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ローレン・イロアス
アクシア・クローネ
葛葉 ) 今回は登場しません 。
叶 ) 今回は登場しません 。
※ ご本人様には関係ありません 。
『 俺、面接落ちたかも 』
と、隣で嘆くのはVTuberオーディションで偶然再会した、元同僚のアクシア・クローネだ。
『 そんな事ないんじゃない?アクシア全然良かったと思うけど。 』
アクシアに微笑み、励ましの言葉をアクシアに掛ける。このタイミングでは相手からしたらお世辞と捉えられてしまうだろうか、だがこれはアクシアの面接を近くで聞いた俺の純粋な気持ち、本音。でもアクシアは自分では納得がいってない様で、深いため息を吐く。
『 何がそんなにダメだったの?俺には分かんないんだけど 』
『 いや、チュートリアルみたいな回答で面白くなかったかもなって思ってさ 』
『 そうかな… 』
正直、アクシアの気持ちは良く分からない。あの喧嘩からアクシアの様子が何処かおかしいように感じる。
『 あ、じゃあ俺もう帰るから。またなアクシア 。 』
『 ローレン帰るの?お茶でもしようよ。 』
『 俺はいいかな、ごめん、じゃ! 』
一人気まずさを感じて、その場から逃げるように会話を一人終わらせ、足早に場を後にする。
こんな気持ちをアクシアに感じるのはあれ以来だろうか。
俺がまだエデンに居た時の話。
俺は幼い頃、実の両親に捨てられた。家計が苦しくて俺が邪魔だったんだろう。
そんな俺を拾ってくれたのは、見ず知らずのある夫婦だった。その夫婦もまた決して裕福といえるものではなかった。
でもその夫婦は俺を小学校から高校まで通わせてくれたし、養育費や学校の給食費、その他諸々身の回りの全てを世話をしてくれた。
だから俺は、そんな恩を返す為に警備部隊に入隊した。
その頃の俺はまだ新入りで厳しい訓練にも慣れなかった事もあり、右も左も分からなくなり、精神的にも、肉体的にも、苦しくなっていた頃に出会ったのがアクシアだった。
アクシアと出会った日は、災害などに備えた訓練と、戦闘任務の訓練を終えた日だった、食堂で隊員達が食事をしていた、そこに上官が隊員を大広間へ来るようにと隊員を促す。
戸惑いながらも、上官指示に従うように隊員は、一斉に大広間へと足を運ぶ。
しかし、大広間に上官はおらず、隊員がガヤガヤと大広間が騒がしくなる。ガチャと、扉が開き上官が大広間へと入ってきた。その瞬間騒がしかった大広間一瞬にして、ピリついた空気へと入れ替わっていく、その空気もつかの間、入ってきた上官の後ろを歩く、俺と同い年くらいの青年が笑みを溢しながら、隊員の前にたつ。
『 今日から配属となりました、アクシア・クローネといいます!少し皆さんと遅れたスタートですが、全力を尽くし一生懸命に頑張ります。 』
意気揚々とした、表情でそう話す。その瞬間隊員から一斉に拍手が起こる。
『 いいね、元気があって期待してるね 』
隊員の先輩からの言葉にその青年は、目を輝かせ、
『 はい、頑張ります! 』
明るい返事を返し、会釈をする。その瞬間俺は覚った、コイツは始めから期待なんかしてない。
俺ら部下は所詮コイツらの捨て駒で、自分の身代わりとして俺を利用する。そんな場面を一度みたことがある、そのせいで俺の相棒は命を落とした。
コイツらは希望と幸せに満ち溢れた奴の絶望し、嘆く瞬間を沢山見てきたそしてそれを、幸せとして感じるようになったんだろう、謂わば人間の形をした化け物だ。
そんな事俺以外は知らないだろう。
コイツら上官や、先輩は、今助ければまだ助かるような、手を伸ばせば、届く距離にいる隊員達を見殺しにしてきた事、後輩に淫行な事をし、複数で虐めをしてきた。俺は全て知っている。
その秘密は、なんとしてでも隠し遠さなければいけない、アイツらに殺された奴の為にも、いつか俺がコイツらを殺してやるんだ、と顔を伏せ、拳を強く握り締める。
最初に出会った頃のアクシアはいつもニコニコしていて、何を考えているか分からなかった。
今まで苦労して生きていないんだろうな、俺とは違って裕福に暮らしてなに不自由なく生活していたんだろうな。
俺はそんなアクシアをただただ妬んだ。
そんなある日、仮免任務で同い年ということもあって、アクシアとペアを組んで任務に向かう事になった。
『 よろしくね 、ローレン!! 』
任務に向かう途中前を歩いていたアクシアが、くるりと、此方の方を振り向き、微笑みを見せた。
そんな幸せに溢れたような笑顔に俺は、怒りがこみ上げてしまった。何も知らない、無力な人間が、こんな所で暮らさなければならないのか。
『 うん 、よろしく 。 』
素っ気ない、返事を返す。
冷たい対応をとってもアクシアは俺から離れる事はなく、気づくといつも隣を歩いていた。
朝食から夜食も常に付きっきりで、二人部屋の寝室も、いつもアクシアと生活していた。アクシアと俺を見掛けた上官が、
『 お前らは、本日をもって相棒として、常に一緒に生活してもらう。 』
と朝食を食べてる所に突然やって来て、その一言だけをいい放ち、俺たちが質問する間もなく去っていった。仮免任務だけの仮ペアだと思って解放されると思っていたのに、
理解が出来ないまま上官を見送った後、アクシアが興奮気味たように、立ち上がって
『 ローレン!俺らこれからも一緒だってよ!! 』
『 ぁ、あぁ 』
アクシアに苦手意識を持っていた俺からしたら今世紀最大の事件でしかない。俺は最悪だ、と言いたげに眉間に皺を寄せて、テーブルに額を当て、うつ伏せになった。
俺を見兼ねてアクシアが、空気を変えようと
『 ローレン、俺の事嫌いでしょ 』
と少し笑いを含めたように話掛けてした。俺は、額を上げてアクシアを見つめる。
その時のアクシアの顔は苦しそうで、悲しそうだった。そんな入り雑じったようなそんな表情だった。
『 別に、嫌いじゃないけど 。 』
口元を尖らせて、もごもごと、曖昧な返事を返す。先ほどは、苦しそうな表情を見せたと思ったら、今度は腹を抱えて笑い始めた。
『 絶対ウソじゃん!、めっちゃ嫌いでしょ!! 』
『 まぁ 、、苦手かもな 』
『 やっと言ったな 。俺はローレンが好きだけどな 』
アクシアの台詞に俺は、顔を真っ赤にする。真っ赤になった俺の顔を見てアクシアがふふ、と笑った。
『 嫌いだよ 、アクシアの … 』
瞬間、自分のなかで何かが決壊したように涙が溢れて来た。俺は急いで、目元を裾で拭う。アクシアは心配そうに俺を見つめている。
『 ローレン、大丈夫? 』
『 っ 、 』
うまく呼吸が出来ないまま、俺はアクシアの問いかけに必死に頷く。するとアクシアは俺の泣き顔が周囲に見えないように自分の羽織っていた上着を俺の頭に被せる。
あぁ、コイツのこういう所が嫌いだ。こんないい奴がこんな場所に居て良い訳がないんだ。
『 お前、何でこんなとこ居んの? 』
泣いて鼻が詰まってくぐもった声にボイチェンされる。瞬時に、あっ、と自分の質問に後悔する。
『 ごめ、、 』
『 ん~、何でかな? 』
まさか、答えてくれるとは思わなかった。予想外の返事に俺は戸惑いを隠せない。でもアクシアは話をやめずに、自分の過去を語り始めた。
『 特に、理由はなかったんだけどね。ただカッコ良かったから 』
なんだそれ、意味が分からない。そんな呑気に考えていると危ないんだよ。あぁ嫌だ嫌だコイツといると調子が狂う、まるで全てが見透かされてるようで怖い。
『 そんな理由で、危ないだろ。この仕事は命が掛かってるんだぞ。そんな曖昧な理由でここに居て良いわけがないんだぞ! 』
机を強く叩き立ち上がる。アクシアは驚いた表情を見せた後、すぐに微笑みもう一度話へと切り替える。
『 幼い頃、警備部隊の人に一度だけ助けられた事があったんだ。ホントに小さい頃だったから助けてくり人の顔とか、声も何も覚えてないんだけど、ただカッコ良かった。俺1人の為に、何人もが命を掛けてるんだ。まさにヒーローじゃん、でも別にヒーローになりたい訳じゃない。ただ危険な目にあう人を無くしたいだけなんだ。ただ、誰もが笑顔で平和に暮らせる世界を作りたいだけ。 』
暗い表情で、アクシアは語った。俺は真実を話そうと思った。だが、ここでは誰かに聞かれてしまう可能性がある、丁度明日はアクシアと俺は非番だ、明日アクシアに真実を話そう。
『 そっか、 』
今日はもう終わりにしようと、座っているアクシアに「明日、一緒に買い物行こう」とだけ伝えて、アクシアを置いて、先に寝室へと向かった。
アクシアと会話を終えて、1人寝室へと向かう。
すると突然後ろから肩をトントンと叩かれ、振り返ると警備部隊の先輩である第一部隊の隊長が後ろに立っていた。
そう警備部隊は第一部隊から第四部隊で形成されており、一から四の順番で部隊カーストが決まっている。俺とアクシアは新人ながらも任務や訓練で優秀な成績を修めているため、第一部隊に属している。
『 どうかしましたか? 』
俺が何かしでかした。と、戸惑いはしたが直ぐに姿勢を直し、敬礼をすると、隊長は俺の耳元に顔を近づいてからこう囁いた。
『 この後私の部屋に来なさい。決して誰にもバレては行けません。』
ごくっと、唾を飲み込む。やっと俺の番が回ってきた。恐らく逃げたら殺される、今まで積み上げてきた経験や、実績全てが水の泡になっていく。絶対にそんな事はさせない。絶対に。
『 分かりました 。 』
とてつもない冷や汗と、不思議な位落ち着いている鼓動が、思考を激しく邪魔をする。
隊長の後を追いかけると、上官など位の高い人間のみが立ち入り許可されている部屋の前についた。
隊長が扉を開け、足を踏み入れようとした瞬間、背後にいた隊長に背中を押されて、床に勢い良く倒れこむ。
『 は、んだよここ 。 』
倒れた瞬間に、気がついた。目の前に広がるのは、淫らな行為をする第二部隊から第四部隊の若い隊員達だった。カーストが低いからこそ、発言力も、立場も弱い、それを利用した卑劣な行為。
『 ッ 、 』
その光景を見た瞬間、逃げなければ行けないと思った。本能が「逃げろ」そう言っている。まだ、間に合う、勢い良く立ち上がり、入り口の前に立っている上官に勢い良くぶつかる。
俺より年上で鍛えてきた年数も体格も、全てが違う。上官と揉み合いになっている時に、プツ と何かを首に刺された。
それでも俺は逃げなきゃ行けないと本能に従って、腰に刺さっている銃を上官に向ける。背中を向けないように、ドアノブに手を掛け、急いで部屋を後にする。
気持ちが悪い、気持ちが悪い。
その時嫌な予感が脳裏を過る、アクシアがいる部屋へと急いで向かう。
扉を開けると、そこにはアクシアとアクシアな馬乗りになっている第二部隊の上官が居た。
すると上官が笑いながら、俺に向かってこう言った。
『 貴方が悪いんですよ、逃げてしまうから。ちゃんと考えて行動してたらこんなことになると、貴方なら考えていられたはずなのに。 』
アクシアは抵抗したせいで、上官に暴行でもされたのだろう。鼻血を出し、顔には激しく殴られた後がくっきりと残っていた。俺のせいでアクシアがこんな目にあったんだ、俺が我慢していればアクシアはこんな目に遭わなくてすんだんだ。その瞬間身体の力が一気に抜けた。
『 俺が…、代わりになります。 』
『 貴方ならそういうと思っていましたよ 』
俺が諦めれば、良いだけなんだ。他の奴らの代わりになればいい、俺1人で構わない。
俺は俺自信を犠牲にすることを許した。でも、アクシアはそんな事は許さなかった、
俺が身代わりになると言った瞬間、ふざけんなと涙を溢していた。今までアクシアから聞いた事のないほど癇癪を起こし、俺を睨み付ける。
だがその抵抗も虚しく、俺は上官に連れられ部屋を後にする。
部屋の扉を閉めると、アクシアの叫び声が聞こえてきた。
ー 助けて … 、誰でもいいから ー
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