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コースを下見するように、慎重に走った一周目よりも、少しだけスピードをあげて二週目を走行したおかげで、ほどよくレースの雰囲気を味わえた4人は、ゴーカートを降りてから笑顔でヘルメットを外した。
「意外と楽しかったな」
橋本が榊に話しかけると、興奮を抑えられないように弾んだ声をあげる。
「ほんの少しだけ、アクセルを多く踏んだだけなのに、すごく早く走った気分になりました。二周目がめちゃくちゃ早く終わった感じです!」
「恭ちゃん、上手に運転していたね。運動神経がいいせいかな、僕よりもカーブの曲がり方が良かったと思うよ」
3人で感想を言い合っているところに、佐々木が宮本と並んで傍にやって来た。完走後に、いろんなことで一番反応しそうな宮本が話に加わらなかったことを不審に思った橋本は、すぐさま話しかける。
「雅輝、なにやってたんだ。おまえらしくなく、ずっとトロトロ走って……」
「えへへ。実はテントで説明を聞いてるときに、佐々木さんからサーキットでレースができる話を聞いていたので、今こっそり申し込んできたんです!」
「いつ間に……」
「陽さんたちが、盛り上がっていたときですけど。蚊帳の外で寂しかったっす!」
宮本はちょっとだけむくれながら、橋本に体当たりを食らわせた。寂しさを表すような体当たりは、橋本の躰を大きく揺らすものだった。
「橋本さん、榊さん、コースにいるゴーカートがはけてからレースを開催しますので、もう少しだけお待ちくださいね」
「げっ! 俺たちのために、サーキット場を貸し切りにするのかよ!」
「宮本さんが、ポケットマネーを使ってくれたお蔭です」
「佐々木さんっ!」
しれっと内情を暴露した佐々木に、宮本が止めに入ったがすでに遅し。和臣が宮本の傍に慌てて駆け寄り、ぐいぐい袖を引っ張った。
「宮本さん、ひとりで決めるなんて、あんまりですよ! みんなで出かけているんだから、ちゃんと僕らに相談しなきゃいけないことです」
和臣の持つ、大きな瞳でキツく睨まれた宮本はピキンと固まり、視線だけで橋本に助けを求める。
(おーおー、可愛らしい和臣くんに怒鳴られて、雅輝のヤツすっげぇ困ってる。たまには俺の苦労を思い知りやがれ!)
宮本からのヘルプをやり過ごすべく、橋本が明後日のほうを向くと、榊が和臣を宥めるように頭を撫でた。