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「8歳。17の女に告白する」赤桃♀️

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「8歳。17の女に告白する」赤桃♀️

3 - ――「好き」は、時間を越える。

♥

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2025年12月22日

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それから、時間はちゃんと流れた。


りうらは、9歳になって、10歳になって、

身長が伸びて、声が少し低くなって、

ランドセルが小さく感じるようになった。


好きなものも、少しずつ増えた。

友達とゲームをして笑って、

部活の見学に行って、

「将来なにになりたい?」なんて聞かれて、少し考えるようになった。


でも。


胸の奥にある名前だけは、変わらなかった。


――ないちゃん。



ないこも、時間の中を歩いていた。


高校を卒業して、専門学校に進んで、

アルバイトをして、

大人の世界の理不尽さを知って、

恋も、いくつか経験した。


楽しい恋もあった。

傷つく恋もあった。


でも、ふとした瞬間に思い出す。


夕焼けの公園。

8歳の男の子の、まっすぐな目。


「りうら、ないちゃんが好き」


あれは、恋だったのか。

それとも、もっと別の、純粋な何かだったのか。


答えは、今も出ていない。



高校三年の春。


りうらは、中学二年生になっていた。


制服を着て、

少し照れくさそうに鏡を見る朝。


「……悪くない」


自分でそう思えるくらいには、成長した。


家を出ると、向かいの家のドアが開く。


「おはよ」


懐かしい声。


「……おはよう」


ないちゃん――じゃない。

今は、ないこさん。


そう呼ぶようになったのは、いつからだったか。


「今日、入学式だっけ?」


「はい」


「そっか。中学生かぁ」


笑いながら言う、その横顔は、

昔と変わらないのに、

どこか大人びて見えた。


(……当たり前だ)


りうらは、少しだけ拳を握った。



それからも、二人は“近所の知り合い”として、関わり続けた。


深く踏み込まない。

でも、切れない距離。


りうらは、無理に想いを押し殺さなかった。

ないこも、無理に線を引きすぎなかった。


「今は、今」


そう言い聞かせながら。



月日は流れ――。


りうらは、高校三年生になった。


背は、ないこより少し高くなっていた。

声も、すっかり大人のそれになっていた。


ある夏の日。


りうらは、久しぶりに公園に足を運んだ。


ブランコ。

すべり台。

変わらない景色。


「……懐かし」


一人で笑った、そのとき。


「りうら?」


振り向く。


そこにいたのは、

見慣れた笑顔。


「……ないこさん」


「ひっさしぶり! てか、でっか!」


ないこは、相変わらず明るく笑う。


「高校生?」


「はい。もうすぐ卒業です」


「えー、早。時間こわ」


並んで、ベンチに座る。


沈黙が、心地いい。



「……ねぇ」


ないこが、ぽつりと言った。


「覚えてる?」


りうらは、少しだけ息を吸った。


「……はい」


「8歳のときのこと」


「忘れるわけないです」


ないこは、空を見上げた。


「……あのときさ」


少し間を置いて。


「あたし、正しいこと言ったつもりだった」


「はい」


「でも、ちょっとだけ……後悔してた」


りうらは、驚いて隣を見る。


「……後悔?」


「うん」


ないこは、苦笑した。


「受け取れないのは当然だったけどさ。

 でも、ちゃんと向き合えてたかって言われると……」


りうらは、首を横に振った。


「向き合ってくれました」


「……ほんと?」


「はい」


はっきり言う。


「だから、今まで待てました」


その言葉に、ないこは目を見開いた。


「……待ってたの?」


「ずっと、じゃないです」


りうらは、正直に言った。


「他の人を好きになったこともあります。

 でも……最後に戻るのは、いつも」


胸に手を当てる。


「ここでした」


ないこは、言葉を失った。



「……りうら」


静かな声。


「もう一回、聞いていい?」


りうらは、立ち上がった。


あの日と同じ公園。

でも、今度は――対等な高さ。


「はい」


深く息を吸う。


「りうらは」


一瞬、間を置いて。


「ないこさんが、好きです」


子どもの告白じゃない。

逃げ道も、言い訳もない。


ないこは、しばらく黙っていた。


そして。


「……ずる」


そう言って、笑った。


「そんな顔で言われたらさ」


立ち上がって、りうらの前に立つ。


「断れないじゃん」


「……それは」


「年齢、立場、全部」


一つずつ、確認するように言う。


「もう、問題ないよね」


りうらは、まっすぐにうなずいた。


「はい」


ないこは、少し照れたように視線を逸らしてから。


「……じゃあ」


りうらの手を、そっと取った。


「今度は、あたしが言う番」


目を見て。


「好きだよ、りうら」


世界が、静かになる。


「ずっと、忘れられなかった」


胸が、いっぱいになる。


「……ありがとうございます」


思わず、そう言ってしまう。


「なにそれ」


ないこは笑って、でも目は潤んでいた。


「8歳の恋がさ」


手を握ったまま、言う。


「ちゃんと大人になって戻ってくるとか、反則でしょ」


りうらも、笑った。


「……待つの、得意なんで」



夕焼けが、公園を染める。


あの日と同じ色。

でも、今は――違う。


二人は、並んで歩き出した。


「これから、どうする?」


ないこが聞く。


「ゆっくりでいいです」


りうらは言った。


「今まで、ずっとそうだったから」


ないこは、ぎゅっと手を握り返した。


「……うん」


8歳の恋は、

消えなかった。


時間に預けて、

大事に守って、

ちゃんと――実った。















番外編はまた今度

「8歳。17の女に告白する」赤桃♀️

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