている。
大和さん、
ご家族は大丈夫ですか?
打って、
一度止まる。
本当に心配しているのか。
違う。
これは保険だ。
気遣っている女を、
演じている。
自分が悪者になりきらないための、
薄い膜。
送る。
そして、
ほとんど間を置かずに、
薔薇博、
二週間後の日曜みたいです。
ご予定、どうですか?
ストッパーは、
聞いていない。
ブレーキも、
かからない。
予定を、
具体化する。
現実を、
動かす。
そこまで来て、
さらに思う。
……子どもを、
連れて行こうか。
罪悪感が、
少し軽くなる。
大和さんの嘘も、
自然になる。
友達と会う。
そこに、
子どもがいる。
不自然じゃない。
もし誰かに見られても、
言い訳は立つ。
偶然、
ママの友達に会った。
そう言い聞かせれば、
子どもは疑わない。
小さいから。
理解しないから。
利用している。
ちゃんと、
分かっている。
それでも。
会いたい。
画面に、
追い打ちのように打ち込む。
もしよかったら、
うちの子も連れて行こうかなって思ってます。
お友達ってことで会えたら、
自然かなって。
送信。
胸が、
ざわつく。
ここまで考えている自分が、
怖い。
でも。
それだけ、
会いたい。
優しさで満たされていた器は、
もう、
静かな水ではなかった。
煮立っている。
触れなければ、
落ち着かない。
画面の向こう。
既読がつくのを、
待ちながら。
私は、
もう一度、
はっきりと思う。
これは、
浮気だ。
それでも。
やめられないんだ。