成瀬side
雫が死んでしまってから 、何もやる気が起きない 。
いっその事俺も死のうかと 、ハサミやロープ 、大量の薬まで買った 。
でも 、ご飯を食べようとリビングに行く度 、
彼女のメモ書きが目に入って 。
“ 玉ねぎ冷凍しとくの忘れた やっといてくれたらうれしいな “
” 晩ご飯 肉じゃが “
” ちょっと体調わるめ ご飯作れなかった “
雫の字を見る度に 、頭の中で彼女の声が聞こえて 。
本当はまだ生きてる気がして 、これらのメモ書きが捨てられない 。
遺品整理 … やんなきゃな 。
遺品 、… か 。
本当は分かってる 。
雫はもう居なくて 、俺が残されちゃったこと 。
気付きたくなくて 、
分かりたくなくて 。
やっぱり 、
まだ気付かないふりをする 。
1番悔しかった事といえば 、気持ちを全て伝えられなかったこと 。
彼女を看病していて 、迷惑かけてるって思わせてしまったこと 。
… 指輪を 、渡せなかったこと 。
大切なものはいつも決まって 、失ってからその大切さを知る 。
後悔したって 、もうどうにもならない 。
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用事で外に出なければならなかった 。
それすらキャンセルして 、机に突っ伏したまま1日を過ごす 。
雫がいたら何て言うかな 。
” いつまでへこたれてんの 。起きて ー 。”
“ 私のこと忘れて 、幸せになる約束したのに 。ず ー っと私ばっかり … “
ここから先 、
何て言うだろう 。
答え合わせなんてもう 、叶わないのに 。
すると 、窓の外から音がした 。
立ち上がり窓を開くと 、そこには猫が 。
成瀬)何してんの 、ご飯は無いよ 。
??)にゃ 、にゃぁ !!!!
何かに必死な 、猫が 。
成瀬)… ここに居ても何も無いよ 。ほら 、飼い主さんのとこ帰りな 。
そう言えば 、悲しそうな返事をして 。
??)みゃぁ …
成瀬)会える内に会っておかないと … 後悔するか らっ、
だめだわ 、これ 。
自分にも響く 。
成瀬)分かったら 、もう行きな 。飼い主さん悲しませたら怒んぞ 。
何とか笑って 、涙を堪えて 、
猫を家から追い返す 。
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雨宮side
昨日は 、彼の家の前で寝た 。
彼の家の前で待っていれば 、外に出て来て …
… 外 、出てくれるかな 。
なんて考えていれば 、音を立てて開く扉 。
成瀬)!
雨宮)みゃぁぉ 。
成瀬)…… 昨日の 、
今日は隈を作って 、目元が腫れてて 。
一晩中泣いてたの ?
やめてよ 、そんなことしないで 。
雨宮)にゃ 。
彼のズボンを口で引っ張って 、怒ってるよって伝えようとする 。
成瀬)飯は無いって 。
違う 。
変なとこ鈍感なんだから 。
成瀬)… 俺買い物行かなきゃだから 、じゃあね 。
勝手にどっか行かないでよ
… なんて 、私が言えることじゃないね 。
彼の後ろを歩く 。
成瀬)… 変な子に好かれたな 、
変って言われた 。
雨宮)に゙ゃ 。
彼のズボンを強く引っ張る 。
成瀬)あ ー あ ー 、怒んないで ?
困ったように笑う彼 。
最後に本気で笑ってくれたの 、いつだっけな 。
その後は 、黙って着いて行った 。
彼はどうやらホームセンターに用事があるらしく 。
流石にホームセンターの中までは着いていけないから 、外で待ってた 。
すると 、大荷物を持った彼が出てきて 。
成瀬)… どこまで着いてくんのまじで 。
少し呆れたようにそう言われてしまった 。
成瀬)まあいいけど 。
そう言って抱き抱えられる 。
成瀬)首輪 、付いてないから分かったけど 。野良猫かよ 。
雨宮)にゃ 。
成瀬)… お前のことを何の代わりにしようとしてんだろね 、俺は 。
雨宮)にゃ ?
成瀬)自分で歩けるでしょ 、着いてきて 。
そう言われ 、彼に着いていく 。
すると着いたのは 、
成瀬)いらっしゃい 。俺ん家へようこそ 。
どうやら 、私の事を飼う気らしい 。
彼との接点ができるのは嬉しいことだ 。
成瀬)飯食ってないだろ 、おま … 名前 、考えなきゃな 。
雨宮)にゃぁ 。
成瀬)……… らる 。俺の好きな人の名前フランス語にしたのを取った 。いいでしょ ?
苦しそうに 、そう笑って 。
雨宮)みゃ 、
私のこと忘れてって 、言ったじゃん 。
成瀬)っ た 、らる … 噛むなよ …
雨宮)にゃ 。
成瀬)分かってないな 、その顔は …
痛いんだよ 、死ぬって 。
苦しいんだよ 、死ぬって 。
だから 、死のうとしないで 。
彼が手を洗いに行った隙に 、彼の部屋の机の上にあった物騒な物達を壊そうとする 。
大量の風邪薬は 、瓶に入っていたので高いところから落として 、
ロープはがじがじ齧って 、
ハサミは … どう壊せばいいんだ ?
成瀬)なになに何してんの ?!
雨宮)ぅ゙~ …
死なないで 。
死のうとしないで 。
命があるんだから 、後悔しないように生きて 。
成瀬)…… 、
言葉も出さず 、呆然と立ち尽くす彼 。
成瀬)… 変なとこ鋭いんだね 、らる 。
貴方が何しようとしてるかくらい 、分かるよ 。
成瀬)… 分かった 、死ぬのは辞める 。
雨宮)にゃ !!
成瀬)お ー お ー 、落ち着きが無い …
その一言が嬉しくて 、
ばたばたと部屋を駆け回る 。
成瀬)… 捕まえた 。
雨宮)んにゃ 、
成瀬)らるのせいで片付けめんどいんだけど ?
雨宮)にゃ ?
成瀬)そういうとこだけ分かんないのかよ …
ため息を1つ吐き 、ごみ袋を持ってきて物騒なものたちを捨てる彼 。
成瀬)… だいぶ気持ちも整理ついたわ 。らるのおかげかもな 。
雨宮)にゃぁ 。
まだ 、苦しそうだけど 。
その傷は多分 、消えないけど 。
今を生きててくれるのなら 、それでいい 。
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