テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最近、実写動画撮影がとても多いので好きな人に沢山会う口実ができる。俺の好きな人が同じメンバーのやなと、なんてことはリスナーさんに口が裂けても言えない。今日も撮影後、吸い込まれるようにやなとの近くに行ってしまう。
「やなとさーん!今日、ご飯に行こうよー」
なんて言いながらさりげなくバックハグをしてみたりするが、、
「良いよー、あ、ばなばなぁ!今日みんなでご飯行こー!」
いつも効果があるようには思えない。
そんなこんなで、やなとと2人でご飯に行くつもりが結局メンバー全員でご飯に行くことになった。
「「かんぱーい!」」
すにすてメンバーはみんな割と自由なので個々がバラバラに色んな話をし始める。もちろん、俺はやなとと話そうと思ったのだが、、
「ゆたたぁ!今日も可愛いね?」
「もぉ、やなとくんめちゃくちゃ酔ってるじゃん、、」
めちゃくちゃにゆたゆたに甘えている。俺に甘えることなんてほとんど無いのに。
「バカ」
我ながら女々しい。小声で文句を言うなんて、どこかの少女漫画だろうか。
「おさでい分かりやす笑」
なんて、隣のたちばなに頬を突かれながら言われる。
「え!バレてた!?」
「バレバレだよ笑」
自分では隠しているつもりだったので、恥ずかしくなってくる。
「え?なんの話?」
と周りのメンバーが次々と集まってくる。
「おさでいの好きな人の話!」
たちばなが大きな声でみんなにバラす。
「もう!恥ずかしいのでやめてくださる!」
思わずお嬢様口調になってしまった。
「え?誰々?」
「どうせリスナーとかいうオチだろ」
お嬢様口調では誤魔化せないくらい注目されてしまった。やなとに変な誤解生まれないと良いんだけど、と思いながら勿論リスナーさんだよなんて嘘をつく。
「そりゃあ、俺の愛するリスナーちゃんたちに決まってるでしょ!舐め回したい」
「きも!」
「なーんだ」
なんて言いながら野次馬達は興味を失くしてお酒に夢中だ。
俺はチラッと隣のやなとをみた。まだゆたゆたに甘えていると思っていたのだが、バチっと目が合った。
「ねぇ、ほんとに好きな人リスナーさん?」
なんて、鋭いことを言われる。酔いが回って紅く染まった頬、少し涙の浮かんだ目でされる上目遣い。そして、服の隙間からチラッと見える鎖骨。
流石に可愛すぎないか、これでゆたゆたに甘えていたのかと思うと気が狂いそうになる。
「誰だと思ったの?」
なんて、少し意地悪な、少しの期待を込めた質問をしてみる。やなとは少し考えたあと、俺の肩をぐいっと押し込んで、自分の口元の高さまで俺の耳が来たところで囁いた。
「俺?」
バッと顔が紅くなっていくのが自分でも分かった。こいつ、ワザといってるのか、それともマジなのか!
きっと、俺がイタズラに引っかかったのを良いことにドヤ顔でもしているのだろうとやなとの顔を見た。
やなとは恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めていた。
頭の中で何かがプツンと切れる音がした。
気づくと俺はやなとにキスをしていた。
「え、?」
気づいた時にはもう遅かった。メンバーは全員俺たちの方を見ていた。みんな呆気に取られている。これには発端となったたちばなさんもびっくり。
やらかした。
今度はサーっと血の気が引いていく感じがした。
相手の許可もとらず、しかもメンバー全員の前でキスをしてしまった。どう誤魔化そう。というか、誤魔化しが効くのか?なんて、考えているうちに先にやなとが口を開いた。
「わぁ!!飲みすぎた!頭おかしくなっておさでいとキスしちゃったじゃん!最悪なんだけど!」
なんて、大袈裟に項垂れるフリをする。
「ハハ!どんまい」
なんて、メンバーがみんなやなとを慰めはじめる。なんとか一命を取り留めたが、やなとの最悪なんだけどという言葉が突き刺さって抜けない。
飲み会も終わりみんなが帰路につく。
俺と同じ方向に帰るのはやなとだけだ。
「やなと、今日ごめん。」
精一杯の気持ちを込めて謝罪をする。
「どうってことないよ!おさでいはお酒飲めるようになったばっかでしょ、俺の方が先輩だからねっ!」
なんて自信ありげに言うのが可愛らしくてつい笑ってしまう。
「今日、キスしたの、嫌じゃなかった?」
恐る恐る聞く。
「嫌じゃ無いよ、、、おさでいだから」
と、やなとは恥ずかしそうに視線を背ける。今すぐ抱きしめてしまいたい。食べちゃいたい。
そう思うが、つい先程盛大にやらかしたばかりなのでそんことをする勇気はない。でも少しだけ、勇気を出してみても良いだろうか。
「可愛いね、」
返事は無かった。でも、もう酔いは覚めているはずのやなとは下を向いて耳を赤色に染めていた。
むず痒く、そして少し甘い空気の中2人はしばらく並んで歩いたそうだった。
この2人がお互いに自分の気持ちを告げるのはまた別のお話。
コメント
3件
フォロー失礼します!! めっちゃ好きです…!!🥹💕