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第8章 文化祭・お化け屋敷(後編)
文化祭も後半に差しかかり、廊下は人でごった返していた。
私は友達に誘われて「お化け屋敷」の前に立っていた。黒い幕に覆われた教室の入り口は、昼間なのに不気味な雰囲気を放っている。
「〇〇も行こうよ!」
「え、やだ……絶対怖いじゃん。」
「大丈夫大丈夫!亮くんも一緒に行ってくれるって!」
名前を聞いて思わず振り返ると、少し離れた場所で亮くんがポケットに手を突っ込みながらこちらを見ていた。
「……なんで俺も行くことになってんの。」
「いいじゃん、〇〇怖がりだから守ってあげてよ〜!」
友達のからかう声に、亮くんはため息をつきながらも歩み寄ってくる。
「ほら、さっさと行くぞ。」
そう言って自然に私の腕をつかんだ。
「え、ちょ……!」
驚いて見上げると、亮くんは目をそらしながら小さくつぶやく。
「……離すなよ。置いてったらお前泣くんだろ。」
暗闇の中、ぎゅっと腕を握る私をからかうこともなく、亮くんは一歩先を歩いてくれた。
突然、物陰から白い影が飛び出してきて「うわああ!」と声が響く。
「きゃっ!」
思わず亮くんの服を掴むと、彼は小さく笑った。
「お前、ほんとにビビりだな。」
「だって……!」
「大丈夫だって。俺がいるから。」
その言葉に、暗闇の怖さよりも胸の高鳴りの方が強くなっていく。
ゴール近く、最後の仕掛けで鎌を持ったお化けが突然飛び出してきた。
「いやぁっ!」
私が思わず亮くんの腕にしがみつくと、彼は低い声で一言。
「……調子に乗んなよ。」
そう言いながらも、背中でしっかり私をかばってくれていた。
やっとの思いで出口から出ると、まぶしい光に目がくらむ。
まだ心臓がバクバクしている私を見て、亮くんはふっと笑った。
「……な、言ったろ?大丈夫だって。」
「……ありがとう。」
小さく答えると、亮くんはわざとそっぽを向いて鼻をかいた。
「……別に、当たり前だろ。」
その横顔が妙に照れて見えて、私は胸が熱くなるのを止められなかった。