カリン(聖獣王)の体調が良くなったため、俺は寝室から退室した。
その直後、ライカ(悪魔型モンスターチルドレン)に話しかけられた。
「師匠ー、何してたのー?」
「え? あー、まあ、ちょっとカリンに体をいじられ」
この言い方だと誤解されるかもしれないな。
「じゃなくて……。そう! マッサージしてもらってたんだよ」
「マッサージ?」
「あ、ああ、そうだ。マッサージだ」
「へえ、そうなんだ」
ライカはナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)の体をじーっと見つめながらグルリと一周した。
「な、なんだ? 俺の体に何か付いてたか?」
「ううん、別に何もないよ。というか、雨止まないねー」
「え? あー、そうだな」
今はまだ四月だから梅雨ではないよな。
だとしたら、積乱雲……いや、乱層雲がこの辺りの空を覆ってるのかな?
「ねえ、師匠。私の固有武装で雲吹っ飛ばしてもいい?」
「ダメだ」
「えー、なんでー?」
「自然の摂理に逆《さか》らうと、ろくなことがないし、雨が降らないと困る存在が少なからずいるからだ」
「まあ、たしかに雨が降らないと植物も育たないし、川の水も少なくなっちゃうけどさー。家の中にずっといたら体が鈍《なま》っちゃうよー。今すぐ外に出たいよー」
「気持ちは分からなくもないが、こんな日は家にいた方がいいぞ。というか、モンスターチルドレンの中には水が弱点のやつもいるんだろ?」
「弱点……というか、正しくは弱体化する……かな」
「弱体化?」
「うん、そうだよ。モンスターチルドレンは人だった時期が短ければ短いほど、水を体に浴びると弱体化するんだよ」
「そうだったのか。けど、水を飲むことはできるのに浴びると弱体化するなんて、おかしくないか?」
「それはあれだよ。血液に直接注入されると毒が回るけど、飲んだら体にいい毒みたいなものだよ」
「なるほど。つまり、皮膚に接触した時は弱体化するけど、体内に取りこむ時は養分として吸収するんだな」
「まあ、そういうことだね。だから、水をかけられそうになったら、それを全部飲めばいいってことだね」
「それ、人の肺活量じゃ不可能だろ」
「私たちにはできるよ。人じゃないから」
「今はまだそうだが、お前たちはいずれ人間に戻る。だから、それまではあんまり無茶なことはしないでくれよ?」
「そんなこと分かってるよー。心配性だなー、師匠はー」
雨はまだ止みそうにない。
というか、少し雲の動きがおかしいような。
気のせいかな?
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