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将斗「10月9日午後11時頃、会社帰りの男性が何者かに襲われ失血死・・・と」
高校2年生の相川将斗(あいかわまさと)は、何やらブツブツと呟きながら手際良くキーボードを押していた。
ここは12人の高校生たちが取り締まっている「吸血鬼研究所」である。
この街に現れる「吸血鬼」の正体を突き止めるため活動しているのだ。
もちろん単なる噂では、と思う者もいるだろう。
しかし吸血鬼によるものと思われる事件の遺体は、全身の血液がほとんどなくなっている。
街の者は、吸血鬼が本当にいると信じざるを得なかった。
そこで立ち上がったのが、12人の高校生である。
彩「相川君、その新聞記事切り抜いて、こっちに渡して!」
将斗に声をかけたのは、3年の一之瀬彩(いちのせあや)だ。
研究所を最初に立ち上げたのが彼女である。
将斗は「はい」と返事をしながら、パソコンに打ち込んでいた事件の記事を切り抜き、彩に渡した。
和也「先輩!」
その時、玄関から声がした。
全員の目がそちらに向く。
1年の望田和也(もちだかずや)だった。
和也「来客です。通してもいいですか」
彩「ええ、いいわ」
彩はそう言いながら、和也と玄関に向かった。
☆・★・☆・★
客用のソファに、制服姿の女子が座った。
おそらく高校生だ。
彩「それで・・・ご要件は?」
彩は女子に聞いた。
女子「あの・・・実は私、吸血鬼のことを聞いてしまって・・・」
研究所が緊張した空気に包まれた。
「吸血鬼」のことは、大人しか知らないはずなのだ。
この「吸血鬼研究所」も、大人たちが特別に高校生に依頼して建てられた極秘研究所である。
女子「たまたま、大人が話していたのが聞こえたんです。・・・前の事件と同じ殺され方だ、とか・・・」
颯「そこまでにしとけ」
椅子に座っていた男子がガタンと音を立てて立ち上がった。
3年の詩島颯(しじまはやて)だ。
颯「吸血鬼のことは、未成年は知ってはいけないんだ。お前には聞いてしまったから話すが、吸血鬼を知ってしまった子供の保護者には処罰が下される。親が大切ならばそれ以上話すんじゃない」
圭一「やめろ、颯」
颯が声のした方を睨む。
同じく3年の大沢圭一(おおさわけいいち)が、颯を見てもう一度言った。
圭一「やめろ。そこまで言うことはない」
颯「・・・あ?」
女子が話をしただけでも緊張していたのに、より一層ビリビリと空気が揺れた。
圭一「彼女、「前の事件と同じ殺され方」と言ってただろ。前の事件ってことはつまり、事件はもうひとつあったんだよ」
颯はそれを聞き、一瞬はっとしたように見えた。
女子「・・・あの・・・」
女子の声を聞き、颯と圭一を見ていた彩は向き直った。
女子「その「前の事件」の概要は、私よく知らなくて・・・すみません」
彩「わかったわ。気にしないで」
彩は女子に感じの良い笑顔を向け、メモ帳とペンを取り出すと、
彩「あなたの名前と、学校を教えてちょうだい」
女子の名前は並木有沙(なみきありさ)。東第2高校の1年生だった。
有沙が帰った後、研究所内に全員が集まって会議が開かれた。
穂波「話していたのは並木さんのご両親とその近所の方2人のようです」
録音された会話を聞きながら、1年の小柳穂波(こやなぎほなみ)が言った。
壮吾「研究所の者だということを言い、話を聞くのはどうですか?」
同じく1年の山中壮吾(やまなかそうご)が先輩達に尋ねる。
それに、3年の如月菫(きさらぎすみれ)が、
菫「そうね、それが1番単純でいいかもしれないわ。もちろんあの子が話したということは隠して」
圭一「・・・わかった。明日並木さんの家に行き、聞き込みをしよう」
全員が「はい」と返事をし、それぞれの仕事に戻った。