テラーノベル
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元貴の口から発せられた言葉を頭の中で反芻する。
あの元貴が?こんなおれなんかを???
とても信じがたくて、また揶揄っているのか、と結論づけようとしたけれど。
おれに向けられる元貴の視線は真摯に見えて、思わずどきっと胸が弾んだ。
「元貴、おれに恋してるの………?」
「してるよ。もうずっとだよ……まさか伝える日が来るとは思ってなかったけど」
少し照れたような、拗ねたような様子で口を引き結んだ後、言葉を続ける。
「なんでりょうちゃんに優しくするかって、そりゃさ。好きな子に、ちゃんとやれよ!って怒鳴れる男がいる?」
あ、おれちゃんとやれよって思われてたよね、やっぱり。
自業自得であたりまえの評価に僅かに傷つきつつ、「好きな子」という単語に頰に熱があつまるのを感じた。
「ねぇ、りょうちゃん?…俺のこと、気持ち悪いと思う…?」
子犬のような可愛い顔で見上げてくる元貴に、ただただ愛しさが込み上げる。
「気持ち悪いわけないよ!びっくりしたけど、すごく………嬉しい」
「よかった……」
安心したように微笑む元貴が、なんだかいつもにも増してとても可愛い。どうしよう、なんだかソワソワした気持ちになってしまう。
「それでね?」
急に目の力を強くした元貴が立ち上がり、おれが座る椅子の背もたれに両手をかけ、顔を近づける。
「さっきのりょうちゃんの話を聞くにさ、りょうちゃんも俺に恋してると思う」
えっっっ
そうなの?おれ???
「あの藤澤がだよ?いつも自分のことは二の次で他人のことばっか考えてる藤澤涼架がだよ?若井のこと考えんなって俺に思ったんだよね?それって相当なことだと思ったけど」
至近距離でそう言われると、確かに…と思うと同時に、とても恥ずかしくなる。
元貴の距離が近いのなんて今更だけど、ちょっと離れてほしい。
「も、元貴、ちょっと座ったら。ごめんずっと床で…」
隣の椅子をひいて促すと、少し考えてから素直に腰を下ろしてくれた。
距離ができてほっとしたおれは、数秒後には腕をひかれて正面から元貴に抱きつかれていた。
「ねぇ、これは嫌じゃないよね?」
「え、うん、いつものことだしね…?」
「じゃあ、…これは?」
首を持ち上げた元貴の顔が近づいてきて、唇に柔らかいものが触れる。
キスされたのだと気づくと、体中の血液が沸騰したみたいに熱くなった。
「大丈夫、そうだね?」
赤くなったおれの顔を見て嬉しそうに笑う元貴。そんな幸せそうな顔してくれるの?なんだかたまらない気持ちになって、腕を元貴の背中に回してぎゅっと抱きしめ返した。
「りょうちゃん、すき」
再び近づいた元貴の唇が囁き、触れては離れるだけのキスを繰り返す。その優しさにくすぐったくなって、ふふっと笑ってしまう。
「…余裕じゃん?」
元貴がおれの膝に乗り上げてきて、今度はおれが元貴を見上げる形になった。頰に添えられた手に顎を持ち上げられる。少し開いた唇を喰むように口づけられ、元貴の舌が歯列をなぞるとゾクゾクと背筋が震えた。
口腔内に侵入してくる元貴に舌を絡めとられる。頭がぼうっとして、体から力が抜ける。元貴に縋り付くようにしてその甘い舌を味わった。
コメント
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💛の自分の気持ちに気付いてないところがいいですね! 続きを楽しみにしています