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初音ライダー剣

第17話

“記憶”

青年「は~あ、悲しいな…」

老舗タコ焼き屋の跡取りの青年・三上了は川に向かって小石を蹴りながら退屈そうにしていた。そこに、1人の女性がうつ伏せになって川の浅瀬で倒れているのを見つけた。その女性は巡音ルカだった。

了「へ?」

了は川で倒れていたルカにただ驚くばかりだった。

MEIKO「…以上が、今回の報告です。」

キヨテル「ご苦労でした。」

リン「…」

MEIKOによるリンの訓練の後、2人はキヨテルに訓練の報告をしていた。だが、リンの目つきは以前に増して悪くなっていた。

MEIKO「リン、どうしたの?」

リン「…」

キヨテル「リン?」

2人はリンを呼ぶ。何度か読んだ後、ようやく返事が返ってきた。

リン「…何だよ、何遍も呼ぶなよ!」

MEIKO「心配したのよ。何回呼んでも反応しないから。」

リン「別に。こっちの勝手だろ。」

キヨテル「その言い方はないですね。心配してくれる人に対して。」

リン「うるさい!」

MEIKOとキヨテルの問いかけに対し、リンは口調を荒げて返す。そして、リンは2人に背を向けて部屋を出ていった。

キヨテル「…やれやれですね。」

MEIKO「…」

キヨテルとMEIKOは首を傾げる。エレファントアンデッドの戦闘の後、リンはまた少しずつ顔つきが悪くなっていった。話しかけても無視したり、無理に呼ぶと「うるさい!」と声を荒げて返すようになった。本来、明るめな性格をしたリンだが、この一週間ほどでそういう感情が剥き出しになってきていた。

リンは徒歩でBOARDを去ろうとした時、嶋と出会った。

嶋「リン君。」

リン「…何?」

嶋は明るく声をかけるが、リンは素っ気なく返す。

嶋「浮かない様子だが、何かあったのか?」

リン「別に。何もない。」

リンはそう言って嶋との会話を流し、その場を去ろうとする。

嶋「リン君!」

嶋はリンを呼び止める。リンはそれで足を止め、流し目で嶋の方を見た。

嶋「蜘蛛の邪気に打ち勝つんだ!」

嶋はリンにそう忠告する。リンはその忠告を受けた後、前を向いてBOARDを後にした。

リンの様子を見遣った嶋はキヨテルの部屋へ行く。

嶋「キヨテル君。」

嶋はまずキヨテルに声をかける。

キヨテル「どうかしましたか?」

嶋「リン君のことなんだがね。」

MEIKO「リンに何かあったの?」

嶋はリンの今後について、キヨテルとMEIKOに嶋に問う。

嶋「カテゴリーAの邪気が大分浸透してきているみたいだ。何か手を打った方が良い。」

嶋はキヨテルとMEIKOにリンのことについて考えてみようと言う。

キヨテル「そうは言われても…」

MEIKO「何も手が…」

MEIKOもキヨテルも特に対応策は思いつかなかった。2人もリンのそこを危惧してはいたが、打つ手は何もなかった。だが、そこは嶋がある手を考えていた。

嶋「手はある。」

キヨテル「何ですか?」

嶋「私がわざとあの子に封印されて、カテゴリーAの邪気を精神面から抑えることだ。」

キヨテル・MEIKO「え!?」

嶋は自らラウズカードに封印され、リンの精神に働きかけ、カテゴリーA=スパイダーアンデッドの邪気を封じようと考えた。

キヨテル「そんなことができるんですか?」

嶋「可能だ。人の精神に働きかける能力(ちから)を持つのは何もカテゴリーAだけじゃない。」

MEIKO「でも、そんなの危険過ぎます!」

キヨテル「そうです!別の手を考えましょう!」

嶋「しかし、このままでは彼女は自我を失くしてしまう。」

嶋はこれしかないとばかりにそうしようと言うが、MEIKOとキヨテルは嶋を止め、別の手を考えようという。

その頃、ミクは買い出しで公園の屋台街に来ていた。その公園は大型の公園で、祭りのとき以外でも多数の屋台が出て賑わいを見せる。その1つとして、タコ焼き屋がある。ミクはそこでタコ焼きを人数分買うことにした。

ミク「タコ焼き7箱くださーい!」

了「あいよー!」

ミクの声に対し、タコ焼き屋台の店番・三上了は元気に返事する。

了「ルカちゃん、渡してくれる。」

ルカ「分かった。」

ミク「ん?」

了の問いかけに対し、屋台の奥から割烹着のような服を着た1人の女性が出てきた。巡音ルカだ。

ミク「あ!」

ルカ「ん?」

ミクは驚く。ルカがタコ焼き屋で働いていた。

ミク「あなた、何でここに…?」

ルカ「ん?何の話だ?」

ミクは驚きを隠さないままルカに問いかける。だが、ルカは全くの無反応で聞き返す。

了「何?知り合い?」

ミク「い、いえ…」

了の問いかけに対し、ミクは軽く流す。その一方でルカに視線を遣る。

了「ははぁ、さてはルカちゃんに惚れたか?お嬢ちゃん。」

ミク「お嬢ちゃん…」

了はデリカシーに欠ける言い回しでミクに問う。ミクは「お嬢ちゃん」と言われてショックで少し肩を落とした。了はさらに乗り気で話を続ける。

了「分かる分かる。ルカちゃん、美人だもんね~。でも残念。彼女、記憶喪失でさ、自分のこと話せないんだよね。」

ミク「…記憶喪失なんですか?」

ミクは了にルカのことを問う。

了「そう。だから、ここにいる代わりに働いてもらってるワケ。これで愛想が良ければウチの看板娘になったりしてね~…なんてな♪」

了はノリノリで話を続ける。どうやらルカが気に入っているようだ。

ミク「…」

ミクは黙った。ルカが記憶喪失とはいえ、アンデッドであることに変わりはない。だが、彼=三上了に真実を伝えるべきなのか?それを知れば、失望どころでは済まないだろう。そう考えていた矢先、黒い和服を着た1人の女性が了のタコ焼き屋に近づいた。

あずみ「すみません。タコ焼き1つ、下さらない?」

黒い和服の女性・あずみは了の屋台でタコ焼きを1つ注文する。

了「あ、はい。ルカちゃーん、彼女にこれ出してあげて。」

了はルカにタコ焼きが入った箱を1つ渡す。ルカはそれを受け取ってあずみの元へ行く。

ルカ「どうぞ。」

あずみ「ありがとう。」

あずみはタコ焼きを差し出したルカに礼を言う。その直後、ルカに同席を求める。

あずみ「あなた、今時間ある?」

ルカ「何?」

あずみ「店主さん、この人を少し貸してくださらない?話がしたくてね。」

あずみは店主にルカを貸してほしいと問う。

了「良いですけど、仕事あるんで、なるだけ手短にしてくださいよ。」

了は短時間ならOKとあずみに言う。そう言うと、あずみはルカを隣の席に座らせる。

了「和風美女が2人同席…いや~絵になるねぇ…」

ミク「そうですね…」

ルカとあずみが2人で話をしているのを見て、了はその様子に惚れ惚れしている。ミクはその様子に呆れて彼の言葉を適当に流す。そんな矢先、ミクに通信が入った。ウタからだ。ミクは慌ててその場を離れ、人気のない屋台の裏の方へ回って通信を取った。

ミク「どうしたの?」

ウタ「ミク、近くにアンデッドがいる!注意して!」

ミク「それって…まさか!」

ミクの予感をよそに、屋台の表からは猛牛のような呻き声が聞こえてきた。ミクは早速屋台の表へ出てみると、そこにはバッファローアンデッドが現れ、屋台を荒らし回って暴れていた。近隣の人々は恐怖に駆られて次々に逃げていった。だが、アンデッドの存在確認が遅れて逃げ遅れた了とあずみ、ルカたちは未だに屋台の方へいた。ミクは3人の方へ駆け出し、その最中にブレイバックルを取り出して腰に装着する。

ミク「変身!」

「TURN UP」

オリハルコンエレメントがルカたちに近寄ってきたバッファローアンデッドを弾く。オリハルコンエレメントはそのままミクを覆い、彼女を仮面ライダーブレイドへと変身させる。

ミク「早く逃げて!」

ブレイドは了、あずみ、ルカに逃げるよう指示する。前者2人は屋台を捨て、奥の方へ走って行った。ルカも事情が呑み込めないままだが、了に手を引かれて逃げていった。

ミク「…ここから先は行かせない!」

3人が逃げたのを確認した後、周囲にもう誰もいないと確認したブレイドはブレイラウザーを抜刀し、バッファローアンデッドに斬りかかる。

一方、公園の奥の林へ逃げていった了、あずみ、ルカの3人はそこで一息をついていた。

了「はあ…はあ…」

ルカ「…何だ、あのバケモノは。」

息を切らしている了に対し、ルカは割と普通でいた。割烹着という走りにくい服装ながら、息を全く切らしていない。もっとも、彼女がアンデッドだからなのだが。

あずみ「…平然としてるのね。」

言葉通り平然としているルカに対し、あずみは言い放つ。

ルカ「…お前もな。」

ルカはクールに言い返す。あずみも同じく、アンデッドに襲われそうになっていながら、息を切らしておらず、外傷もなく、平然としている。

あずみ「お互い様でしょう?ジョーカー。」

了「へ?」

あずみはルカを「ジョーカー」と呼ぶ。了がこれに対してツッコミを入れようとすると、あずみは了を裏拳で殴り飛ばして気絶させた。そして、あずみはアンデッド態・サーペントアンデッドへと変化した。

ルカ「!」

ルカはあずみの正体を知り、思わず身構える。だが、記憶喪失の彼女には戦う術が分からない。

あずみ「あっはっはっはっは!死ね!ジョーカー!」

サーペントアンデッドは両肩から生えている触手を伸ばし、ルカを捕らえる。

ルカ「ッ!?」

無人となった公園ではブレイドとバッファローアンデッドが激突していた。ブレイドはブレイラウザーを振るってバッファローアンデッドに斬撃を喰らわせようとするが、バッファローアンデッドは頭の角と左腕の蹄でブレイドの斬撃をガードする。

ミク「硬い…」

ブレイドが攻めあぐねているところに、バッファローアンデッドは角から磁力を発生させ、ブレイドを引き寄せる。

ミク「っ!?」

ブレイドは磁力でバッファローアンデッドに引き寄せられると、バッファローアンデッドは角を突き出してブレイドに体当たりを敢行する。

ミク「うわっ!」

体当たりを喰らったブレイドは弾き飛ばされ、鯛焼き屋台の近くのテーブルに激突した。バッファローアンデッドは再び体当たりを敢行すべく、磁力を発生させてブレイドを引き寄せようとする。ブレイドはそうされまいと、片腕を伸ばして屋台にしがみつく。だが、バッファローアンデッドは磁力を強めてくる。そこでブレイドはその場で加熱されていた鯛焼き用の鉄板を手に取り、磁力を利用して敢えてバッファローアンデッドに近づき、鉄板をバッファローアンデッドの顔面に当てた。バッファローアンデッドは高熱に思わず怯み、その場に倒れてしまう。鯛焼き用の鉄板が当たったその顔面は真っ赤に腫れ上がった。バッファローアンデッドはいまだ高熱の火傷に耐え切れず、倒れ転げて立ち上がりもせずにじたばたした。ブレイドはこの機を逃さず、ブレイラウザーから♠5、6、9の3枚のカードを取り出し、ブレイラウザーでラウズする。

「KICK」

「THUNDER」

「MACH」

「LIGHTNING SONIC」

ミク「はああああっ!」

3枚のカードの絵柄がブレイドにオーバーラップされた。ブレイドは体を捻った後、猛スピードでダッシュし、十分スピードを付けた後、高く跳び上がって空中で体を丸めて前転し、電撃のエネルギーを纏った右足を突き出してバッファローアンデッドにキックを入れる。バッファローアンデッドは大きく蹴り飛ばされ、公園の樹をなぎ倒してその場に倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。ブレイドはそこにブランクのラウズカードを投げ入れ、バッファローアンデッドを封印した。

ミク「…そうだ!あの人は!」

ブレイドはルカたちのことが気にかかり、彼女らの後を追う。

林の奥では、ルカがサーペントアンデッドに捕らえられていた。ルカはサーペントアンデッドの触手に捕まり、縛りつけられていた。

あずみ「あっははははは!こうも上手くいくとはね!」

サーペントアンデッドは勝利を確信したように高らかに笑う。

ルカ「…っ!」

ルカは拘束から逃れようと足掻く。だが、サーペントアンデッドはルカをきつく締め付ける。変身さえできれば拘束から逃れることはできるが、人間態で、しかも記憶のないルカはカリスへと変身できることを知る由がない。ルカは歯噛みしつつ、サーペントアンデッドの拘束に苦しむ。


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