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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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第5話


窓から差し込む日光で目が覚めた。時計は6:45を示している。隣に244さんはもう居なかった。私は眠い目を擦りながらトイレに向かった。



(えっと、トイレはここで………お風呂は隣で………)

たった一晩泊まっただけなのに、場所を覚えてしまった。でも、この広い家にはまだまだたくさんの部屋がある。だから、知らない部屋もたくさんある。

(願わくば、全ての部屋を覚える前に逃げれますように)

そう思いながら、私は歯を磨きに洗面所に向かった。

(いや、私普通に生活しすぎでしょ!!)




リビングに向かうと、244さんがキッチンで料理していた。

「おはよう。随分と早いね。まだ、朝食が出来てないんだ。すぐ作るから、座って待ってて。」

「はあ、ありがとうございます。」

そう言って素直に椅子に座った。

テレビにはニュース番組が流れている。

(もしかしたら、私が映っているかも………)

「君は映ってないよ。」

私の考えを見透かして言った。

「………まだ、何も言ってないのに」

「でも、そう思っていただろう?」

何も言い返せない。

(あれ?でも、何で映ってないんだろう…..)

「1日に「行方不明だから探してくれ」と警察署に行く人はたくさんいるんだ。そして、そのほとんどが、別れや家出。だから、警察も昨日今日で探しはしないさ。」

そう言いながら、244さんは私の前に朝食を準備して言った。

(くっ、まだ何も言ってなかったのに。)

全部見透かされたようで悔しかった。

「………あの、何かお手伝いしましょうか?」

「いや、君は座っておいてくれ。」

断られてしまっては仕方がない。私は大人しく座っていたが、何だか申し訳なくなってきた。

(いや、良いのよ杏奈!私は誘拐されてる身なんだから!!)

“誘拐”そう改めて認識した。








「いただきます。」

「どうぞ、召し上がれ」

昨日の夕食もそうだが、やはり朝食も豪華だ。家ではいつも食パン1枚か、ご飯1杯だけどからか、1層豪華に見える。

「どうしたんだい?」

「いや、ただ豪華だなと………」

244は微笑んだ。

「このくらいならで豪華なのかい?だったら、毎日豪華な食事になるだろうね。楽しみにしていてくれ。」

「ははは………」

(毎日続く前に、逃げてやる!!)

そう思いながら、目玉焼きにかぶりついた。

「今日、何するんですか?」

「ん?何したい?」

「ん〜そうですね〜家に帰りたいですかね〜」

「ん?何て?他には?」

(うわっ!この人誤魔化してるぞ。)

そう思いながらも、閃いた。

「じゃあ、昨日のデパートに行きたいですかね。買い忘れたものがあったし、他の生活用品も見たいので。」

「………分かった。」

(えっ?!ほんとに!)

これで逃げることが出来る。そう思った。

(昨日のデパートは家の近くだから、あわよくば、逃げることが出来るかも!!)

「でも、昨日のデパートはダメだよ。その代わり遠くのデパートに行こう。」

「えっ!」

「ん?」

「あっ、いや!?私、昨日のデパートがいいです!!あそこが落ち着くんで!!」

私は必死になって言った。

(不味い。遠くがどのくらいか分からないけど、あまりに遠くすぎると、絶対逃げれない!!)

そんな私を見て244さんはため息をつきながら言った。

「はぁ〜、君は本当に嘘が下手だな。」

244さんはコーヒーを飲んだ。

「君、逃げるつもりだろう。」

244さんは今まで見たことがない目で私を睨んだ。

正直、めちゃくちゃ怖かった。ほんとにヤクザに見えた。

睨まれた私は何も言えなかった。

「ふふっ。そんなに怖がらないで。」

244さんはいつもの244さんに戻った。

(いや、どちらが本性かは分からんが)

244さんは食べ終えた皿を片付け始めた。私も急いで食べ始めた。


一時保存:2022/03/18 19:30

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