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月日は流れ
高校一年生の夏。
外では蝉の大合唱団が、まるで競うかのように声高く歌っていた。
毎日嫌というくらいに聞かされる。少しは休んだらいいのにとは思うが、短い一生だと考えると、鳴かずにはいられないのかもしれない。その気持ちも分からなくはないが、聞き手からすると少し迷惑にも感じてしまう。
毎朝、バレー部の朝練のために、五時に起きて朝ごはんを食べる。バレーは高校に入って始めたものだが、素敵な仲間と触れ合うのが楽しいし、ものすごくはまっているから、頑張って朝練にも行くようにしている。なにより、これがあると、朝の憂鬱な気分も和らぐ。それが朝練に対するモチベーションに繋がっている。
朝ご飯は白米にベーコンつきの小さな目玉焼き。わたしの好みが半熟だと知っている母は、毎回ちょうどよい加減で焼いてくれていた。リビングでは飼い犬のぴょん太がイビキをかいて寝ている。父親は眠い目をゆっくりこすりながら、やっとのことで、起きてきた。
通学は電車とバスを使う。学校までは全部で一時間半くらいだ。満員電車の中は疲れ切って見えるサラリーマンや、テスト前で参考書を開いている学生たちで一杯だ。席に座りたかったわたしは、なるべく早くホームに並びたかったため、父親をせかして、送ってもらっていた。
「音。あんたよくそんなに早起きできるね。お母さんも、こんなに早く起きて目玉焼き作るの大変だよ~~」
母親がニコっと笑いながら、話しかけてくる。
それを見て、わたしの憂鬱な気分は少しだけ和らいだ。
その日もいつも通り、
暗い顔でクラスへ向かった。
もちろん、部活の朝練が終わって、憂鬱さが少し取れたあと。
じゃないと、クラスには入りづらい。
どうしてそんな風に思うのかと言えば、朝早くクラスに行くと、
人数が少ないから、そばの人に挨拶をしなきゃって思う気持ちが強いから。
別にそんなの気にしなければいいのにと友達は言うが、
気にしてしまう。
だから、わざわざ朝練の後に行く。
そうすれば、
たくさんの人に紛れられて、
いちいち挨拶しなくて済むから。
だって、
挨拶、
苦手なんだもん。
シカトされるんじゃないかなって
不安だから。
自信がない。
ちゃんと、返事をもらえるのか。