TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

小噺集

一覧ページ

「小噺集」のメインビジュアル

小噺集

21 - 指先の囁き(🐟×🦊)

♥

2

2025年12月01日

シェアするシェアする
報告する

研究室の午後は、ページをめくる音と小さな息づかいだけが満ちていた。

くられは机に頬杖をつきながら、分厚い専門書を静かに読みふけっている。

外から差し込む光が白衣の肩をなぞり、紙の上で影をつくっていた。


ツナっちは、整理の手を止めたままその姿に見入っていた。

わずかに動く唇、指先が紙を滑るたびにかすかに響く音。

どうしてこんな何気ない仕草に、心臓が跳ねるんだろう。

以前なら、こんな距離、当たり前だったはずなのに。


気づけばツナっちは、となりに腰を下ろしていた。

本のタイトルをのぞき込むようにして、そっと身を寄せる。

紙の匂いと、くられの淡い香りが混ざって、息が詰まりそうになる。

もう少しで肩が触れる――その距離が、やけに遠く感じた。


「……あ、ツナっち。これ、見てみる?」

くられが視線を上げずに言った。

指先がページを示す。ツナっちは思わずその手に目を奪われた。

指が長くて、温かそうで、触れたら――なんて、思ってしまう。


「……あ、はい。えっと……」

情けない返事しか出ない。

くられは柔らかく笑って、「そんなに緊張しなくていいよ」と言った。

その声が耳の奥に残って、ツナっちは視線を逸らす。


心の中で何度も呟く。

“触れないように”――そう思えば思うほど、指先が疼いた。

ほんの数センチ。その距離を縮める勇気が、まだ出ない。


けれど確かに、そこにある。

すぐそこの、あの声と温度に――ツナっちは今日も、手を伸ばせずにいた。

この作品はいかがでしたか?

2

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚