コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今は俺の心臓に宿る迷宮核が、最初に安置されていた広間。
そこには、無数の「エイリアン」が蠢いていた。
中央には、不揃いの間隔で並ぶ5基の揺卵嚢。
それらは肉根を互いに絡ませつつも、放射状に鍾乳洞の地面に這わせて広がり、周囲から魔素の青と命素の白たる仄光と同期するように明滅していた。そうして吸い上げられた魔素と命素は【幼蟲の創生】によって、肉のシャンパングラスを象る”器”の中に、新たな幼蟲卵として孕まれるのである。
まだ”流量”の限界に来ておらず高い生成倍率の設定は維持されていた。
揺卵嚢達は、まるで自然環境のドキュメンタリーの早回しのように、肉のシャンパングラスをみるみると膨らませていく。そしてその体内に幼蟲卵が生まれ出づるや、今度は魔素と命素を集めてその”孵化”のために蠕動し始める。
その有様は剥き出しの臓物を並べたようでもあり、居並ぶ心臓が輪唱するように鼓動するようでもあり、文字通り”剥き出し”の生命活動そのものであった。
そして時が満ちれば、1基、また1基。
幼蟲をその胎内で育み、吐き出す――その新たな生命にして眷属の幼体たる存在を、どこからともなく集まってきた労役蟲達が鋏脚で器用に取り上げる。
まるで新生児を抱く熟練の看護師のように、優しくうやうやしく、しかしどこか効率的に機能的な所作で、少し離れた位置に、労役蟲の技能【凝固液】によって作られた”囲い”の中に運んでいくのであった。
幼蟲は”ただ生きる”という本能しか持たない存在だ。
俺の指示も、まして他のエイリアンによる何らかの促しや催促も聞かない。ただ、刺激に反応してもぞもぞとその多脚を動かすという本能があるだけであり――気がつけば、どこまでもどこまでも這って脱走していってしまうのである。
俺がル・ベリの迷宮従徒化を終えて戻ってきた時には、それはもう凄まじい有様であり――洞窟中に散らばった幼蟲達を回収するために、誕生したての走狗蟲達まで総動員したほどであった。
それで、俺は労役蟲達の技能【凝固液】の性能評価を兼ねて、幼蟲用の広めの”囲い”を作らせたわけであった。
技能【掘削】により、部屋の地面を均したり通路を拡幅するために、鍾乳洞の壁を削りまた岩柱を破砕する。その破砕した岩の欠片を技能【運搬】で運んで”囲い”の基礎を形成し、そこに【凝固液】を一斉に吐き出し、また固まるに応じて鋏脚で器用に欠片を継ぎ足しながら――労役蟲達は連携しながら、瞬く間に、簡素だが頑丈な”囲い”を形成してしまったのだった。
【現在の眷属数】
・幼蟲……258体
・労役蟲……35体
・走狗蟲……24体
⇒ 内、名付き……8体(アルファ~シータ)
・揺卵嚢……5体
【迷宮経済】
・総維持魔素……1,184単位
・総維持命素……1,891単位
・総魔素収入……???(※流量の限界にはまだ達していない)
・総命素収入……???(※流量の限界にはまだ達していない)
無論、労役蟲達に与えた仕事は幼蟲のお守りだけではない。
定期的に”囲み”から「脱走」しようとするラルヴァを戻すのもそうだが、俺は本格的にこの鍾乳洞を迷宮として拠点化しようしていた。
その名の通りに「掘ること」「運ぶこと」「固めること」を技能として備える労役蟲は、文句も言わず黙々と働き続け、2日もしないうちに迷宮核があった部屋の凹凸を均していったのだった。
さらに俺は、岩壁をただ砕くだけではなく――地面の”研磨”も命じていた。別に大理石の床のようにぴかぴかに磨く必要も無かったが、揺卵嚢を並べた生産拠点のような部屋とするつもりであり、当面の仮の司令室でもあったので、移動しやすいように整えてもらうつもりだったのだ。
だが、労役蟲達が【凝固液】を地面に吐きかけながら、鋏脚でがしがしと地面を叩いたり、【掘削】によって出っ張りを除去していく様は非常に丁寧なものだった。正直、エイリアンとて”獣”である――とどこかでまだ彼らの実力を見くびっていた俺だったが、半日も経つ頃には、すっかり平坦に均された部屋に舌を巻かされたのだった。
司令室兼生産部屋の一応の完成後、次に命じたのが”外”側の大裂け目に通じる通路の形成である。
道中、アルファ達の助けがなければ俺には越えられない段差や崖、大きな地面の亀裂などがあったが、そこを均して平坦な坑道にする。しかも俺は、その通路を大幅に拡幅させようと考えていた。
具体的には、亥象ぐらいならばなんとか通れるような広さと高さに。
……これが、数多くの敵対的な存在がすぐに攻めてくる、というような立地であったなら俺も防衛を優先して地形、特に通路に手を付ける際にはむしろ迷路化を最優先しただろう。
だが、2度の探索の結果を見る限りは、その心配は薄いと言えた。
ル・ベリによると、どうもこの丘は多頭竜蛇を”竜神さま”として神聖視する小醜鬼達にとっては『帰らずの丘』として忌避され、また畏れられている聖地の一つである、という。
もし、彼の「竜」たる存在である多頭竜蛇が迷宮核の存在をずっと知っていたとすれば――丘の大裂け目は昔から、そこに至る道だった。歴史的な経緯からしても、必ずしも「竜」と迷宮領主は仲が良くないだろうし、敵対している可能性も高かった。
となれば、ヒュドラにとっては丘の大裂け目は監視対象だったのかもしれない。
海鳴りのような咆哮を上げて俺を”見ていた”のは、まさに迷宮核の存在を監視していたということだったのかもしれない。単に縄張りにしている……ということ以上に、多頭竜蛇にも何か『最果ての島』との間に込み入った事情や秘密の類があるのではないか、という予感がしていた。
そういうわけで、ちょっと好奇心や蛮勇に身を任せた小醜程度では、訪れた瞬間に”海憑き”にされて投身自殺するのがオチであったろう。故に『帰らずの丘』ということだ。
なので大裂け目からの侵入は今は考えなくて良い。
となれば、多少の段差なら軽々と登り、急峻な崖でも連携して突破してしまう走狗蟲はともかく、労働能力は高くとものっそり移動する労役蟲達を効率よく”外”へ送り出して効率よく労働させるための通路作りが優先であった。
そしてその際に、『司令室(仮)』を均す際に出た岩の破片も無駄にはならない。
凝固液と混ぜ合わせることで、拡張・拡幅した坑道の補強材となるからである。それをせっせと運ぶ個体、凝固液を吐いて固める個体、ひたすら掘り進む個体に分かれ、誰かの現場監督的な指示を必要とするでもなく、労役蟲達は一個の生き物であるかのような高度な連携を発揮していたのだった。
俺にとっては嬉しい誤算だったが、エイリアン達は”同系統”の個体とかなりの程度、自分の任務を共有することができるようだった。明らかに、俺が指示を出して場を離れた後に生まれた労役蟲が、周囲の労役蟲に混じって彼らと同じ作業に従事していたのである。
それで気になって、新たに進化が完了したばかりの労役蟲を観察したところ、先に生まれていた労役蟲数個体がわらわらと近寄ってきて、互いの顔を擦り付けたり、鋏脚を打ち合わせたり、喉を鳴らすようなコミュニケーションが行われているのだった。
言わば”エイリアン語”とでもいうべき情報共有コミュニケーション手段によって、彼らは即座に”群体化”して、俺から与えられていた目的を共有して共同でその実現に動くことができるのである。
そして、この同系統個体間の連携能力は、走狗蟲達についても同じだった。
ル・ベリを迷宮従徒にして戻ってきた時点で、数体の走狗蟲が新たに誕生していたが、俺の指示が無い間、彼らは「順位付け」を行っていた。
本能的に、帰ってきた俺に対しては傅く様子を見せたが、すぐに俺の護衛であるアルファ達とは良い意味での一触即発な威嚇をし始めたので、それを監督・裁定して、新たにゼータ、イータ、シータの名を与えた。
現在は24体。それぞれ”名付き”を班長とした8班を組んでいる。
当初は全員に名をつけるという案もあったのだが――幼蟲が百単位でうじゃうじゃする有様を見て、俺は早々にそれを諦めた。
決して、エイリアン達を”消耗品”と割り切った、というわけでもない。労役蟲が現場監督を必要とせず、同系統間でごく自然な群体本能を発揮して、目的のために連携して役割分担をして見せたような意味での「交換可能性」もまた、エイリアンの特徴であると思い至ったからだ。
ある個体が欠けても、即座に同系統の他の個体がその穴を本能的に埋めて、群体としての役割遂行を優先することができる――むしろ俺がアルファ達に”名を与える”こと自体が、例外的な行為でさえあったのかもしれない。
しかし、せっかくの【眷属心話】であっても、俺はまだ”エイリアン語”がわからなかった。その意味では、アルファ達が――己を「走狗蟲の中のアルファである、ベータである、ガンマである……」という、何となくであっても、独自の個体認識を自分で持ってくれるのは都合が良かったのだ。
俺からの【眷属心話】を出す際に、そうした「個体意識を持った」者からの反応によって、俺は「誰に指示を出している」かの実感と確証が得られたのだ。
第一、名前を全個体につけようと思ったとすると、確実にネタ切れを起こす悪い確信があった。
そうなると結局、囚人のような番号呼びとなってしまうだろう。それは、名前をつけないことと大差無く、俺からすればどの個体に【眷属心話】を送ったかがよくわからなくなってしまうのであった。
そしてこれは、多分、似たようなタイプの迷宮領主達にとっても共通の問題であるかもしれない。意外な【眷属心話】の弱点、というか使いにくい難点であった。
それで俺は折衷案的に、特に臨機応変に状況に応じて細かな指示を与えなければならない走狗蟲の系統に関しては”名付き”を作ることにした。時に”同系統個体間の連携”をリードしつつも、俺が【眷属心話】を通して識別可能な「指揮官兼精鋭兼アンテナ」となってもらったというわけである。
果たして、俺は『司令室』に鎮座したまま。
そのように運用する、各地に放った偵察班から集まってくる情報を整理統合し、それらを「地図」として自分自身の「ステータス画面」にまとめていく作業に集中していた。
鍾乳洞の外に4班、内に3班。
1班は俺のそばで警護と、俺が外に行く必要が出た際の補助や、その他の雑用。
アルファ達がどのようにそれを決めたかは定かではないが、これもまた群体とも言うべき、自然なローテーションが組み上がっていたのだった。
そうしてわかったことは、この鍾乳洞、俺の予想を遥かに越えてこの島全体の地中にまで広く根のように無数の坑道を張り巡らせた、天然の迷路であるということであった。
また、慎重に慎重を重ねて外を偵察させた結果、この島に詳しいル・ベリにも確認しながら、次の通りに11の小醜鬼氏族が勢力を分布させていることがわかったのだった。
各氏族のざっとした特徴は、次の通りだ。
○レレー氏族
『最果ての島』で現在最大の勢力であり、その大立て者は実はル・ベリであるとのこと。
彼の薬師知識と――そしてどう考えても”称号”の技能であろう【解剖術:ゴブリン】のゼロスキルの悪用により、レレー氏族では近年死亡率の低下と戦士の増加が目覚ましく、周辺との小競り合いも増えていたらしかった。
○ムウド氏族
レレー氏族と亥象の生息地を挟んで縄張りを持ち、特徴としてその集落は、かなり大規模な「木漏れ日群生地」にあるらしい。
“吹き矢”を武器としており、また多種多様な毒草を扱うことに長けた氏族であり、レレー氏族の「毒の槍」もまた元はムウド氏族との争いの中で盗んだ技であるとのこと。
○ゴゴーロ氏族
伝承によれば、数百年もの春と冬が巡る前にこの島に”竜神さまの導き”によって最初の|小醜鬼《ゴブリン》達がやってきたという。
大陸での迫害を避けて、生き延びたその集団の最初のまとめ役が「ゴゴーロ」であり、その名前を受け継ぐこの氏族は、『最果ての島』で最も古い氏族であるということだった。
○シャガル氏族
ル・ベリの怨敵であり、小醜鬼達にとっての”竜神さま”信仰において大事な位置を占める祭司をレレー氏族で務めていた、とある小鬼術士の出身氏族。
11氏族の中でも特に小鬼術士の割合が高いらしく、ちょっとした警戒が必要だろう。逆に、俺の方で体制が整えば、多く集めたいと思っていた『属性適応』系の因子を一挙に手に入れることができる、征服候補の氏族でもあった。
○ウルゴロ氏族、ムシュド氏族
ル・ベリによれば南西の”古樹地帯”は、樹冠回廊を通って島の全域を駆け巡る葉隠れ狼の根城のような場所であり、ゴブリン達にとっては非常に危険な場所である。
そのような場所にこの2氏族が近い理由は明らかで、他の氏族に破れて追いやられた結果であった。ただし、その分、他の9氏族よりも日々圧倒的に葉隠れ狼による襲撃の中で弱小個体が淘汰されている。
その結果か、氏族の数は少なくとも、そのような環境で生き残っている1体1体は非常に経験を積んでいる鍛え上げられた粒ぞろいの個体であるようであった――あくまでも小醜鬼基準として、ではあるが。
○ルガ氏族
『最果ての島』の小醜鬼11氏族にとって重要な”竜神さまへの生贄”において、それが祭司によって正式に儀式が進められる際、時折、生贄達の身に取り付けられる小さな宝石のような石があるらしい。
その産地がルガ氏族の縄張りの中にあるということだったが――俺の迷宮従徒となり、迷宮のシステムに一部組み込まれたル・ベリが確信を持って言うには、その宝石とは『魔素を固めた結晶のようなもの』ということだった。
それを聞いて、俺の方でも闇世Wikiで調べたところ、確かに『魔石』『命石』というものが存在しうる、ということ。効果や性質も、その名の通り、魔素や命素を固めたものであるという――流出せずに”保管可能なもの”である、ということが魅力かな、と俺はルガ氏族も優先的な征服対象にすべきかを思案したのだった。
魔素・命素の”流量”が薄い場所でも、活動しやすくなる可能性があったからである。
それで、偵察班に出した様々な収集命令の中に、このルガ氏族の”魔石”も加えたのだった――その成果は『因子』の話をする時に、するとしよう。
○ミミィガ氏族
長大な”耳輪”をつけているのが特徴である小醜鬼氏族であり、ル・ベリ曰く、11氏族の中では最も野蛮であるという。ただ、その蛮勇は主に氏族内での内部抗争に向けられており、凶猛さとは裏腹に非常に閉鎖的で内向的であるらしく、他の氏族と衝突することはあまり聞いたことが無い、ということだった。
○ジャルエ氏族
レレー氏族による圧迫の被害者その1。
食べることのできる木の実の群生地を縄張りに多く抱えていることから、ミミィガ氏族とは別の意味で内向的であり、しかもこちらはゴブリンの中では最も温厚で大人しいとのこと。しかしそれだけに、弱者を侮辱せずにはいられない、という業の深いゴブリン文化の中では侮られがちであり、レレー氏族からはたびたび「雌さらい」や「子さらい」を受けて弱体化しているとのこと。
○フルフル氏族
レレー氏族による圧迫の被害者その2。
こちらはジャルエ氏族とは異なり、まだレレー氏族に対して激しく抵抗している武闘派。
“魚とり”を行うという特徴があるらしいが、どうもそれはレレー氏族に圧迫されて、食うに困ってやむを得ず始めたものであるらしく、海に近づかねばならないその生活は常に”竜神さま”の怒りの咆哮によって怯える日々。
そのためか、近頃では氏族の実権が氏族長から祭司に奪われるということがあったらしい。ル・ベリを妬んだレレー氏族の祭司も、同じことをしようとしていたのではないか、とル・ベリは苦々しく言っていた。
なお、『因子:紋光』が取れた光る粉末であったが、ル・ベリによればこのフルフル氏族が海から採ってくる”海ホタル”をすり潰したものとのこと。どうやらこれもレレー氏族によって奪われた「便利な道具」であるようだった。
○ザビレ氏族
レレー氏族による圧迫の被害者その3。
ウルゴロ、ムシュドが南西の葉隠れ狼の生息地に追いやられた側ならば、こちらは北へ北へ海岸へ海岸へ、つまり”竜神さま”の方に追いやられた側である。森からも半分追い出されるような位置にその縄張りはあり、少し走れば海に飛び込むことのできる断崖にぐるりと囲まれているため、ひとたび”竜神さまの咆哮”があった時は11氏族の中で最も”海憑き”になる個体が多い。
しかも、葉隠れ狼にはまだ野生の本能的な意味で対峙できている南西2氏族と異なり、”海憑き”はたかだか小醜鬼程度の抵抗力ではどうあがいても抗うことのできるものではない。11氏族で真っ先に滅ぶとしたらここだろうとル・ベリは想定していた、とのことだった。
実際に、ル・ベリの言を裏付けるような、偵察班による数々の物品回収も進んでいた。
――そして、2回目の探索で目星をつけていた、数々の『因子』の取りこぼしも、着実に集まり、因子の解析率を押し上げてくれていた。
ル・ベリの作戦と、そしてこの島の11氏族を全て制圧するまでは、戦力を落としたくなかったので、まだ『根喰い熊』だとか『葉隠れ狼』といった肉食の獰猛な獣の『因子』狩りは後回しにしている。
それでも、アルファ以下”名付き”達に率いられた8つの偵察班の昼夜を問わないローテーションにより、集めやすいものから回収させることで、未解析だったいくつかの『因子』が解析完了となったのだった。
【因子解析状況】
・解析完了済:強筋、葉緑、魔素適応、命素適応
・解析完了(NEW!!!):拡腔、酸蝕、垂露
・肥大脳:15.5%
・伸縮筋:20%
・硬殻:73%
・重骨:6%
・血統:5.2%
・擬装:5%
・水和:82% ← UP!!!
・空棲:17% ← UP!!!
・水棲:33% ← UP!!!
・土棲:66% ← UP!!!
・噴霧:12%
・粘腺:16%
・汽泉:5%
・生晶:2.1% ← NEW!!!
・猛毒:87% ← UP!!!
・酒精:42% ← UP!!!
・紋光:5%
・水穣:12%
・風属性:5.8%
『拡腔』については、俺自身の眷属である揺卵嚢から解析できたものなので、5基に揃った時点ですぐに解析完了できた。
また、亥象の好物でもある青い果実――ポラゴの実や、樹液の出る樹木についても比較的見つけるのが容易であるため、8班24体のローテーションのついでに”間接解析”させることで、比較的すぐに解析完了できたのだった。
ただし、どうも”間接解析”は、解析をする観測者たる走狗蟲自身が俺と離れているとその効率はさらにガタ落ちするようであった。希少な生物ほど、それで効率低下をさせてしまうことはもったいないため、走狗蟲達には可能ならなるべく持ち帰るように指示をしていた。
そしてその中で、先に述べたルガ氏族の『魔素の結晶』と思しき、小さな青白く光る欠片が偶然手に入り――無生物ではあるが、試しに【因子の解析】を発動してみたところ、新たな『因子:生晶』が手に入った。
そしてもろもろの結果として、俺のエイリアン達の『進化系統図』は次のように広がっていたのだった。
この『進化系統図』に新しいエイリアンの系統が書き込まれるルールは、次の2つ。
まず、そのエイリアンに進化するために必要な因子を全て獲得すること。この際、解析未完了でも構わない。1つでも未発見の因子が必要である場合、その系統は表示されないようだった。
そして次に、そのエイリアンの”進化前”の系統を俺が1体でも保有して――【情報閲覧】を発動して、ちゃんと『存在昇格』の項目を確認すること。
これは『進化系統図』が【情報閲覧】と【因子の解析】の技能連携であることからも、妥当なルールだろう。
――つまり、俺は新たに進化・胞化をさせることで、現状の手持ちの因子からさらに進化できる「第3世代」と「第4世代」について知ることができたのである。
俺が新たに眷属のエイリアン達から進化させたのは、
『戦線獣』
『噴酸蛆』
『代胎嚢』
の3系統であった。
※本作は「小説家になろう」で先行投稿されています(現在0152話まで更新中)